忌々しき太陽が照らすものは ③
天から隕石が降り注ぐ。それは世界の終わりを意味しているのだろうか。
『神の裁きの鉄槌よ……。無力なる己を嘆くがよい』
くそ、あれはどうしようもできないか。
私は殴りかかるが殴っても靄を殴ってるようで攻撃しているような感覚はない。実体がないというわけじゃない。ただの靄。だからダメージがない、のだろうか。
「お前が忌々しいって思ってるのは私だろうが! なにも巻き込むことないだろ!」
『神も神が作った世界に住む人間も同罪……。罪は、平等にあるものだ』
話が通じなさそうだ。
私はがむしゃらに殴ってみるが攻撃が通じるような感覚はない。全部靄を殴っているような感覚だ。
どうやったらダメージを与えられるのだろうか。
『無駄なあがきを見せるな愚か者よ……。今すぐ悶えて殺してやろう』
点から拳が降ってくる。
私はジキルタイガーを召喚した。ジキルタイガーはその手にかみつくと痛がるようなそぶりがあった。
実体化しているところもあるのか?
「ガルルゥ……」
『猫が。この妾の邪魔をしようなどと』
アマテリウスはジキルタイガーを弾き飛ばした。ジキルタイガーは着地し、威嚇を止めない。ジキルタイガーでも通用しないのだろうか。
いいや、どこかにきっと勝ち筋がある。負けるようなボスは作らないはずだ。
私は目を凝らしてみると赤く光る点があった。胸のあたりと腕、そして顔だ。あれらが急所ということだろう。
私は戦おうとしてみるが、あそこまでは絶対に届くはずもない。どうやって攻撃しようか。
考えている時だった。
アマテリウスの両手が私に迫ってくる。やばい、これは躱せない……。私がただただ突っ立っていただけだった。
目をつむり、来るべき死を待つ。だがしかし、攻撃を受けた感じはしなかった。目を開けてみるとクロムとオルタナさん、デコイさんが攻撃を食い止めていた。
「どういう状況かなこれは」
「これはなんだ?」
「助けに来たぞ」
頼もしい。
後ろを見るとクシナダが親指を立てて笑っている。そして、ミカボシがまたやってきたのだった。
「ミカボシ!」
「あはは。ごめんね。デスペナ受けちゃった」
「いいよ。私が今度こそ守ってやるさ」
私はミカボシにそう告げた。だがしかし、ミカボシは首を横に振る。
「考えたんだけどさ、ミーミルは私たちを守ろうとしてるから本気をまだ出せたことがないんだよ」
何を言うのだろう。
「ミーミル、本気を出すためにはさ」
ミカボシが諦めたように笑う。そしてこう告げたのだ。
「私を守らないで」
と。ミカボシはまっすぐな目で私を見てくる。
クシナダも続けて私に告げた。
「私たちはきっと昔からミーミルに守られてばかりだ。だからミーミルは私たちを優先するようになった」
「だって二人はいじめられて……傷ついていたじゃんか」
「だから、そろそろ私たちはミーミル離れをするべきだと思っている。ミーミルも自分を優先していいんだ。な?」
クシナダは諭してきた。
自分を優先なんて考えたこともない。私は二人が大切なのだ。だから傷ついてほしくない。日本人は狡猾だから。
「わかったらさっさと本気出せ! 本気出したらこんな敵屁でもないくせに!」
「私たちだっていくら死んでもいい! お前が本気出せばすぐ終わる敵だろう!」
二人はどうやら本気のようだ。
しょうがない。
「わかった。お前らのことなんてちょっと忘れて本気でやってみる」
私は自分のほほをたたいた。




