神殺しの武器
クシナダが飼っていた星獣二匹が武器へと姿を変えた。
私は籠手を手に取ってみる。審美眼で鑑定してみると太陽神の籠手というものだ。神殺しのスキルが備わっており、攻撃力も割とある。
銀月の剣というのも神殺しのスキルがあった。
「……は?」
一番驚いていたのは星獣を飼っていたクシナダ。
クシナダは剣を手に取り嘘だろとつぶやいている。星獣に餌やってたもんな。大きく育てよーっていってキャベツ与えてたよな。ウサギのほうは食べてたけど猫はそっぽ向いてミカボシになついてたよな。
「まってくれ、星獣は武器だったのか? 武器が獣へと変化したのか?」
「そうです。私が剣を、アマテリウスが籠手を装備して戦った際に魔力がたくさん注ぎ込まれてしまい生命となってしまったのだと思います。長い年月ずっと卵の中で眠っていて……。神の魔力が注ぎ込まれたから生まれたのです」
太陽の魔力と月の魔力。どちらも命をつかさどっているのだろうか。
「私たちがつかさどっていたのは太陽と月。太陽は生命の誕生を、月は生命の終わりを……。生命をつかさどる陰と陽の関係なのです」
「……」
「ふぅん。ま、じゃ、これを装備してそのアマテリウスを倒せってことか」
「この武器を使ったほうが少しは楽ってことだけですけどね」
そりゃそうだ。この武器じゃなくてもダメージはきっと入るのだろう。
だがしかし、この武器を使えばダメージ二倍ということだ。私は一人で納得していると、ツキナノリの姿がどんどん薄くなっていく。
「もうどうやら力の限界のようです。皆様、世界をどうか……」
そういって、ツキナノリは消えて行ったのだった。
私たちの目の前には武器が置かれたまま沈黙が流れる。先に口を開いたのはクロムだった。
「誰がこの武器を持つ? 籠手は……まぁ、ミーミルで決定するとして」
「私しか使えないしね」
「剣はこの三人装備できるだろう?」
クシナダは錬金術師……今は魔女だったか。魔女だが剣を装備することは可能らしい。剣、杖、メイス……が装備できる。
ミカボシも剣士なのでもちろん装備はできるしクロムも剣士だ。剣は使い手が多い。
「私はいい。剣のスキルとかまるっきりないからな」
クシナダは剣を持つのをやめた。
「ここは実力的には……クロムのほうがいいよね」
ミカボシはそういって剣をクロムのほうに押し出す。
「これはミカボシが持て」
「えっ、でも私クロムより弱いよ?」
「強いか弱いかなんてどうでもいいだろう。ゲームは自分の好きなようにやるのが一番だ」
「クロム……」
「性能的にはたしかに強い部類に入るだろうし私も欲しい。が、強弱で持ち主を譲り合うというのは私は嫌なんだ」
たしかに。強い弱いで決めてたら強者が絶対的正義になる。となると必然的に私が一番正義となる。
だがしかし、そうじゃないのだ。実力なんかじゃなく、楽しめればいい。クロムもそういう気持ちなのだろう。
「わかった。じゃ、私が持つよ。でも、アマテリウスに敵わないと思ったらすぐに譲る」
「ま、それでいいだろう。それに、負けることはないんじゃないか?」
「そうだな。うちにはうちのヒーローがいる」
と、三人が私を見る。
「この圧倒的な天才は誰が剣を持とうとやってくれるさ。な?」
「私にだけすげープレッシャーかけるなおい」
私だって勝てる見込みはない。
相手の戦い方とかもわからないし、相手は神様だ。神を討つとなると犠牲なしじゃすまされないだろうに。
私だって勝てるかどうかは不安だし、やりたくもない相手だ。
「……やるなら色々とした準備だ」
「そうだな。私は回復薬をたくさん作っておくとしよう」
「残りの三人はレベル上げか? 上限までひたすらと」
「あ、私すでに最高レベルに達してる」
私がそう言うと三人が驚いたような顔でこちらを見る。
つい先日やった餓者髑髏でレベルが大幅に上がったのと、そのコインで引き換えた経験値薬というものをひたすら使用したらレベルが200となりこれ以上上がらないと言われた。
なのでレベリングも私には必要ないわけで。
「というわけでなにしよ……」
「……じっとして待ってたら?」
「動いてないとそわそわして」
「……じゃあ好きにしてなよ」
「そうする!」
私は三人が準備を終える間好きにしてよう。




