国盗りバルバロス ③
目の前の光景は本当にゲームなのだと実感させられる。
ギャアルが変化を遂げた蜘蛛が化け物に覆いかぶさった。噛み切ろうとバルバロスの怪物が歯を突き立てるが、すぐに口を離し突き飛ばす。
『うげぇ、にげえ』
『僕を殺すんでしょう? 早くやってくださいな……。僕は必死に抵抗しますから』
そういってギャアルは蜘蛛の糸を出した。
蜘蛛の糸に絡められるバルバロス。バルバロスは蜘蛛の糸をかみちぎり、距離を詰めてその怪物の手でギャアルを地面にたたきつけた。
ギャアルはもがくが力が弱いのか抵抗できずにいる。
『てこずらせやがって……』
と、ギャアルにとどめを刺そうとしてその動きが止まる。
『苦し……』
『遅効性の毒が今効き始めてきたようですね。僕は力こそありませんが毒を作ることに関しては誰よりも知識があると思っています。毒というのは人間ごときじゃ耐性はありませんから。この姿になっても耐性はなさそうですね』
『ぐっ……』
ギャアルが今だと告げたので私はそのまま爪で切り裂いた。
化け物から黒い靄が飛んでいき人間の姿に戻ったバルバロスは地面に落ちる。ギャアルもどうやら同時に戻ったらしく「あ痛っ」という気の抜けた声が聞こえてきた。
私はバルバロスに近づくとバルバロスは荒い息をはいていた。
「兄も殺されて自分も殺されてひどい目にあって……。俺は、ついてねえ」
「そんなことはないと思うけどな」
「俺も改心したら……殺されずに済んだの……だろうか」
「まぁ、アニキスが今でも捕まえられてないのは私がいたからだし一概には言えないと思うけど……」
「そうか。お前は……救いの星だったか」
私のほうを見てにっこりと笑う。
「ああ、毒が俺を蝕んでるぜ……。生き返ることもなさそうだ……。ああ、情けねえな……。俺もお前に早く会えていたのなら……きっと……」
と、バルバロスは目を閉じる。
私とアニキス、ギャアルは死にゆくバルバロスをじっと見ていた。
「……バルバロスさんから聞いたんですが、彼が謀反を起こしたのは戦死した兄のためだそうなんです。先代の王が武勲を上げようと西の民族と戦った際、彼の兄は出兵し命を落としたんです。本来ならば西の民族は放っておけばよかったんですが武勲欲しさに兵を出してしまった。その恨みがあったそうなんです」
「バルバロスの野郎、天涯孤独だって言ってたな。父が蒸発し、母さんは自分を生んで病死してしまって兄が最後の身内だったそうだ。あいつもお前に会ってたら救われてたのかもしれないな」
アニキスとギャアルは彼の事情を知っているようだった。
もしも私と出会っていたら救われていたかと聞かれれば私は否定する。アニキスもアニキスで特殊だったからだ。
もしも本当に反省する心がなければ救われない。
「僕のような根っからの犯罪者であれば救われてないでしょうけれどね」
「事情は人による。だが、それでも俺含め犯罪者だ。事情はあっても容赦はすることはない」
「そうですね。どこかしら踏みとどまることはできたはずですから」
「お前がそれを言うな。根っからの殺人鬼が」
私は黙ってその場を去ることにした。
後ろから二人が追いかけてくる。私はメニューを開くとフレンドメッセージが届いていた。ミカボシとクシナダからだ。
要件はというと、ラスボスっぽい神がわかったということだ。
「二人のところに急ぐとしようか」
私は足を速めた。




