王が愛したただ一人の女性
私は皇帝の城にずかずかと踏み込む。
皇帝は玉座に座っており突然入ってきた私たち二人に目を丸くしていながらもすぐに取り戻した。
「ミーミル様。何の用か?」
「単刀直入に聞く。アリーシャはいる?」
「……」
皇帝は私の隣のソル王を見る。
皇帝はため息をついた。
「なるほど、ソル王」
皇帝はソル王に近づいていく。
ソル王は警戒しているが、皇帝がとった行動は頭を下げていた。皇帝の証である杖を捨て、ソル王に頭を下げている。
「すまなかった。貴殿の婚約者殿を無理やり帝国によこさせたこと。今更遅いと思うが謝らせてもらう」
「……」
ソル王は目を丸くしていた。
「原因は私の愚かな言動にあったのだ。私がそちらの国に視察にいったときアリーシャに一目ぼれしてしまった。そのことを父に言ってしまったのだ。父はその子を婚約者にしようとして無理やり連れてきた。私も当初は舞い上がったがのちに貴殿の婚約者だということを知った。謝っても遅いかもしれないが謝らせてほしい」
「……謝罪はいい。アリーシャは」
「ここにおりますよ。ソル様」
玉座の隣に立っていた王妃様が歩いてくる。
「ずいぶんとボロボロですね、ソル様」
「アリーシャは……相も変わらず美しいな」
「ふふ。まだ好きなんですね、私のこと。私もです」
ほほえましい。
「アリーシャはもとより帰すつもりではいた。今でこそ王妃の位置にいてもらっているが子はなしていない」
「えっ……」
「本当よ。陛下は私の気持ちがソル様にあることを知ってて手を出してこなかったの。私はもう少しで返してもらえる予定だったのよ」
「……それじゃ、私が戦争を仕掛けた意味というのは」
無駄だった、ということになるか。
ソル王はその場に崩れ落ちる。
「悪かった。戦争はこちらの負けだ。俺の首でも持っていくがいいさ」
「まさか。ここで貴殿を殺すとアリーシャが怖い。こちらも悪かったのだ。そうだな……。竜の知識を教えてもらえないだろうか。こちらは竜に関しては疎い。知識をくれ。こちらも帝国の知識をやろう」
「……いいのですか。俺の国は負けたんです。領土をもっていくなどはしなくても」
「帝国はもう十分に広い。今更広げようとは思わんさ」
皇帝はそう言って笑う。
「まったく……。本当に情けない。やはり帝国にはかなわない」
「さ、アリーシャ。もういろいろな手続きは済んでいる。行きたまえ」
「……ありがとうございます。陛下。ソル様……いや、陛下」
アリーシャは膝を折る。
「私を王妃にしてくださいませんか。側妃でも構いません」
「馬鹿野郎……。俺の感情は知らないでいやがって。俺はお前を正妃にしてやるよ。俺はまだ結婚してないからな」
「……それはそれでまずくありません?」
「お前以外の女には興味がわかなかっただけだ」
くう、あまずっぺえ。
「ミーミル殿。感謝する。俺は貴殿にたくさんのことをしでかした」
「事情が事情だし仕方ないんじゃない? ってかまだ兵士戦ってるから王の号令で止めないとね? あと、私も聞きたいことがあるから」
「わかった。なんでも答えよう」
王は戦地へと向かうのだった。
そろそろラストの章に入りまーす。




