王は英雄を望む ②
王はそのでかくなった剣を振り下ろす。
力が跳ね上がったのもあるが、地面が少しえぐれていた。あれを食らったらひとたまりもないな。受け止めることも無理そうだ。
だがしかし、私の前で巨大化したのは大きな失敗だ。
「動きがさっきより鈍い! オラァ!」
私は身を回転させ爪をねじ込む。が、私の体が跳ね返されたのだった。
私は地面に転がる。攻撃がどうやら効いていないようだった。硬い。この肌が硬すぎてダメージが入っていないようだ。
なるほど、弱点を探すべきか……。
『俺様ハコノ大陸ノ支配者デアルゾ!』
王は剣を勢いよく振り下ろす。
私は転がりそれをよける。躱す隙は十分にあるが弱点を探しつつ攻撃を躱すというのは苦手だ。
早いとこ弱点を見つけてぶん殴らなくては。
「ミーミルちゃん、首筋! 首筋が弱点!」
と、背後でパンドラさんが大声で告げる。
私は素早く後ろに回り確認してみると首筋には何やら太陽らしきマークが書かれており、そこだけ肌色になっていた。
パンドラさん、さすが……。ならばさっそく攻撃させてもらおうか!
「膝カックン!」
私は膝の後ろを思い切り攻撃した。ダメージは通っていないが王はそのまま私のほうに背中をのけぞらせる。
そして私はそのまま首筋を爪で切り裂いた。王は首筋を押さえる。
『イタイイタイイタイイタイイタイ!』
王は痛みに悶え剣をがむしゃらに振り回す。
近づけない。私は一度王から距離を取る。暴れ終わったのか王は首筋を押さえながらも私を睨む。
『オ前ハヤハリ俺様ガ支配スル大陸ニ生キテイテハナラナイ!』
憎悪の視線だった。
王は愚直に私を狙ってくる。どしんと大きな足音を大地に響かせながらこちらに迫る。私は拳を構え、応戦する準備に入る。
王の口から涎が垂れる。真っ白だった目は血走っている。
『生意気ナ小娘ガ! 偉大ナル俺様ニ逆ラウナドト!』
「へっ、あんたみたいな自分勝手の王なんてこっちからごめんだっての。私の王はあいつらでいいんだよ。バーカ」
私は王に向かって中指を立てる。
「王と女王を守る騎士は私の役目なんだよ! あいつら以外に私の王はいねえ!」
『クソ生意気ナ小娘ガァッ……!』
王は剣を振り下ろした。
私はまた膝を蹴り、王をのけぞらせる。王はとっさに剣を持ってないほうの手で首筋を隠した。
ちっ、邪魔された。攻撃はできないか。
『ウガアアアアアア!』
王は私めがけて剣を薙ぐ。
私はしゃがんで剣を躱した。そしてすぐに距離を取る。首筋をガードされるようになったのは大きな痛手だ。ダメージの与えようがない。
「どうにかして両手を使わせないといけないか……」
「それなら私も参加しよう」
と、どこからか声が聞こえてくる。
私は振り向くと後ろに立っていたのはクロムだった。クロムは多少体力が削れているがまだ戦える体力だ。
「何が起きているかは知らないがあれを倒すんだろう? やろうか」
「クロムも参加してたんだ」
「ついさっきログインしたばかりだがな。あっちで戦っていたらでかいやつが見えてこっちに来たわけだ」
「ミーミルー!」
と、ミカボシとクシナダが走って向かってきた。
「なにこれ」
「敵」
「見りゃわかるぞ……。どういう状況だ?」
「えっと、バルムーント王国の国王がこうなった。体は攻撃が入らないから首筋を狙いたいけど私一人だと手で隠されちゃうからどうしようかなって」
「ふむ、ならば私たちもやるか」
「そうだね。アマノイワト総力戦だぁ!」
頼もしい。
私は王に向き直る。
「王! 私は今からお前を殺してやるぞ!」
「化け物と化した王よ。安らかに眠らせてやろう」
「ここかっこいいこと言う流れ……? え、えっと、ばっかじゃないの!」
「ツンデレか?」
さて、やるか。
※まだ最終章じゃありません。




