Who rang the battle bell
神獣たちが戦地へと赴いていった。
残されたのは私とパンドラさんだけ。パンドラさんは私に近づいてくる。パンドラさんは怪しい笑みを浮かべていた。
私に顔を近づけると、パンドラさんはささやく。
「それじゃ、いこっか」
「いくって?」
「もちろん、敵の総大将のところだよ」
パンドラさんが離れ、私の手を取る。
敵の総大将……? 戦争を指揮している人ということだろうか。バルムーント王国の国王が戦争を仕掛けているのではないのか?
もしかしたら国王の後ろに誰かがいてそいつが起こしてるとか?
「パンドラさんがこの戦争起こしてたり、なーんて……」
「へぇ? 裏に誰かいるのは気づいてるんだ」
「えっ、否定しないの?」
「いや、否定はするよ。ただ、ただねぇ。私も裏になにかがいるってのはわかってるんだけど誰かってまではわかってないんだ。だから敵の総大将を叩いて聞き出そうかってね」
パンドラさんは私の言葉を否定するらしい。
これは私の直感なんだがパンドラさんは味方に対しては嘘はそんなにつかないという感じがあるので信用してもいいだろう。
でも裏に何か、か。
「ミーミルちゃんは兵士一人でも殺してみた?」
「あ、まあ」
「なるほど。体験してたからわかったんだ」
やっぱりおかしいのか。
あれは禁術……なのかもしれないな。私がそう考えていると私の考えを読んだのか私に微笑んで「それは違う」と否定してきた。
それは違う?
「あれは禁術じゃないよ。私は禁術については一通り調べたけど蘇生してパワーアップする禁術なんて存在しなかった」
「えっ、じゃああれどういうことですか?」
「そうだね。人知を超えてる……。人知を超えたことが可能な人っていったらなんでしょうかと聞かれたらもうそれは答えだよ」
人知を超えたことが可能な人……。
「神、様?」
「そう。神様。ヴァルハラン様か、クロノス様か、ウラノス様か……。バルムーント王国とバルデッハ教国の兵士全員にその力を与えられるって言ったらそういう力が強い神だろうね」
「……」
なんとなく言いたいことはわかる。でもあのお三方がやるとは思えない。
ヴァルハラン様は人間を何とも思ってないみたいだからやりそうな感じがあるが私に好意がありそうなので私がいるこの国に戦争を仕掛けさせたりはしないはずだ。私の嫌がる事はしない節があるからな。
となるとクロノス様かウラノス様……。でも、どっちもやるとは思えない。
「本当にその三神様の誰かなんですかね」
「というと?」
「まだいたりしないんですかね?」
きっと違う。そう思いたい。
「いなくはないと思うけどそれがいるかはいまいち確信がない。だからわからないんだよ」
「……もしかしてパンドラさんも三神様がやってないと思って?」
「会ったことはないけどね。文献とか色々調べてみて性格が違う。三人が三人争いをそんなに好まないという感じだったし」
なるほどなぁ。
だとすると他にいるってことなんだけど証拠がないということか。
「とりあえず神獣様が暴れてる今がチャンスだよ。バルムーント王国の国王は血気盛んだから自分も戦地にたってるんだ。一番手ごわいから相手頼んだよ」
「あ、もしかして私に近づいてきたのってそれが目的で?」
「私じゃ準備も何もないから勝てないからね」
戦う要因か。ま、いっか。
私はパンドラさんにその国王の下に案内してもらったのだった。




