戦いこそ我が愉悦なり ②
蛇のところにたどり着いた。
蛇は涎をたらし地面を溶かしている。あの涎は酸みたいなものか。
私が蛇を見ていると蛇はこちらを向く。
『驚いた。ジキルタイガーの魔力だ』
と、蛇がしゃべっていた。
蛇は涎を止め、私のほうに近づいてくる。そしてずいっと私に顔を近づけてきた。蛇の舌が私の体に当たる。
『聞かせなさい。なぜあなたからジキルタイガーの魔力を感じるのか」
「テイムしたからじゃないっすか?」
『へぇ。あなた強いんだ』
蛇は驚いたような眼をしている。
「で、あなたは神獣?」
『そう。アクロイド。私は神獣アクロイドといいます。お見知りおきを』
「へぇ。アクロイドさんはなんで王国に協力してるの?」
『暇だからです。戦争を起こすというのならば暇つぶしにはなるでしょう?』
暇だから参加したのかよ。
『ですが……あなたがいるとなるとこちらが不利ですね。私は負けるのが一番嫌いです。あなたのほうの味方になりましょう』
「そっち裏切るの?」
『神獣は人間の味方ではないですから』
といって、アクロイドは王国兵士を尻尾で締め上げていた。
『暇つぶしでも勝ちたいですから。負けるほうにいるのは嫌です』
「わがままなこって」
『ジキルタイガーは神獣の中でも一、二を争う実力をもってますから。勝てない戦いはしたくないんですよ』
「へぇ、そんなに強いんだ」
『ええ、アルジャノンといい勝負をするくらいですから』
アルジャノン……。確かに強かった。
『では、ここら辺は私に任せてください。人間ごとき締め上げてやりますよ』
『ここにいたか、アクロイド』
と、奥のほうからアルジャノンが歩いてきた。
『アルジャノン』
『お前はそっちの味方か? なら我はこっちについてやろう』
『あ、いえ、私そっち裏切ったんですよ。ジキルタイガーがいますから』
『なるほど。あいつと戦うのは勘弁だ。ならば我もこちらだ』
アルジャーノンが王国の軍勢の中につっこんでいく。
鎧をかみ砕き、兜をかち割る。アクロイドも負けじと王国兵を丸呑みしたり酸性の涎をたらして攻撃していた。
『おろ? なんだか久しい顔を見ましたね。アクロイド』
『フルムーン……? なぜここに』
『じっとしているのが退屈だったのでこちらの国を見に来たのですが何が起きてるのですか?』
なんかフルムーン・パレスまでやってきた。
何で神獣が三匹も集まってるんですかね。
「ガルガルガルガルゥ!」
と、ジキルタイガーも軍勢を蹴散らしながらやってくる。
すごい景色だ。神獣が四匹も。
「ガル?」
「ここどこって顔してんじゃないよハイド……」
ハイドはどうやら戦うのに夢中でここにきてしまったらしい。
『神獣が四匹もいたら負けないですね! 皆様、行きますよ!』
『楽しそうだなアクロイド……』
『とりあえず戦えばいいんですか? わかりました。ならば敵将を狙いましょうか。こういうのはボスを先に狙ったほうがいいですからね』
「ガル」
うわぁ、四匹とも戦う気満々だぁ。
この戦争、もうこれ勝ちでしょ。絶対過剰戦力だって。私とか何もしなくても勝てそうなんだもん。
あ、もしかしてこれ負けそうになった時のための救済措置?
「おろ? ミーミルちゃん壮観だね」
と、後ろからパンドラさんが歩いてきていた。パンドラさんは神獣四匹を見てそう述べる。
『カミーユ……?』
『呼んだか』
と、パンドラさんの召喚紋が光ったと思うとカミーユが現れた。
『カミーユ! 貴女も帝国につきましょう! 防壁を張るのです!』
『……わかった。パンドラが命令するならそうしよう』
「じゃ、しましょうか」
『わかった』
カミーユはのそのそと門の前まで歩くと甲羅の中に閉じこもる。
『カミーユに防御は任せておきましょう! 目指すは敵将! 敵将の首をこの国にささげましょう!』
『楽勝であろうな』
『やりますか』
「ガル」
『わしはここで防壁だけを張っておるわい……』
神獣五匹。これもう勝ちましたわ。
救済措置ではありません。
アルジャノンが帝国に味方する条件はアルジャノンに勝利したことがあるプレイヤーがログインしていること
アクロイドが協力する条件は神獣一匹をテイムしているプレイヤーが顔を見せること
フルムーン・パレスはもともと来る予定だったこと
神獣一匹だと負けるときは負けるって感じなのでフルムーン・パレスだけが協力するだけだったんですよシナリオは。
だから救済措置ではないんですね。ミーミルが引き寄せました。




