つけダレ論争
私たちは西の都、京都にやってきていた。
木造住宅が並んでおり景観がとてもきれいにみえる。また、夜なので夜景がとてもいいものだった。
私たちはとある旅館に泊まることとなっており、今は浴衣を着て晩御飯の時間だった。
「湯豆腐……。うまそー」
晩御飯は湯豆腐。
絹のような真っ白い豆腐が鍋に沈んでおり、私たちの前にはポン酢などの調味料が置かれている。私は豆腐を一つ皿にすくい、ポン酢をかける。
「やっぱ湯豆腐はゴマダレだねぇ~」
「そうか? 俺は醤油が一番だな」
「僕も醤油かな……」
どうやらゴマダレ派、醤油派、ポン酢派がいるらしい。三日月と秋時雨先生はゴマダレ、木戸君、柊君は醤油、私と意外なことにクシナダがポン酢派らしい。
クシナダも刻みネギのっけてポン酢をかけて食べていた。
「やっぱ湯豆腐はポン酢一択だ。このさっぱりとした味がたまらん」
「いやいや、ゴマダレでしょ? ゴマの風味と豆腐の味があうんだって」
「いや、冷ややっことか醤油かけるだろ? それと同じでやっぱ和の豆腐には和の醤油なんだよ」
「まさかのつけダレ論争起き始めたね……」
私は灘の隣に移動する。
「灘、私もポン酢派だ」
「アテナもか! わかってるな。ポン酢が一番なんだよ」
「僕はゴマダレだから天津さんの隣に行くかな」
「先生わかってますね。ゴマってうまいですもんね」
「派閥でペア決められてんのか?」
私と灘、三日月と秋時雨先生、木戸君と柊君がそれぞれペアだ。
「つけダレで何が一番おいしいかを議論します!」
「はあ!? いや、醤油の勝ちしかないだろ。意味もない議論を……」
「木戸君。話し合う前に結果を決めちゃうのはいかがなものかな。ゴマダレが今のところ圧勝だからさ」
「ポン酢が一番だろう。譲る気はない」
三人の視線がばちばちと。
先生も案外乗り気ですね。確かにゴマダレも美味しいが私はやっぱポン酢なんだよな。割とポン酢大好きだし。
「なんといっても醤油は一種類じゃないからな。普通の醤油のほかに出汁醤油などのものもある。使い分けはゴマダレにはできまい」
「でもゴマはやっぱり脂があるからカロリーが高い。カロリーを求めるアテナにはいいと思うけど」
「いや、そこまでカロリー取りたいわけじゃないし。カロリーだけじゃなく無限に食べれるような感じがいいでしょ。となるとさっぱりしてくどくならないポン酢が一番かな」
さっぱりさは大事なのだ。唐揚げとか揚げ物でも食べすぎると胃がもたれてきたりするし、口の中も脂でくどくなる。だがしかしポン酢と合わせることでさっぱりとした感じになり無限に食える気がするのだ。
それは湯豆腐も同じ。
「湯豆腐本来の味を知りたいならゴマはだめじゃない? ゴマの風味が強すぎて豆腐本来の味がわからないでしょ」
「そうだな。同意する」
「わからなくもないな」
「なっ……醤油だって大豆製品に大豆製品をかけてるじゃん!」
いわれてみれば。
「醤油は魚から作るのもあるから一概には大豆製品といえないよね……」
「それに納豆にだって醤油をかけるだろう? 大豆製品に醤油はあうんだよ」
「僕納豆は塩で食べてるんだよね」
「私はついてくる納豆のたれかな」
「卵をといて卵納豆ご飯にして食べてるな」
「そもそも納豆食べない」
醤油派は早くも脱落か?
「ここまでポン酢の否定的意見はなし。じゃ、ポン酢が最強ってことで」
「そうだな。結論は決まった。湯豆腐を食べ進めようではないか」
私は豆腐をまたすくい、刻みネギを乗せてポン酢をかける。
うーん。デリシャス。
ちなみに作者は今はポン酢が好き




