同じ穴の狢
ということで正式に加入することになった二人。
「よ、よろしくお願いします、アマツミカボシさん」
「ヘルベアーを倒したってんなら文句はないな」
二人もヘルベアーを倒したという試験をクリアしたからか不満はいえないようだ。
私は二人が作っていた看板に目を通す。
「結局あの二つ名は採用しなかったんだ」
「残念そうだな! 今でも遅くないぞミカボシよ、早速…」
「いや、あれはいらない」
「うん、いらん」
私がそう言うとクシナダは崩れ落ちた。
「どんだけあれ気に入ってんだよ…。まあいいや。とりあえず自己紹介まだだったよね。私はミーミル」
「私はアマツミカボシで、あれがクシナダ」
「わ、私はフーです!」
「り、リオンです」
二人はちょっと嬉しそうだった。
私は看板を手に取る。
「なー、看板って木じゃなきゃダメなのか?」
「どゆこと?」
「バーッて大体電気のあれでしょ。雰囲気を大事にしないとね」
私はアイテム欄からバーテンダーの服を取り出す。
作ってもらったんだが、私はそれを着てバーカウンターの奥に入る。そして、付け髭をつける。
「さて、お客様。どのような酒をお求めで?」
「カシス・オレンジを頼む!」
「かしこまりました」
タダのふりだけどね。
私はカクテルを作るやつにオレンジジュースを注ぎ、振る。いや、振る必要はないが。こういうカクテルを振るような動作やってみたかったんだよ。
私は二杯注ぐ。
「お待たせ致しました。カシスオレンジでございます」
と、一つをクシナダの前へ。そして一つをミカボシの前に。
「頼んでいませんけど?」
「あちらのお客様からでございます」
ふっ、決まった。こういうのやってみたかったんだ。
ミカボシものってくれたのがちょっと嬉しい。バーって言うからにはこういうこともしてみないとね。
私はカウンターに戻る。
「マスター! 私の何が行けないんだ! 教えてくれ!」
「その中二病」
「そこまで言わなくてもいいじゃないか!」
ええ…。どっちだよ。
っていうかクシナダ酔ってない? え、まじで? 雰囲気だけで酔えるのこいつ。私は確かにオレンジジュースを注いだはずなのだ。シェイカーの中に少し残っていたので注いで飲んでみても確かにオレンジジュース。
「酔ってる?」
「オレンジジュースで酔えるわけないでしょうが! 私の看板の何が行けないんだ…。かっこいいだろうに…。闇を封じ込める光の戸っていうのが何が悪いんだよ…」
「まず求めてないし、二つ名はいらないっての…」
「それに、ちょっとダサい…」
「そ、その辺で…心が折れる音が聞こえてくるんですが…」
フーとリオンが止めに入ってきた。
まあ、こうしてクシナダを揶揄う?っていうか諭すのもいつものことだからそれほど気にしなくてもいい。っていうか初見で私は北欧から来た支配者って言うあだ名付けられそうになったよ。その時はわりとマジで辞めてもらった。何が支配者だ。バイキングとかじゃねえぞ。
それに支配者ならドイツから来た人の方がふさわしいだろ。
「フーとリオン! ださくないよな? 私のセンスはダサくないよな!?」
「え、えっと…」
「ぼ、僕はかっこいいと思います!」
と、リオンがクシナダの手を握る。
「闇を封じ込める光の戸っていうのが…まるで闇へ立ち向かっていく勇敢な勇者みたいな感じですごくかっこいいです!」
「わかるか! そうなんだよなー。闇は光を封じるからなー」
「光は闇を封じるもの、闇は光と抗うものですからね」
「仲間よ!」
二人が分かち合ったようだ。
私はミカボシのところに行く。
「ねえ、あのクシナダに賛同する奴現れたんだけど…」
「あの子も同じ穴の狢なんだね…。それともクシナダを傷つけないために…?」
「いや、あれは本気でかっこいいと思ってますよ…」
フーがそういったので私たちはなんとなく距離をとった。




