楽園の罠
でかい羽音を立てて目の前に蜂が飛ぶ。
「よく来ましたね。人間のみなさん」
「…私たちを攻撃するのか?」
私たちはあくまで警戒を解かない。
虫だから警戒するというわけではないが…。攻撃性がある以上不意打ちされたら死ぬかもしれない、そういうことだ。
「いえ、そんなことはしません。ただ、この虫の国に入った入国料として歴史のかけらを…あなた方四人で合計256個徴収いたします」
と、私の懐から歴史のかけらが消える。
なるほど、足りないわけだ。一人当たり64個必要だった。200じゃどうしても一人は入れない。私たちは四人いるので256ということか。
「はい! きちんともらいましたのでもう警戒しなくても大丈夫ですよ。私はあなた方に攻撃しません。人間は怖い生き物ですが、我々も人間を喜んでもてなしましょう」
といった。
ちょいちょいとパンドラさんが集まれという命令を出したので私はパンドラさんに近づくとパンドラさんと固まって話し合う。
「どう思う? 喜んでもてなすというのは」
「言葉通りに捉えればいいとは思うが…」
「いいんじゃない? もてなしてくれるっていうし。それに、入国料をきちんともらったから警戒しなくていい、ということは入国料を払わず来る方法がある…ってことよ。あのループを抜け出す方法があって、不法入国する方法もあったってこと。私たちはきちんと払って入国してるんだしいいんじゃない?」
という。
ま、たしかにそうかもしれないが…。
「あの、女王バチさん。確認いいっすか」
と、パンドラさんが声を上げた。
「入国料、一人で256個ですか。それとも四人で256個必要だった感じですか?」
「四人ででございます。なのでそちらの金髪の女性からもらいましたのであなた方もきちんと入国した人でございます」
「言ったな? あとで一人256個でしたとかそういう言い訳は通じないからな。私たちを騙すならきちんと騙しきれよ」
「と言うと?」
「約束してもらおうか。私は、じゃなく、私たち虫はパンドラ、ワグマ、ビャクロ、ミーミルを襲わないという約束を。あと、レースの舞台に早く返してもらおうか」
と、パンドラさんがいった。
女王バチはため息をついた。
「レースの舞台?」
「ここはパラレルワールドだ。きっとあの森に入ったとき何かされたんだろうな…。違和感の正体が今わかった」
「今?」
「虫たちの視線だよ。それを私たちは感じていた。でも、最初に入ったときはなかった。何回も往復しているのに虫たちの気配すらなかった。歴史のかけらを集めた瞬間にそれを感じるというのもおかしな話だ。いや、あの時三人は入れる個数はたしかにあったから感じていてもおかしくなかったはずだ」
たしかにパンドラさんの言い分もわかるが…。
「私は、という言葉が気になったからな。なら、あんた以外は攻撃しても私たちは何も言えなくなるってわけだ。約束は守ってるからな」
「…あなたみたいな賢い人間がいるとは」
「お前みたいな狡猾な虫がいるというのも驚きだよ。そもそも、この森に入ったこと自体が罠だったんだ。ミーミルさんが話していた行きたがらない理由もそれがあったからだ」
な、なるほど?
「でもなんでここがパラレルワールドだと?」
「それは私の勘だ。ま、これは外れてもいいがな。どちらにせよ、私たちは罠にかかったってことだ」
私たちは武器を構える。
パンドラさんの言う通りだったなら流石に警戒しなくてはならないからな。
「よく見破りました! あなた方は本当に私たちが真の歓迎をしなくちゃなりませんね! いやぁ、私の罠に気づくとはさすがです。よし、他の虫たちは元の世界に返しますので」
「やっぱパラレルワールドなんだな?」
「いえ、少し違います。ここは普通の世界ですよ。あの虫たちをパラレルワールドから連れてきたんです。これは私の能力で虫限定でパラレルワールドから連れてこれるんです。便利でしょう?」
「ああ、そうだな。あんた一人になって大丈夫か?」
「あなたみたいな賢い人間、私は好きですよ」
と、女王バチは笑った。
悪の魔王で話思いついたから更新しよーと思ったけどそれやったら前に苦情?きたからやめます




