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転生した魔法塔メイドは異世界でも便利に暮らしたい〜そうだ、魔法師様に家電を作ってもらおう〜  作者: 麻咲 塔子


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6 異世界コインランドリー爆誕

「コインランドリーを作りましょう」

「「「コインランドリー?」」」


みんなの顔にハテナマークが浮かんでいる。


「街の中に洗濯機を置く店を作るんです。そして洗濯一回につき三百ペナ、乾燥まで続けてやれば五百ペナみたいな感じにすれば庶民でも気軽に使えますし。コインを入れたら自動で動き出すように改良は必要ですけど」

「なるほどね。魔石を定期的に交換すれば、魔力の少ない庶民でも使えるよな?コリンズ君」

「はい。毎日一定数の利用があれば洗濯機代も回収した上、その後は魔法塔の収入にもなりますね」


クラーク師長はふんふんと頷くと、「はい、それ採用」とあっさり受け入れた。


「すごくいい案だね、私も賛成だ。街のおかみさん達はみんな使いたがるよ」

「毛布を洗うのに、大きなタライで足踏みしてたんだよ。そういうのも洗えるかい?」

「ドラムのサイズを大きくすれば、掛け布団だって洗えますよ!」

「「そりゃあいい!」」


満場一致でコインランドリー出店が決まった。


「じゃあ話を詰めようか。コリンズ君とアンナさん、私の研究室まで来てくれ」




師長の研究室にて、前回と同じく利益から発案者のアンナが一割、開発者の師長とウォルトもそれぞれ一割貰えることになった。場所は、メンテナンスや集金の手間を考えて、王宮近くのアンナ達が育った街の中に決まった。


「たしか、お菓子屋さんの向かいが空き店舗になってましたよ。あそこなら周りに住んでる人も多いですから、定期的に使ってくれる人もいるんじゃないかな」

「さすが地元っ子だな。そこを借りられるか聞いてみよう。水道も確認してリフォームしないとな。コリンズ君はコインを入れて動くように改良を頼むよ」

「わかりました。すぐに取り掛かります」

「アンナさんは店内の構想を教えてくれ」

「はい!」


アンナは前世のコインランドリーを思い出しながら、絵を描いていった。

洗濯機は衣類やタオル等にちょうどいいサイズのものと、布団まで洗える大型のものを数台。その場で乾いた洗濯物を畳めるようなテーブル。洗濯が終わるまでその場でも待てるようイスとテーブルもセットにした。


「こんな感じでどうでしょう」

「うん、コンパクトにまとめながらも機能性も完璧だ。君は凄いねぇ」

「いえ、妄想です妄想。は、はは」


前世のコインランドリーを作った人、ありがとうと心で思うアンナであった。




◇◇◇◇


今日はいよいよコインランドリー開店初日。クラーク師長からのお達しで魔法塔のメイド業は全員お休み。その代わりにコインランドリーの一日従業員を頼まれた。洗濯機に一番慣れている三人だからだ。使い方を説明するのにうってつけである。


「お客さん入ってくれますかねぇ……」

「大丈夫! 私達が街中に宣伝しといたから!」

「雨の日でも洗濯できるってんで、みんな興味津々だったよ」


おかみさんネットワークは実に頼もしい。事前にどんな物か話してくれたようだ。

店内奥の壁際には小型の洗濯機が上下二つずつで四台、布団も洗える大型の物が二台並んでいる。魔法塔の試作品と違うのは、コインの投入口ができたところだ。使い方も分かりやすく案内板に書いてある。

洗濯機の前には洗濯物を畳む用のテーブルと、四人がけのテーブルセットが二つ。店の大きさからしてこれくらいが妥当であった。




いよいよ開店時間になった。

待ってました! とばかりに最初に入ってきたのは、向かいのお菓子屋のご隠居さん。


「なにが出来るやらと毎日気になってたんだ」


このおばあちゃんは隠居してから暇をもて余しているらしく、よく店先のベンチで日向ぼっこをしていた。


「まさか洗濯屋だとはねぇ、面白い物を拵えたもんだ。ほら、これは開店祝いだよ」


そう言うと、息子の店の焼き菓子を小ぶりのかごに詰めたものを差し出す。


「まぁまぁ! ありがとうございます!」

「ご近所さんになるんだ、こちらこそよろしくな」


そう言うと、また向かいの店先のベンチへ戻って行った。



それから続々とご近所のおかみさん達や、興味津々の若い人などが訪れた。おかみさん達は実際に洗濯物を持参しており、ぐるぐると回る洗濯物を見ては目を丸くしていた。

洗濯機の使い方を説明したりテーブルセットに座るお年寄りの相手をしたりで、初日は昼食をとる暇も無いほど盛況であった。

少し人が途切れた時に、朝頂いたクッキーやマフィンで休憩していると、


「なかなか好評のようだね」

「クラーク師長! ウォルトも!」


魔法塔からふたりが様子を見に来てくれた。


「アンナ大丈夫?疲れてないかい?これ皆さんでどうぞ」

「大丈夫だよ、お茶を持ってきてくれたの? 嬉しい!」


魔法瓶に入った温かい紅茶を飲むと、三人はホッと一息ついた。砂糖とミルク入りの紅茶が疲れた身体にはちょうどよかった。


「ウォルトも洗濯機の改良お疲れさま。本当にありがとう」

「いや、僕はただ出来ることをしただけだよ」

「フフフフ、これで貯金もがっぽりね」

「へ?」

「ほら、貯められる時に貯めとかないと将来が不安じゃない」

「将来?」

「いつまで働けるかわからないし、老後の蓄えも必要でしょ。ほら家の両親、あんなだったからさ」

「なるほど?」

「よっしバリバリ稼ぐぞーー!」


「ハッハッハ、今どきの若い子はしっかりしてるわね」


クララとブレンダが豪快に笑った。

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