129話
ここまで伊達政宗が多分セリフすらありませんが……。
次回作は描き始めてます。
来週中に投稿します。
秀親が指揮を担って二週間がたった。
伊藤長実との約束の日である。
岡山の本陣から大坂城を眺める秀親の耳に激音が走り大坂城の方から煙が見えた。
「おお、伊藤がやりおったか!全然突撃せい!!」
秀親の指示で幕府軍が一斉に攻撃を開始した。
しかし真田信繁や木村重成の猛反撃に合い早々に先鋒部隊が敗走する。
それを見た信親は呟く。
「ほれ見た事か。秀親に戦は出来ぬ。大筒を撃て。まずは真田丸」
「よろしいのですか?」
「構わぬ。民部……やれ!」
戸惑う片岡民部だが信親に逆らうわけにもいかないので直ぐにカルバリン砲の攻撃命令を出す。
轟音と共にカルバリン砲から放たれた鉄球は真田丸に直撃する。
「なっ、何が起こっておる!」
「申し上げます!大御所様の陣から大筒が放たれておりまする。砦と門を破壊するゆえにそのまま突っ込めと大御所様は仰せにござる!」
何が起きたのか理解していない増田盛次の元に信親からの使番が馬上から伝令する。
「しょ、承知致した!全軍待機!大御所様の再攻撃を待て!」
増田軍を初め他の南部方面軍も動きが止まる。
そして再度轟音が轟き真田丸の門が吹き飛ばされる。
「よし!進めえ!!」
まずは増田勢が突撃する。
「甘い!そのようなことで真田丸は落とせぬわ!」
しかし真田丸の門を突破した所は曲がり道となっており、櫓から真田信繁の号令とともに弾丸が飛んでくる。
「竹束を構えて進むのだ!あのような櫓に怯むでない!」
突然の迎撃に混乱し後退する増田勢に変わって長束正家が号令をかける。
しかし門の攻撃に夢中になっていた正家の姿を堀秀政が捉えた。
「甘い!甘いぞ奉行衆!最後まで豊臣に尽くしたのは俺のようだな!」
秀政が弓を放つと矢は正家の首元を貫く。
「ぐっ……!太閤殿下……申し訳ござらぬ……」
正家が撃たれた事で長束勢は混乱し撤退。次に福原勢が突撃する。しかし信親は怯むことなく砲撃を続ける。
「やめよ!あの砲撃をやめさせるのじゃ!」
秀親が悲痛な叫び声をあげるがただただカルバリン砲から放たられる鉄球を眺める事しか出来なかった。
「申し上げます!長束正家様お討死!」
「福原勢も敗走!」
「石田勢が入れ替わりで攻撃を始めました!」
香ばしくない戦況だが朗報ももたらされる。
「平野川を超えて森村口を立花少将様が突破されました!同じく大和橋も小早川少将様が突破!」
「おお、これで大坂城に入り込むことには成功致しましたな」
「うむ。さあ……俺を殺ってみろ!久太郎!!」
その堀秀政は信親と親茂が待ち構える茶臼山を眺めていた。
「真田勢、突撃準備完了致しました」
「佐竹勢も同じく」
「秀頼君も出馬されると大野殿が」
秀政の元に信繁、佐竹義宣、木村重成が具足姿で報告する。
「よし、攻めている最中に自分達が攻め込まれるのだ。連中は泡を吹くじゃろうな」
「秀親は凡庸。大御所さえ討てば……」
若い重成が言うと彼の気持ちを察して他の3人も頷く。
「敵の先鋒は伊達政宗……強敵ぞ」
「この佐竹義宣にお任せくだされ。桑名勢には木村殿、最上勢は真田殿に」
「承知。我らが敵を足止めしている間に堀殿が突撃され秀頼君の道を切り開く」
「そして既に忍ばれている明石殿が大御所の本陣を奇襲する……。お見事な策かと」
3人が秀政の策を復唱する。
「まだまだ戦国の世は終わらせぬ。我ら武士は戦国の世でしか生きられぬことを大御所に教えてやろうぞ!!」
秀政が槍を掲げると3人もそれに続く。
こうして豊臣勢が突撃に出た。




