113話
津田信澄転生記の方の話を少し。
まだまだ先になるのですがあの作品での関ヶ原は恐らくなろう史上初?の最新学説に基づいて描きたいと考えています。
別に大乱関ヶ原とどうする家康に便乗してる訳ではありません。
あと、あの説でいくと長宗我部盛親の西軍参加理由もすらっと分かりますね。
徳川家康の乱から2年が経った。
諸将は新領地の統治を進め長宗我部信親・上杉景勝・宇喜多秀家は揃って権大納言に任ぜられ豊臣政権の中枢として諸外国との外交や大名同士の仲裁・取次などの業務を他の宿老や奉行と協力して行っていた。
そんな中、ある噂が上方で流れていた。
「なに?織田信重が戸川達安と花房正成を匿っておるだと?」
先日、父の長宗我部元親が亡くなりその葬儀のために一時土佐に戻りやっと大坂の長宗我部屋敷に着いたところで信親にその報せは在坂の長宗我部家臣である石谷親辰から伝えられた。
「はっ。それでこの件に関して宇喜多様が直ぐに宿老と奉行に集まるようにと仰せにございます」
「あの子せがれめ。もう日ノ本を自分のものにしたつもりか?……とはいえ行かぬ訳にも参らぬ。行くとしよう」
早速秀家の指定した時間帯に信親は大坂城に入った。
既に宿老5名に五奉行、そして事の発端人である織田信重が末席に控えていた。
「ほう、もう備前宰相殿も来られていたか」
「遅いぞ南府亜相。もう皆集まっておる」
示し合わせていたのかは不明だが諸将の視線は信親に集中し秀家は不愉快そうにしている。
「時間通りに来たつもりだったのじゃがな。とはいえ俺が1番遅いことに代わりはない。悪かったな」
「まあ良い。では早速だがそなたらを集めた理由は他でもない。我が家中に騒乱を起こし徳川内府と共に豊家に謀反を起こした戸川肥後守と花房志摩守をそこにおる織田信重殿が匿っておる。これは秀頼君より国政を預かりし我らに対する謀反ではないか?」
そう言って秀家が辺りを見回すと前田玄以・長束正家と福原長堯がそれに頷く。
「まあ決めつけるのはまだ早い。参議殿は何か申し開くことはござるかな」
信重とは25年の付き合いである。信親は初めから信重の味方をするつもりでここに来ていた。
「はっ。花房・戸川両名が我が所領たる備前に居る事に相違ござらぬ。されどこの両名は既に武士の身分を捨て出家し故郷にて隠棲しておるだけにございます。今更罪を問うことなど無用にございましょう」
「なっ!彼奴らのせいで我が家中がどれほど乱されたと思うておる!出家した程度で許されることでは無いわ!」
かなり恨みがあるのが秀家は立ち上がり声を荒らげる。
「そもそも、御家騒動が起きたのは宇喜多殿が中村家正ら加賀の者共に肩入れするからでございましょう。しかし中村らは処罰されず戸川や花房に責任を押し付けることの方が許される事ではございますまい」
「ほほほ、流石は七兵衛じゃ。こういうのはお互いに思うところをぶつけ合わねばならぬ。宇喜多殿はこれについてどう思われるか?」
そう笑いながら織田信雄が秀家の方を見る。
秀家は挑発され顔を真っ赤にして身体を震わせる。
「我が家中のことに参議の身分で口出しするな!今すぐに花房と戸川の首を差し出さねばお主を討伐する!良いな!?」
それを聞いて信親が立ち上がる。
「宇喜多殿に物申す!そなた1人の権限で討伐など認められる訳がなかろう!そもそも花房・戸川共に処刑するほどの罪を犯しておらぬわ!それを七兵衛殿にそなたの私怨で斯様な振る舞いをするのは看破出来ぬ!」
「ふん!ならば他の方々に聞こう。備前宰相の方に非があると思う者は手を挙げよ」
秀家に睨まれて福原長堯・前田玄以・長束正家・上杉景勝が手を挙げる。
が、残る増田長盛・垣見一直・堀秀政・織田信雄は手をあげない。
「七兵衛は我が幼馴染。此度は宇喜多殿には申し訳ないが七兵衛の味方をさせてもらう」
「流石は前内府殿。やはり宿老に選んだ俺の目は間違って居なかったようだ」
「宿老・奉行の過半数の承諾が得られぬならば政は出来ませぬ。これで私は無罪放免ですな」
信重はそう笑いながら吐き捨てるとさっさと部屋を出ていった。
こうして戸川達安・花房正成は許されたはずだった……が1週間後に信親の元に驚愕の知らせが届いたのだった。




