39話
鶴ヶ城が落ちたとの報告が府内城に入った。
多くの者が捕虜になりそれ以外は全滅したそうだ。
「肥後より島津義弘以下二万の軍勢も接近しております。また、家久の軍勢はどんどんと膨れ上がり今では二万と……」
「二万!?義弘勢も膨張すれば我らより兵が多くなるではないか!」
加藤嘉明の報告を受けて仙石秀久が立ち上がる。
「この府内を落とすには十万は必要よ。薩摩の島津軍が来ても六万にもならん。それにそれが来る頃には殿下の軍勢も到着する」
「甘い!その内に被害がどれだけ出るか!」
「では野戦で首を掻っ切られて良いと申すか!城に篭っていれば勝てるものを無駄死にに行くと申すのか!?」
睨み合う信親と秀久。
外様の大友義統が口出しできるはずもなく加藤嘉明と脇坂安治はまだ経験が浅い。
険悪な空気が流れる中で使者が飛び込んできた。
「申し上げます!島津の手の軍勢が臼杵城に攻め込んだ模様!大殿以下全軍で抵抗されております」
「問題ない。臼杵には国崩しがあるのでしょう?」
「ええ。おそらく大丈夫かと……」
義統も信親に遠慮してなかなかはっきりとした報告をしない。
そんなこんなで信親と秀久の論争が続く中、島津家久率いる二万と島津義弘率いる二万の軍勢が合流した。
「ほう、各地の城主を人質に取ったか」
縄で捕縛された大友家の重臣たちを見て義弘が感心する。
「左様。又六郎兄上(歳久)に言われた通りに皆捕縛致しました。何か策があっての事でしょう?」
「うむ。豊臣の軍監の仙石秀久は猪武者で情に厚い。子奴らを痛ぶれば激高して突っ込んでこよう。さすれば長宗我部軍も出ていく他あるまいて。そこを兄上と又七郎が叩けば良い」
「という事じゃ、義統は臆病者ゆえ味方の軍が壊滅すればとっとと逃げよう。しかし長宗我部単独でなくて良かったな」
「はて、どういう事でしょう?」
「分からぬか又七郎。長宗我部単独なら豊臣家に遠慮すること無く我らを無視しよう。しかし豊臣の軍監を死なせるとなれば信親も黙ってはおれぬ」
歳久の説明に家久が感服したように頷く。
「よーし、島津の戦。始めるぞ」
義弘が言うと2人の弟も頷く。
島津軍、四万が動き出した。




