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後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第一章 召使編

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91 初対面



 リーナとヴィクトリアは王族席に付属する控えの間に通された。


 まずはそこで一度待機するよう言われる。


 しばらくすると、アルフと共にロジャーが来た。


 ロジャーはヴィクトリアを睨んだ後、リーナを上から下までじっくりと見た。


 そして、眉を上げる。驚いたのだ。


 その様子にヴィクトリアは笑みを浮かべた。


「綺麗になったでしょう? お母様の趣味だけど、似合っていると思うわ」


 リーナは白いレースが全身にあしらわれたドレスを着用していた。


 ノースランド伯爵夫人の趣味、そうとしか言えないドレスだ。


 派手にならないよう後付けされた装飾はできるだけ取り外され、エレガントな雰囲気のドレスに仕上げた。

 

 身分が低いことから、派手なアクセサリーは避けることになった。


 アップにした髪に花のピンがいくつかちりばめられている以外は、小さなイヤリングしかつけていない。


 それがかえって清楚さを感じさせ、好感度を上げていた。


 元々のドレスが高額なだけに、どこからみてもリーナは裕福な貴族の令嬢にしか見えない。


 男爵家という出自から考えると相当めかしこんでいるが、公爵家のボックスに行くからこそ最高のお洒落をしたと解釈すればいい。


 王族席に呼ばれ、王族に挨拶することになっても問題ない服装だった。


「まずはノースランド子爵として注意する。私の許可なく、勝手に行儀見習いを同行させたのは間違いだ。必ず許可を取れ。でなければ、相応の処罰をする。本気だ」


 ロジャーが自分を呼んだのは注意するためだとわかり、ヴィクトリアは顔をしかめた。


 控えの間には警備の者がいる。そのような場所で注意されるのは恥になってしまう。


 それがわかっている上で、ロジャーはヴィクトリアを注意することにしたということだ。


「教養を深めるためにもいい機会ではなくて? むしろ、感謝されたい位だけど」

「ノースランド公爵家のボックス席にというのであればともかく、リンドバーグ公爵家のボックス席だ。お前は問題なくても、行儀見習いは駄目だ。挨拶をした際、公爵夫妻の様子はどうだった? よくなかったのではないか?」

「仕方がないわ。アデルが欠席することになってしまったわけだし」

「公爵家のボックス席を使用するには、相応の身分が必要だ」


 公爵家に行儀見習いをしに来るというのは、身分が低い者であることが確定だった。


「お母様を誘ったけど嫌がったの。それに、五番と六番よ? ぼったくりの謝礼金を支払わされたけど、アデルが六番でいいというから我慢したのよ!」

「一人で行けばよかった。六番が空席でも問題ない。よくあることだ。わざわざ身分の低い者で埋める必要などない」


 ヴィクトリアは黙り込んだ。


 ロジャーの指摘に反論できなかった。


 ほとんどのボックスは六人分の席があるが、最後列の五番と六番の席は非常に観にくい。


 見る席ではなく聞くための席と言われるほどだ。


 そのせいで後列が空席であっても気にしない者も多くいるのは確かだった。


「でも、アデルが誰かを必ず同行させて欲しいって手紙をよこしたのよ。アデルの取った席だもの。アデルの言う通りにしただけだわ」

「お前が誰を同行させるか、アデルは知っているのか?」


 ヴィクトリアはハッとした。


「行儀見習いを連れて行くと聞けば、ヴィクトリアだけでいいと言ったかもしれない」


 その可能性はあるとヴィクトリアは思った。


「リンドバーグ公爵は身分主義者だ。下級貴族には席を譲らない。そのことを知っているのか?」

「そうなの?」


 ヴィクトリアは驚いた。


 リンドバーグ公爵が身分にうるさいのは知っているが、下級貴族には席を譲らないということは知らなかった。


 席を譲る相手の条件について、アデルの手紙には一切書かれていなかった。


「今後、リンドバーグ公爵のボックス席はあてにしないことだ。行儀見習いを同行させたお前は二度と席を譲られることはない」

「そんな!」


 ヴィクトリアは悲壮な表情になった。


「アデルが体調不良になったのは、仕方がないじゃないの!」

「リンドバーグ公爵夫妻にはその言い訳が通用しないと言っている。お前はそれを知らない愚か者ということだ。アデルも同じように思われたかもしれない」


 ヴィクトリアは友人にも影響が出るかもしれないと言われて動揺した。


「用件はまだある。第二王子がお前に声をかけてくれるらしい。失礼のないように挨拶しろ」

「第二王子が?」


 ヴィクトリアは怪訝な顔をした。


 弟のロジャーが側近なだけあり、ヴィクトリアと第二王子は面識がある。


 だが、知っているだけ。それ以外のつながりは一切ない。


 だというのに、なぜ声をかけるのか。


 ヴィクトリアにはまったくわからなかった。


「ロジャー、何かあるの?」

「呼べと言われただけだ」

「そう。リリーナはここにいなさい。第二王子に挨拶してくるわ」

「同行者も一緒だ。リリーナも第二王子に挨拶する必要がある」

「リリーナも?」


 ヴィクトリアはますますわからなくなった。


「大丈夫なの?」

「第二王子が言った以上、そうするしかない。拒否権はない」

「それもそうね」

「礼儀作法は学んでいるはずだ。ヴィクトリアを参考にしながら、同じように挨拶をすればいい。所詮は同行者だ。重視されない」

「リリーナ、第二王子に失礼のないよう挨拶しなさい。頭と腰をしっかり落とすのよ? いいわね?」

「はい」


 リーナは不安な表情でロジャーの方を見たが、ロジャーはリーナと視線を合わそうとはしなかった。


 ロジャーの先導によって、二人は控えの間から王族席の間に入室した。



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