表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後宮は有料です! 【書籍化】  作者: 美雪
第一章 召使編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/1372

10 監視されて



 リーナは次の掃除場所に着いた。


 豪華な部屋を素通りし、隣のトイレに行く。


 二カ所目は誰も使っていない状態だった。


 使用済みのタオルがなく、トイレットペーパーの先に綺麗な折り目がついたままであれば未使用だとわかる。


 しかし、手抜きはできない。


 雑巾で乾拭きをして埃が絶対にたまらないように掃除したあと、備品をチェックする。


 二カ所目の掃除が終わると、リーナは三カ所目の掃除に向かった。


 三カ所目も未使用の状態。乾拭きをして備品のチェックをする。


「あっ!」


 リーナは驚き、思わず声をあげた。


「どうした?」


 尋ねたのはクオン。


 クオンはリーナに次のトイレを掃除しに行く許可を与えたが、それだけではなかった。


 リーナに同行し、掃除する様子をずっと見ていた。


「答えろ」


 リーナは困った。


 仕事内容に関しては、軽々しく話してはいけないことになっている。


 しかし、以前にそれを守ったせいで警備に捕縛され、余計な手間がかかったということで警備にもメリーネにも叱責された。


 今はあの時のように疑われている状態。


 真面目に仕事をしていることを証明するためにも、きちんと答えた方がいいとリーナは思った。


「備品の数が合わないのです」


 リーナは詳しく説明することにした。


「私の仕事の内容には、ここにある備品の予備数を確認することも含まれています。交換すると予備の数が減りますが、今は交換していません。それなのにタオルの数が一枚足りません。そのことに気づいたので思わず声が出ました」


 クオンは黙っていた。


「これは問題です。上司に報告しなければなりません。紛失か盗難です。説明は以上です」


 リーナの説明が終わると、男性はまじまじとリーナを見つめた。


「お前はかなりの真面目か几帳面な性格のようだ」

「お褒めに預かり光栄です!」


 リーナは喜んだが、クオンはリーナを褒めたわけではなかった。


 思ったことを口にしただけ。正直に言えば、タオルが一枚足りないだけで、驚きすぎだろうと思っていた。


 紛失か盗難……。


 間違いではないのかもしれないが、所詮はタオル一枚。


 クオンの感覚では、どうでもいいことのように思えた。


「仕事は終わりか?」

「交換したタオルをクリーニングカウンターに預ければ終わりです」

「クリーニングカウンターはどこにある?」

「ここの備品については一階のクリーニングカウンターに預けます」


 クリーニングカウンターは二カ所ある。


 地下で使用されるものは地下のカウンター、地上で使用されるものに関しては一階のカウンターに出すことになっていた。


「六時までに終えるといったが、ずいぶん早いな?」

「未使用だからです。沢山使われた形跡があれば掃除時間がかかるので、余裕を持って設定されています」

「さすがにクリーニングカウンターまで行く気はしない。お前が本当に仕事をしにきたことは認める。だが、いきなりドアを開けるのは無礼だ。まずはノックし、確認してからドアを開けるべきではないか?」

「それについては謝罪いたします。それから、お尋ねしたいことがあります。貴方はどなた様でしょうか?」

「知る必要はない」


 リーナは困った。


 控えの間に男性がいたことをメリーネに報告しなければならない。


「それでは困ります。知らない者と会った場合は所属や名前を聞いて報告しなければなりません。でないと上司に怒られてしまいます!」


 リーナは違反者と間違われて警備に捕縛された経験があること、その時にたっぷりと上司に叱責されたことを懸命に説明した。


 あまりにも必死な様子のリーナを見て、クオンは名乗ることにした。


「……クオンだ」

「クオン様ですね。控えの間にいらっしゃったということは、外部の方でしょうか?」

「そうだ」


 クオンは頷いた。


「私に会ったことは上司に報告しなくていい。警備にも言うな。外部の者だけに名前を言ってもわからないだろう」

「でも」

「聞け」


 クオンは制止した。


「もしかすると、お前は控えの間が使用中だということを聞いてなかったのではないか?」

「聞いていないというか、何も連絡されていません。いつも通りだと思っていました」


 だからこそ、リーナはノックすることなくドアを開けた。


「誰もいない時間に掃除するので、ノックをするようにとは言われていなくて……」


 部屋を使用中であれば掃除はしない。


 誰もいなくなってから掃除することになるはずだった。


「お前は悪くなさそうだ。だが、部屋が使用中であるにもかかわらず、そのことが通達されていなかったのは問題だ。掃除に来たことが問題視される可能性もある」


 そうかもしれないとリーナは思った。


「私の方からお前の上司よりも上の者にうまく伝えておく。わかったか?」

「わかりました」

「内密に処理する可能性もある。私に会ったことは誰にも話すな。無礼なことをしたと思われ、処罰されるのを防ぐためだ。いいな?」

「はい」

「行け」

「失礼いたします」


 リーナは深々と一礼すると、一階のクリーニングカウンターに向かった。


 いつも通り交換したタオルを洗濯に出したあと、上司のメリーネ宛に予備のタオルが一枚少なかったことを報告する手紙を書くことにした。


 緊急のこと以外、早朝勤務については手紙で報告すればいいことになっている。


 この方法はとても便利だが、お金がかかる。


 手紙を出すためには便せんと封筒とペンが必要になるが、自己負担で用意しなければならなかった。


 真面目に報告するほど自己負担の文具代がかさみ、借金が増える。


 リーナは真面目だからこそ、報告をしなくてもいいとは思わない。


 購買部で一番安価なものを購入し、報告の手紙を出していた。


 後宮内から後宮内に出す郵便物は、業務通達に使用されることもあって無料。


 送料がかからないだけでもましだとリーナは思っていた。


 リーナは手紙を書き終えると封筒にしまい、郵便ポストに入れた。


 クオンに言われた通り、リーナはクオンに会ったことを誰にも話さなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★書籍版、発売中!★
★QRコードの特典あり★

後宮は有料です!公式ページ
▲書籍版の公式ページはこちら▲

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ