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11話 メイドの勉強

ジャンル別日間2位、週間21位ありがとうございます! これからも精進していきます!


(2019/11/12 追記)

活動報告にて、感想によく送られるご指摘について回答しました。一読していただけると幸いです。



 お腹も膨れたところで、早速本来の目的である生活必需品の買い出しを始めた。主に風見さんのものを中心に、家具や日用品、果ては食材まで買うべきものはそれなりにある。事前に買うものをリストアップしておかなかったら、混乱してしまいそうだった。

 だがはっきり言って、ここでの俺の出番はほとんどない。料理やら掃除やらの作業をするのは風見さんなので、必然的に道具等も風見さんが選ぶことになる。その間に俺が入ることはなく、せいぜい荷物持ちとお金出すくらいだ。

 風見さんとしては、初めてお金のことを考えずに買い物しているだけあって、割とテンションが高い。本来女の子にとって買い物というのは、息をするくらい当たり前にしていることなのだ。

 それがようやく解禁出来て、風見さん自身凄く楽しそうである。そんな風見さんをまるで我が子の喜ぶ親のような感じにしか見えないとは、口が裂けても言えないけどな。


 そんな感じで二、三時間が経過し、俺の手には大量の袋が握られていた。これ全部が今日だけで購入したものと考えると末恐ろしい。俺が今のところに引っ越した時は、両親にほぼ全て用意してもらったしな。父さん母さんマジ感謝してる。


「ふぅ~いっぱい買ったね」

「そうだな。こんなに買ったのはいつぶりだろうな?」

「私は初めてだよ。うん、初めて……」

「わかった、もう気にしなくていいから」


 お金絡みになるとどうしても過去の自分を思い起こしてしまう風見さん。そのたびに表情が死んでいくのは、俺としてもあまり見たくない。

 風見さんが学校ではどんな風に過ごしているかまではわからないが、絶対にこんな悲観的ではないだろう。今後そういう思いをさせないように、風見さんにはもっといい思い出を作ってほしい。


「さて、もう用事も済んだことだし。どうしますか? 帰って荷物整理でもしますか?」

「う~ん、それが正しいんだけどね……」

「……どっか行きたい場所でもあるんですか? 荷物置いてからならいいですけど」

「ホント⁉ じゃあお願いできる? 多分その辺りは増井君詳しいと思うし……」


 俺が詳しいところ? 更に言えば風見さんが行きたそうなというのを加えての話だろ。

 そんなところあったっけな。俺が詳しいところって言ったら、本屋くらい……




「私をメイドカフェに連れてって!」




 ……ごめん、その回答は予想外だったわ。


「メイド、カフェ? た、確かに他の人よりは詳しいけど……」

「でしょ! 増井君のところにメイドとして務めるなら、一回手本は見ておきたいし。ダメかな……?」

「……まぁいいけど」

「よし!」


 提案を受け入れてもらえ、ガッツポーズをする風見さん。学校でも俺と接するときも陽キャっぽい雰囲気を醸し出しているが、やはり学年一位を守り続けている優等生なだけはある。自身のスキル向上のために、積極的に学ぼうとするのは非常に良い事だ。

 そうなると俺も風見さんの期待に応えるために、それなりの知識を振り絞らないといけない。俺の知り得るメイドカフェを全て思い起こし、その中でも初心者である風見さんでも馴染みやすいメイドカフェをピックアップしないといけないのだ。

 まず一度家に帰ってメイドカフェに行き、その日中に帰れるところじゃないとさすがにダメだ。更にオーソドックス——マンガやアニメでよく見るような、いわゆる萌え~的な感じ——なのは避けた方がいいな。同じ趣味を志す同士となら別だけど、今回はメイドとしての立ち振る舞いを見たいわけだ。

 そういった意味では、最初に入る店で彼女の今後のメイドとしての道が変わってくるのだ。となると一番適するのは……あそこか?

 目星を頭に浮かべながら、とりあえず大荷物を家に置いて来ることにした。





「おかえりなさいませ。ご主人様、お嬢様」


 お店の扉を開けると、どこか穴場と感じさせるような雰囲気がある空間。過度な装飾等は施されておらず、まるで物語に出てくる屋敷の一室を彷彿とさせる。

 そしてメイドさん。風見さんと同じクラシカルタイプのメイド服を身に纏い、非常に落ち着いた様子で俺たちを出迎えてくれた。うん、やはりメイドさんは目の保養になるな。俺だけだけど。

 俺自体は何回か行ったことがあって慣れているが、初めてメイドカフェに来た風見さんはやはりちょっとソワソワしていた。よくありそうなところに連れていったら、もっと落ち着かなかったであろう。

 メイドさんに人数を伝え、席に案内される。メニュー表を置き、メイドさんは一度裏の方に戻っていく。二人になったところで、とりあえず風見さんを慣れさせることにした。


「どう? 初めてメイドカフェに来た感想は?」

「うん……なんて言うか、いい意味で裏切られたって感じ。私の想像……と言うかクラスの子に聞いた感じだとこう……「萌え萌えキュ~ン!」ってイメージを抱いてたから」

「……う、うん。そうだね」


 不意に風見さんから「萌え萌えキュ~ン!」という単語を聞いて、俺の中に衝撃が走る。一瞬でもそれをしたメイド服着用の風見さんを想像してしまい、思わずニヤニヤしそうだった。危ない危ない……


「ま、まぁそういう店もなくはない……俺のバイト先とか、そういう感じだし」

「そうなんだ……って、増井君メイドカフェで働いてるの⁉」

「一応ね。正確には「メイド&執事カフェ」だけど……まぁその話はまた今度にしよう」


 俺のバイト先は結構レベルが高いからな……メイドカフェそのものが初めてとなると、ちょっと勧めるのは無理があった。あとバイト先で変な噂が立ちそうで怖いし……


「ここは店員さんがメイド服で給仕している以外、割と普通のカフェだよ。紅茶が美味しいことで有名なくらいだし」

「へぇ~メイドカフェにもいろいろあるんだね」

「そうそう。そういう意外性のあるところを探すのも、楽しいところなんだけどね」


 補足で説明を加えながら、俺たちは注文を決める。俺がアッサムとオムライスで風見さんがダージリンとカレーだ。ちなみにここの食べ物は、割と本格的なものが出てきて結構おいしかった印象はある。


 注文を済ませ少しすると、再びメイドさんがやってくる。ここではお客さんの間近でメイドさんが紅茶を入れてくれるのだ。これが普通なのかは……そんな外食しない俺に聞かないでくれ。


「失礼致します」


 俺たちに一言断りを入れ、用意したカップに紅茶を注いでいく。こうしてメイドさんが間近で給仕している姿を見るのも、メイドカフェならではの楽しみである。きっと風見さんのためにもなるだろう。


「……」


 想像通り、まるで全部の行動を全て覚えてやる、と言わんばかりの視線をメイドさんに向けていた。勉強熱心なのはいいことだけど、必死すぎじゃないかな?

 まぁコレも風見さんが今まで必死に生きてきたという証拠にもなるわけだ。風見さんの素敵な人間性を垣間見た瞬間だった。

 そんな風見さんのことも一切気にもせず、紅茶を注ぎ終えたメイドさん。「失礼しました」と言葉を残し、また奥に行ってしまった。


「……本職の人って、凄いんだね」

「まぁね。厳密にはここで働いているメイドさんも本職ってわけじゃない。でも本職の人と変わらないくらい、足を運んでくれたご主人様たちへ奉仕する想いは高いんだ。だからメイドさんは正義なんだよ」

「ふふっ、何それ……でも、見直しちゃった。メイドさんってちゃんとしてて、誰でも務まるってわけじゃないんだね」

「……そうだな。だから風見さんも……そのくらい頑張ってね」


 多分爽やかな笑顔を風見さんに向けたと思う。

 ちなみにこれはネタであって、完全にツッコミ待ちだ。そのくらい頑張るということは、そのくらいご主人様、つまり俺を想ってくれと言っているようなものだ。自分で言っておいてアレだけど、瞬時に恥ずかしくなったわ。

 これで風見さんの肩の荷を下ろそうと考えたのだが……返ってきた答えはある意味想定外だった。


「……うん。私、これから頑張るよ、増井君!」


 曇りなき笑顔を俺に向け、風見さんはこれからの生活に気持ちを高ぶらせていた。

 アレ……もしかしてネタに気づいてない? それとも気づいていて敢えてこう返したのか? 風見さんが考えてることが全くわからない! まさか本気で……いや、まさかな……


 詳しい意味を聞こうとしたけど、料理が来たことによってこの話は打ち止めとなった。満面の笑みで料理を口に運ぶ風見さんは、もうさっきのことなど完全に忘れていることだろう。

 風見さんから聞きだすのはとりあえず諦め、俺も料理を食べることにした。今日のオムライスも美味しかったです。





今回参考にしましたメイドカフェは、実際牛風が一回だけ行ったことがあるメイドカフェです。結構よさげな印象でした。


毎日のブックマークと評価の方、ありがとうございます!


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数字が増えるだけで凄く喜ぶ単純な作者なので、応援していただける方はぜひお願いします!

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