表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自由戦争  作者: 夜求 夜旻
第2章 世界大戦の引き金

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/47

No.40 立ち込める煙

会談三日目が終了後、和日月は沖縄に派遣された兵士全員を沖縄軍事基地の会議室に呼び出し、会談の結果を伝えた。


「以上が会議の内容だ。資料にもある通り、我々日本軍は元来より協力関係である米軍の更なる協力要請を受け入れ、各国間の軍事力強化及び物資の共同活用に向け、協議を進める方針だ」


「では、中立を主張する欧州とは...我々も敵対するということでしょうか」


振動が一番最初に皆が気になっている質問をした。質問をするまでもないが、それでも確認しなければならない。


「その通りだ。米軍側も対ロシア、中国との戦闘において軍事介入をより強固にし、各国に基本的に日米合同で対処する方針だ」


日本を主語にすれば、敵勢力が三つに増え、今までよりも立場や力関係が厳しい状況に見える。しかし、軍の上層部は各国で切り分けた場合に確実に勢力的有利を維持できると判断した。


「...とは言え、我々は今、単独勢力ですら対処が厳しい現状です。米軍との協力関係を半々にできるとは思えません」


米軍側と日本軍側の消耗を平等にするには明らかに現状の日本では常に全勢力投入という状態になりかねない。結局それでは、米軍との協力関係を強固にしたところで内情としては何も変化していないようなものだった。


「具体的な軍事作戦における編成は今後慎重に協議を進めていく。現状ではまだ何も定まっていない」


「...そうですか。米軍との協議を進める前に我々の方針を定めなければいけないですね。軍備増強はいかがですか」


「武装強化については今回の協力関係強化に準じて、物資面の支援を米軍側には要求し、それを米軍は了承している。今後の協議での議題の一つとなるだろう」


「...旦那、協議決定までの襲撃対応はどうする。結局そこだろ。国家間の軍事的協議なんて探り合いと化かし合いで時間がかかるもんだ。結局、米軍頼りのままでも意味がない」


「能力者増強についても推進中だ。作戦内容も敵軍の殲滅から撃退へ変更せざるを得んだろう。我々は防戦を余儀なくされる。昨今沈黙を続けている中国の動きにも要注意だ。ロシアを単独で撃退できたことで、安易な侵攻は防げていると思いたい」


「それは裏を返せば、入念に準備をした侵攻の可能性が高いということです。...また別日に我々隊長含めた作戦会議を行いましょう」


隊長たちが各々、今後の方針についてその場で和日月に意見し、日米会談の結果報告の場は閉じられた。



本部に帰還してから数日後、新たな問題となる欧州からの支援提案が届く。欧州との敵対を方針決定したばかりの日本軍はその提案に混乱した。本来願ってもない提案に対して、不要と回答しなければならず、米軍との完全同盟は欧州に対しての宣戦布告とも捉えられかねない。しかし、米軍との条約を蔑ろにするわけにはいかなかった。


「能力兵増加については...。そうか。...現状よりも精力的に候補者を選出せよ。...致し方ない。この戦で敗北すれば本末転倒だ」


和日月は指令室で誰かに連絡を入れている。内容は日本の能力兵増加施策についてだった。憂希が加入して以降、目立った能力兵は増えておらず、グレード5や4といった能力兵のみとなり、明確な戦力強化には至っていない。


「ああ...。わかっている。慎重に進めることに変わりない。司法や行政とは話がついている。...他国との人口差を考慮すれば、この情報を入手されれば終いだ。躍起になっているのも致し方ないが、それを許すわけにはいかない。...我々は腹切り覚悟で日本を背負っている。背に国がある以上、今更振り返る余裕などない。...国際化が進んだこの国で、神風がごとき提案は国内部からの崩壊につながる。...ああ、それだけは避けなければならない」


圧倒的に他勢力に対して、軍事兵力や人口が少ない日本が、グレード1を始めとする能力兵確保を他国同等にまで増やしたのは偶然ではない。各国が日本に注目する理由はそこにある。軍事的弱小国家だった日本が、各国に並ぶに至るその根拠を探っているのだった。どの国にもある能力者適合のリスク。それを越える何かを日本は保有していた。


「...引き続き頼む。ああ、銃や装甲車を増やすよりも効果的だ。今は何より、対抗戦力の増強が先決だ。ああ、それでは」


和日月としても、表に出さない心情は穏やかではなかった。狙ったかのように憂希配属から激化する各国の軍事行動。それに伴い消耗し続ける軍事力と各兵士。貴重なグレード2の兵士すら失った。地道に進めていた戦力増強も、今や手段を選んでいては寝首をかかれて敗戦する。


「っ......。必要最低限というわけにはいかないな」


リスクのある能力者への進化を推し進めること。それ自体が秘匿性や内部三日目が終了後、和日月は沖縄に派遣された兵士全員を沖縄軍事基地の会議室に呼び出し、会談の結果を伝えた。


「以上が会議の内容だ。資料にもある通り、我々日本軍は元来より協力関係である米軍の更なる協力要請を受け入れ、各国間の軍事力強化及び物資の共同活用に向け、協議を進める方針だ」


「では、中立を主張する欧州とは...我々も敵対するということでしょうか」


振動が一番最初に皆が気になっている質問をした。質問をするまでもないが、それでも確認しなければならない。


「その通りだ。米軍側も対ロシア、中国との戦闘において軍事介入をより強固にし、各国に基本的に日米合同で対処する方針だ」


日本を主語にすれば、敵勢力が三つに増え、今までよりも立場や力関係が厳しい状況に見える。しかし、軍の上層部は各国で切り分けた場合に確実に勢力的有利を維持できると判断した。


「...とは言え、我々は今、単独勢力ですら対処が厳しい現状です。米軍との協力関係を半々にできるとは思えません」


米軍側と日本軍側の消耗を平等にするには明らかに現状の日本では常に全勢力投入という状態になりかねない。結局それでは、米軍との協力関係を強固にしたところで内情としては何も変化していないようなものだった。


「具体的な軍事作戦における編成は今後慎重に協議を進めていく。現状ではまだ何も定まっていない」


「...そうですか。米軍との協議を進める前に我々の方針を定めなければいけないですね。軍備増強はいかがですか」


「武装強化については今回の協力関係強化に準じて、物資面の支援を米軍側には要求し、それを米軍は了承している。今後の協議での議題の一つとなるだろう」


「...旦那、協議決定までの襲撃対応はどうする。結局そこだろ。国家間の軍事的協議なんて探り合いと化かし合いで時間がかかるもんだ。結局、米軍頼りのままでも意味がない」


「能力者増強についても推進中だ。作戦内容も敵軍の殲滅から撃退へ変更せざるを得んだろう。我々は防戦を余儀なくされる。昨今沈黙を続けている中国の動きにも要注意だ。ロシアを単独で撃退できたことで、安易な侵攻は防げていると思いたい」


「それは裏を返せば、入念に準備をした侵攻の可能性が高いということです。...また別日に我々隊長含めた作戦会議を行いましょう」


隊長たちが各々、今後の方針についてその場で和日月に意見し、日米会談の結果報告の場は閉じられた。



本部に帰還してから数日後、新たな問題となる欧州からの支援提案が届く。欧州との敵対を方針決定したばかりの日本軍はその提案に混乱した。本来願ってもない提案に対して、不要と回答しなければならず、米軍との完全同盟は欧州に対しての宣戦布告とも捉えられかねない。しかし、米軍との条約を蔑ろにするわけにはいかなかった。


「能力兵増加については...。そうか。...現状よりも精力的に候補者を選出せよ。...致し方ない。この戦で敗北すれば本末転倒だ」


和日月は指令室で誰かに連絡を入れている。内容は日本の能力兵増加施策についてだった。憂希が加入して以降、目立った能力兵は増えておらず、グレード5や4といった能力兵のみとなり、明確な戦力強化には至っていない。


「ああ...。わかっている。慎重に進めることに変わりない。司法や行政とは話がついている。...他国との人口差を考慮すれば、この情報を入手されれば終いだ。躍起になっているのも致し方ないが、それを許すわけにはいかない。...我々は腹切り覚悟で日本を背負っている。背に国がある以上、今更振り返る余裕などない。...国際化が進んだこの国で、神風がごとき提案は国内部からの崩壊につながる。...ああ、それだけは避けなければならない」


圧倒的に他勢力に対して、軍事兵力や人口が少ない日本が、グレード1を始めとする能力兵確保を他国同等にまで増やしたのは偶然ではない。各国が日本に注目する理由はそこにある。軍事的弱小国家だった日本が、各国に並ぶに至るその根拠を探っているのだった。どの国にもある能力者適合のリスク。それを越える何かを日本は保有していた。


「...引き続き頼む。ああ、銃や装甲車を増やすよりも効果的だ。今は何より、対抗戦力の増強が先決だ。ああ、それでは」


和日月としても、表に出さない心情は穏やかではなかった。狙ったかのように憂希配属から激化する各国の軍事行動。それに伴い消耗し続ける軍事力と各兵士。貴重なグレード2の兵士すら失った。地道に進めていた戦力増強も、今や手段を選んでいては寝首をかかれて敗戦する。


「っ......。必要最低限というわけにはいかないな」


リスクのある能力者への進化を推し進めること。それ自体が秘匿性の低下や内部の軋轢を生みかねない。力を持ち、特別感に酔う一般人出身者がほとんどの中、その力に疑問を持ち、制度や理屈を探る憂希の存在は厄介と言わざるを得ない。憂希を完全に日本軍に引き込むことができれば話は早いが、欧州軍とコンタクトを取り、ロシア、中国のどちらの戦場にも投入された経験が、その倫理的思考に拍車をかけている。


「...私だ。...神崎上等兵を収集してほしい。ああ、彼単独で構わない」


和日月は指令室に憂希を呼び出す。和日月の心情ではやはり穏やかではなかった。



司令室に呼び出された憂希は、必ず能力者のリスクについて質問することを心に誓っていた。


「失礼します。神崎上等兵、到着しました」


「入れ」


他の兵士の見様見真似もだいぶ様になってきている。人の目につく場所で和日月に対して立場を弁えない態度をとると、周囲から白い目で見られることを自覚し、形だけでもと取り繕っている。


「...なんの用で」


「君は欧州軍の軍事支援について、何か接触相手から聞かされていたのではないのか」


「...聞いていた。報告しなかったことには理由はある。怠ったわけではない」


「...理由とは?」


情報がすれ違ったこの状況には、憂希としても気まずさを感じており、複雑な心境だった。そこをいきなり突かれて、憂希は少し嫌そうな顔をする。


「安楽堂さんの救出条件として交渉した欧州側への協力で、欧州軍は日本の支援に投入する予定だった兵力を失っていた。それに俺はその場で政治的交渉は然るべきルートで話してほしいと伝えてある。交渉材料の用意にどれくらいかかるかわからない不安定な条件を、希望を持って帰ってきたなんて風には報告できない。俺がするまでもなく、そういう話は自然とあんたに入る想定だった」


政治的な交渉に関係者が増えるのを避けるため。また情報が錯綜し、混乱するのを避けるために妥当な判断を憂希はしたのだった。


「...そもそも、米軍からの同盟提案の前にそれを知っていたとして、今回の判断が変わるのか?」


「確かに、今回の件で言えば条件は変わらない。...ただ、欧州軍との関係性悪化を防ぐため、米軍と交渉すべき内容として議題に上げるべきだったことも事実だ」


「っ...」


可能か不可能かは今となってはわからないが、同盟条件をロシアと中国に絞るという選択肢を米軍にかざすこともできたのかもしれない。ただ、米軍からの支援を断られては本末転倒となるのも事実だ。


「...わかった。条件未確定でも報告するようにする。申し訳ない」


「理解すればそれでいい」


「...俺からも質問していいか」


会話の切れ目に切り込むように憂希は疑問を展開する。


「なんだ」


「能力者への進化について。兵士に開示していない情報があるんじゃないのか」


「すべては開示できん。そもそもが国家機密であり、世界的にも秘匿対象だ」


「能力者になる時に発生するリスクや施術内容による効果についても何も開示できないって言うのか」


「...なぜその疑問を持った」


「米軍と接触した際に、米軍は志願制で能力者を選抜していることを聞いた。その時、リスクについても説明されているということも。アメリカの中でどういった情報開示のもと、志願制を導入しているかなんて知らない。それでも、能力者に適応する可能性があると一方的に強制し、勝手に能力付与するようなことはしていない。...本人同意もなしにリスク説明もないまま、施術開始するのはどういうことだ。他国比較でなくとも、異常だろう」


「説明はしている」


「適応できなかったらどうなる。そう聞いたら答えられないと言っただろう。説明不足だ。他国での能力者の取り扱いに危険があるからと保護するような言いぶりだったが、本当にそうなのか?...仮にそうだったとしても、当人への説明責任は果たされていない。失敗すれば死ぬんだろっ。各国で技術に差があるとしても、そのリスクはそこまで変わらないんじゃないのかっ」


憂希の語気にどんどん勢いが増してくる。数日間悩み続けた能力者についての疑問や不安が和日月への怒りとして表に出てきていた。

いつでも、ずっと変わらない。命を懸けるのは何も戦場だけじゃなかった。最初からじゃないか。憂希の思考はどんどん熱を帯びていく。


「君はどうにも、周囲の環境や関係性に振り回される性質のようだ」


「なに?」


「君のその怒りは自分に降りかかったものを対象にしていない。...周囲の能力者を理由に理不尽を訴えている。他人のために怒ることで、自分を正当化しているように見える」


「何が言いたい」


「君はなぜ他人のために怒っているのか、と問うている」


「っ...。論点のすり替えだ」


「私の主観だが、能力を得たこと自体に不満を抱えている者は君だけだ。他の兵士たちは能力に対する疑問すら抱いている者はいないだろう。君に指摘され、違和感を覚えた者はいるだろうが」


「俺が...何もないところに煙を立てていると言いたいか」


「君の主観で怒りを覚えるのは自然だ。自分自身のことについて感情が動くのは道理だろう。...しかし、君が私に何かを言うとき、言い訳をするように他人を前に出す。君は大義を抱き、己に使命を課した。それが揺らいだということか?」


「...能力をもらった以上、俺は仲間を護るために戦う。しかし...誰を仲間と思うかは選ばせてもらう。俺は兵器じゃない。撃つ相手は選ぶ。護る相手も選ぶ」


「反旗を翻す気か?」


「あんたが何を考えているか次第だ」


「...ならば今一度伝えよう。この戦争の在り方を。誰が引き金を引いてきたのかを」


和日月は憂希に伝える決心をする。日本が目指す戦争の終結とそれを目指すに至ったこれまでの血にまみれた軌跡を。



ご拝読ありがとうございます。

皆様の娯楽として一時を楽しんでいただくきっかけとなれましたら幸いです。


素人の初投稿品になります。

これからも誠心誠意精進いたしますので、ブクマや☆での評価・応援、どうかよろしくお願いします。

感想もお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ