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更に驚いた

「えー……これなに……」

「よくわかってないんだけどさ、日本とこっち、『異世界』が繋がってるんだよねー」


 庭に繋がっているはずの扉を開いたら異世界だそうです。


「え、庭どこ?」

「この扉からは行けないんだなぁ」

「ここどこ?」

「ウィステリア大陸のケルドリア皇国の皇都ってとこで、元々外れだったんだけど、父さんの店が繁盛したらしくてさぁ。それにあやかろうと店が増えたんだって」

「ちょっとわからない」

「ははっ、そうなるよね」


 呆然とするわたしにからから笑ういーちゃんの会話が噛み合ってる気がしないけど、わたしの疑問にちゃんと答えてる……んだと思う。

 頭が爆発しそうです。


「&*$%¥$#」

「えっ」

「あー、**&#$¥¥」

「えっ」


 突然声を掛けられたけど、何言ってるかさっぱりです。

 いーちゃんもなんかよくわからない言葉を喋り出して、物凄く疎外感を感じる。

 わたし達に声を掛けてきたのは、ちょっと恰幅のいいおばさんだった。

 固まるわたしを置き去りに、いーちゃんと2、3言言葉を交わして笑いながら去っていった。


「い、いーちゃん……」

「ああ、今の人はあそこの肉屋の女将さんだよ」

「何言ってるか、さっぱりわかんなかった……」

「んー」


 何かを考え込むいーちゃんのシャツを掴んでから辺りを見回す。

 わたし達の家を間に3軒並ぶここが、道のどん詰まりらしい。

 家の正面に道が延びていて、左右に家やお店らしき建物が立ち並んでいる。

 そして行き交う人の中に日本人がほぼいない。

 道はコンクリートで舗装されておらず、家も木造だけど日本家屋ではなさそうだ。

 雰囲気だけど。

 そして服装が野暮ったい印象を受ける。

 ただのシャツとズボンのいーちゃんの方が小綺麗に見えてしまう。

 さっき不思議な服だと思った、いーちゃんが着ていた小汚い服が、こっちの服に似ている。

 頭から被るタイプの上着も、紐で留めてたらしいズボンも、わたしが着ている服より……なんて言ったらいいのかな、古臭いっていうのかな?

 生地もゴワゴワしていて着心地悪そうだし、なんていうか、教科書で見たことのある、昔の人の服って感じがするのだ。

 更にマントだからね。

 リビングで向き合った時に凄く違和感あったよ。


 そして気の所為には出来ない程見られてる。

 チラチラもあるけどジロジロひそひそと見られてる。

 言葉も異世界という単語も理解出来ない今、あちこちからの視線はわたしの恐怖を煽るものだった。

 震えながらいーちゃんのシャツを引っ張る。


「ねぇ、帰ろ?」

「そうだね」


 すんなりと頷いてくれたいーちゃんを引っ張ってわたしは慌ただしく家に戻る。

 バタン、と扉が閉まりいーちゃんが鍵を掛けてくれたのを確認して、漸くほっとした。


「ねぇ、いーちゃん……」

「話はリビングでしよっか」

「……そうだね」


 なんだか一気に疲れた気がするけど、もやもやもするから早くちゃんと話がしたい。

 足早にリビングに戻り、お茶を飲むと喉がカラカラだったみたいで美味しかった。


「じゃあ1から説明してもらえると嬉しいんだけど」

「うん。まずは……」


 そこからいーちゃんの説明を聞いたけど、驚くことが沢山あって頭が痛くなってきた。

 どうして異世界と繋がっているのかはわからないけれど、あの状態は祖父がこの家を買った時には既にそうだったらしい。

 その時に偶然出会ったのが祖母だったという驚愕の事実が今わたしに知らされた。

 祖母、異世界人なんだって……。

 いや、祖母からしたら祖父の方が異世界人だったのか?

 ……そこは置いておこう。

 魔術師だった祖母は祖父に一目惚れしたんだって。

 あ、そこは聞いたことあるかもしれない。

 内緒よ、と祖母が教えてくれたんだけど、たまたま祖父が通りかかって聞いちゃって、ニヤニヤする祖父が真っ赤になった祖母に追いかけ回されたのを見た。

 今思えば祖母はツンデレだったと思う。


 祖母の持ち物に興味を持った祖父が色々教えてもらって、道具屋を開くまでになった、というのも多少はわかりはする。

 男の子ならおもちゃとか、女子なら化粧品とかアクセサリーとか……目新しい物って気になるもんね。

 何故異世界に関わろうと思ったのかはわかんないけど。

 いや、目新しい物を手に入れる為かな。

 祖母と祖父の検証の結果、立地と扉が日本と異世界を繋ぐ鍵だという。

 そして魔術師の祖母が何年も掛けて魔術陣を組み、保護や制限を掛けて安全を保っているんだって。


 そしてこの事実はわたし以外は知っていたと。

 向こうは日本に比べて魅力を感じなかったというわたしの母親は異世界に行くこともなかったが、いーちゃんは向こうに魅力を感じて異世界で生活しているらしい。

 だからなかなか会うことが出来なかったんだって。

 遠い所に居れば、こっちに帰ってくるまで数日や数ヶ月はかかるし、まず電話とか携帯とかがないんだって。

 今いーちゃんが携帯みたいな効果のある魔術陣を考えている所らしい。


 うん、いーちゃんも魔術師なんだって。

 祖母も有名な魔術師らしい。

 なんでも家を守る為に複合魔術陣を開発したのが祖母だったんだって。

 それで祖母は大魔術師って二つ名がついてるとか。

 いーちゃんはまだ大魔術師の息子って言われるから、頑張って違う呼ばれ方したいって意気込んでた。

 ……ちょっとどう反応したらいいかわかんない。

 そう言ったらいーちゃんは魔術を見せてくれた。

 光の玉だ。

 ふよふよと浮かぶ玉に興味を持つどころか白目を剥きそうになった。

 理解出来ない。


「……とりあえず、扉の向こうが異世界なのはわかった。いーちゃんも不思議な力を持ってるってのもわかった。……向こうが危険なのはわかった」


 だってドラゴンがいるとか言われてもああ、そうなんだ、としか言えなくて……。

 冒険は男の浪漫だ!とか言われてもそうですか、としか言えない……。


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