07 アーネスト・ブルーリード あいつがまたやらかした
「アーネスト。マークを迎えに行ってやってくれ。あいつがまたやらかした」
王太子のフィルがこう言った時、俺もまたかと思った。
王家の第三王子のマークは、よく言えば天真爛漫。普通に言えば馬鹿。悪く言えば猿以下の大馬鹿。いや、猿の方が躾ができるだけましだ。
マークには側近もいればしっかり者のお目付け役もいる。おれの叔父がそうだし、最近宰相の弟もその任に着いた。
だから俺の出番はない。
「それが、二人とも長旅は無理だ」
「長旅?」
「イースト皇国だ」とフィルが言った。
馬車でひと月はかかる。一体なにをやったんだ。早馬で来た手紙には皇国の公爵令息と決闘して負けて、骨折した。先方がお怒りなので謝罪が必要と書いてあったと・・・・
「わたくしの役目ではございません。王子殿下は側近と一緒にあちらへ行ってらっしゃいます。側近がついております。お目付けの方々もまだお若い。時間が少々かかるともお迎えに行く事は出来ます。なにより大切なのは謝罪でございますね。それでしたら、お目付け役のお二方に任せるのが一番かと存じます」
「アーネストゥ。冷たい事言うなよぉ。頼れるのは君だけだよ。国の将来を考えたら君に行って欲しいなぁ」
「お断り致します。前々回同じ様な事が起きた時、わたくしは次はないと申し上げて国王陛下も了承されました。が拝み倒されて前回、わたくしが赴きました。それが最後です。いい加減にして下さい」
「いやぁ今回が最後。マークも反省してるし・・・・君の願いはなんでも聞くから」
「それではそれをきちんと契約書に書いて下さい」
「きついなぁ。本当に怒ってるんだね。無理もないよね」
俺の堪忍袋は丈夫だったが、そろそろ切れるんだよ。
急いで準備した。マークの事は嫌いじゃない。悪いやつでもない。ただ、考えなしのわがままなやつなんだ。俺に迷惑をかけるやつなんだ。あれを外国に出すと聞いた時は全力で反対した。絶対尻拭いをしないと国王陛下にも言ったし、陛下もわかってくれた。だが、可愛い息子はなにより大事らしい・・・・まったく。
そして出発する時、驚く事を知らされた。俺に番が来る。
すぐに意味がわからなかった。番が来るって・・・・最初に言ったセリフが
「何故、今なんだ」だってそうだよな。本当はもっと早く知らされて予定なんか入れずにその日を待つんだよ。それが・・・・今・・・・
「それは無理です。行けません」行くなんて無理だよな。番が来るんだぜ。
俺が騒いでいると母上が来て
「わたくしが付いているのよ。安心して」
「無理です。番をここで待ちます」と答えると
「アーネスト。マークを見捨てるのか。お前の母上も俺も王室も君の番の面倒を見るよ。安心してくれ。頼む、マークを見捨てないでくれ」とフィルも俺を説得しようとするが、俺は首を横に振り続けた。
「アーネスト。マークは仕方のない人だけど・・・・でもあなたの番はあなたの気持ちを理解してくれるわ。番ですもの。許してくれる。いえ、逆にマークを見捨てた事を悲しむかも知れないわ。あなたの番よ。優しい人だわ」
確かに自分の幸せを優先してマークを見捨てると寝覚めが悪いかも知れない。たしかに会うのが遅くなるだろうが、これからが長いんだ。
俺はそう思うと、まだ見ぬ番に手紙を書くのも楽しいかもと思った。
そして、俺は母上とフィルに番の事を頼んで出発した。
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