50 魔石を巡るいろいろ
アーネストは魔石の箱を騎士に持たせて研究塔を訪ねた。
空の魔石をこの魔石を交換すると言うと、応対した研究員は息を飲んだが、
「お待ちください」と言い残すと奥へかけていった。
やがて、長らしき男が戸惑った顔をして出て来た。
「ブルーリードだ」の声に男はきちんと礼を取った。
「今後、礼は不要だ」の声に男はうなづき、
「ここの責任者、研究所長のアルタナと申します」と答え、奥へ案内した。
先ず、魔石の箱を渡した。なかをあらためた所長は驚きの声をあげた。
「質問をしてよろしいですか?」
「あぁそのほうが俺が説明するより早いだろう」
「売買ではなく交換という事ですね」
「そうだ」
「違法ではないと言う認識ですね」
「そうだ。単なる交換だからな。手数料は貰うつもりだ。運ぶからな」
「なんと・・・その供給は続きますか?」
「勿論だ。量の制限もない」と答えると、開いたドアの外で耳をすましていた研究員が
「やった!研究を進められる」「あぁ素晴らしい」とか騒いだ。
所長はそちらをちらっと見て、
「失礼しました。その、空の魔石はたくさんあります。全部よろしいでしょうか?」
「かまいません」と言うと騎士に合図した。騎士は廊下にでると
「運びますので場所を教えて下さい」と声をかけた。
それから、一週間、貴族は家にあった空の魔石を交換所に持って来た。
ある平民は、魔石が安かった頃、台所で使っていた魔石を引き出しのすみに転がしていた事を思い出して、交換して貰い水汲みが楽になった。
また、道に落ちている空の魔石を拾って交換して貰い、それをギルドに売る者も出た。
スミノード家は面倒だと思ったが打つ手がなかった、また魔石の保有量に自信を持っているから、相手の魔石がなくなればそこで終わりだと思っていた。
その上魔石の供給を条件としてあちらこちらで有利な商取引を行っている。地盤は磐石だ。
月はじめの魔石の買取の時は忌々しかったが、魔石を独占している強みを感じていた。
そんなある日、一族が集まって家にやって来た。
「この事態をどうしましょう」と一人が言い出すと、みなが同じ事を言い出した。
「魔石を買うものがいない」魔石交換所をまかせている者が嘆いた。
「交換に使える魔石はすぐに底をつく。慌てるのは相手のおもうつぼだ。普段通りにしていろ。相手の自滅を待てばいい」そういうと、皆の顔が明るくなった。
「そうでした。魔石は大きな武器だ」
「慌てることはないですね」
「そうですな、相手に媚びる事ないですな」と言い出した。
そこで侯爵は
「落ち着いてくれてなにより」と話を打ち切った。
皆が出て行ったが、娘が残っていた。
「お父様、あのブルーリードが犬っころと一緒に家にやって来て口出ししますの。うちの護衛を嗅ぎまわっておりますのよ」
「あいつらはスミノードに忠誠を誓っているし、証拠はないが、こんな時に」と机を叩いたが、
「いい、後継はダニエルだ。これは変えさせない。養女はどうしてる?」
「はい、お相手はあのマーク様ですのでおだてております」
「そうだな。利用できる時も来るだろう。うちの養子もな」
「ブルーリードはわたしも注意しているが、やつは王太子には逆えん」と言うと娘を見て
「手を打つから安心しろ。ダニエルが軽はずみな事をしないように気をつけろ。あいつは元気が良すぎる」
「お父様に似て豪快と言って下さい」
「違いない」と父娘は笑いあった。
◇◇◇
マークの番とクロエの番のお披露目の園遊会に来ている。大変だった。準備が・・・
ドレスを買いに行くのに勢ぞろいで行こうとするので、ガイツだけで良いと言うと
「俺は番だ。もう友達はやめる。番だ。神の決めた番だ」とアーネストが騒ぎ、
「サミー様。番は神性なものです」とガイツが真剣にいうのでアーネストも行くとこになった。
本当に番って便利な言葉ねと思う。
するとウィルヘルムが
「僕だって、僕だって・・・」と泣き出したので、わたしが負けて、ウィルヘルムが行くなら、ジークフリードとレオナルドが一緒で・・・
でも、ブルーリードすごいね。お店貸切だった・・・男どもの意見は無視して店主に選んでもらったなかから、わたしが決めた。
翌日、わたしの寸法にお直しされレースを豪華なものに変えられたのが届いた。
装身具と靴は、屋敷に持ってきてもらった物から選んだ。
それで、今日のわたしはキラキラしてる。着てるものが・・・
ガイツ大好き女が絡んで来たので、楽しく相手をした。スミノード侯爵もアーネストを睨みつけていたが絡んで来ない。
マークとクロエに挨拶に行った時、あの匂いがしたが深く考えない。忘れる事にした。
王太子のフィルを始めて見たが、アーネストを見る目つきがなんとなく勝ち誇っていたのは気のせいか?
会場でわたしはガイツと一緒に隅にいたが、アーネストはウィルヘルムを横に、ジークフリードとレオナルドを後ろに置き、挨拶に鷹揚に答えている。
程よい所はわたしは、ガイツと先に帰った。
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