49 王宮で
翌朝、一人でやって来たアーネストはわたしがアイテムボックスから出した魔石を見て、
「素晴らしい・・・そのサミー。体調はどうなんだ?」
「なにも。変わりはありません」と答えると
「調子に乗って悪いが、また持って来ていいだろうか?」
「いいですよ」と答えると
「助かる。わたしもだが、民も助かる。ありがたい」と言うと魔石を持って急いで出て行った。
「さて、サミー様。今日はなにをしますか?」とガイツが笑いながら言うので
「今日は本を読んですごすわ。あっ、ガイツこれ見て」とスマホの写真を見せた。
「おぉこれは?生クリームで飾り付けた!素晴らしい・・・サミー様作りたいです・・・早くウィルヘルムを王位につけなくては。そして厨房をですね」そういうとなにやら考えてながらメモを取り始めた。
わたしは本を取り出すとソファにでれっと座って読んだ。そうしているとアーネストの使いが空の魔石を運んできた。
◇◇◇
久しぶりに王宮にやって来た。俺が来た事を聞きつけたフィルが、急ぎやって来た。
「アーネスト。もっと早く・・・いや、迎えに行ってくれてありがとう。それがアーネスト。マークもクロエも番が見つかったと言い張るんだ」
「良かったなぁ」
「良くないよ。身分が・・・」
「番と言ってるんだろ」
「わかってるだろ! 自分でそう言ってるだけだ。身分が違うくらいは、あの二人もわかっているだから番って言ってるだけだ。身近なアーネストに番が来た。それも神託の・・・本物の番? だから番って言葉を使ってるんだ」
「一応考えたんだな。そこは王族なんだから手を打てるだろう」と鼻で笑って答えると
「冷たいなぁ」
「尻拭いは嫌だよ。番として一緒にするしかないだろう。番扱いにすれば大抵の事は解決する。便利だぜ・・・こんな事は言いたくないが、飽きたと言って来たら番だろって言えるだろ。いい加減、二人を突き放せ。お前も大変だったと思うが、実際に動いたのはいつも俺だぞ。#尻拭いはいつも俺__・__#」
「番だからで押し通すかなぁ」
「押し通せ」と強く言った後で付け足した。
「神殿からの番封じをマークに渡してある。なんか予感がしたんで・・・番封じをつけても惹かれあうなら本当に番だそうだ。だからあいつらには番封じをつけさせろ。今ならまだ相手しか目に入らないだろう。番封じをつけても惹かれあう、つまり本物の番だ。身分なんてどうでもできるだろう」
「はぁーー父上は俺のせいだと俺にばっかり小言を言うし、マークもクロエも俺がなにもしないと文句言うし・・・」
「番封じをつけて番だと宣言して、城でお茶会、いや園遊会でも開いてお披露目しろ・・・派手好きの二人だ喜ぶぞ」
「お茶会にするかぁ。そうだな」とフィルが少し元気になったを見て
「子供が出来る前に、いや飽きる前に手を打ったほうがいいぞ」と言うとため息をつきながら
「あぁ王太子なんて貧乏くじだ」と呟いた。
「それにしても、あのクロエが・・・アーネストって言わなくなった。お前のほうがずっといいのになぁ・・・義弟に欲しかったが・・・ともかくアーネストありがとう、話が出来て良かった」
「いやぁ、またしばらく留守になるから、みんなによろしく言ってくれ」と歩き出しながら言った。
◇◇◇
アーネストは城を歩きまわり、空の魔石を集めて回った。
サミーが喜びそうな本と、花束を買うとアーネストはホテルに向かった。
「サミー戻りました。魔石が届いたと思いますが、急ぎませんので・・・届いていませんか?」と辺りを見ながらアーネストが言うと
「全部、収納しました」
「全部ですか?」
「はい」と答えるサミーをよそにアーネストはガイツを見た。ガイツは薄く笑いを浮かべている。はーっとため息が出たが、
「そうなんですね。あの、サミー思い切りたくさん持って来てもかまいませんか?」
「思い切りによりますが・・・そうですね。かまいません」と答えると
「なんだか・・・サミーの奴隷になりたい気分です・・・友達やめていいですか?」
「ふふふ・・・友達やめる。危険な言葉ですね」とサミーが笑うと
「あーーそこは魅力的と言って下さい」とアーネストが、サミーを見つめながら言った。
「今度、お城でマークとクロエの番のお披露目があります。みんなで出席しましょう」
ガイツは
「番だと忌々しい」と呟いていた。
大公家に戻るまえにアーネストは冒険者ギルドに依頼を出した。護衛の仕事だ。
王都にいくつかあるスミノードの魔石店の近くの商店と、交渉して小さな机を置かせてもらった。
それから、ウィルヘルムのお土産にお菓子を買うと大公家に向かった。
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