48 魔石には魔石を
この前やりあったガイツ大好き女がスミノードと名乗った時、これだと思った。
魔石に魔力を補充出来た時はこれで、世の中渡っていけると思った。魔石流通の面倒臭さを知って、この能力は隠したのだ。
それに、空の魔石を見た事がなかったし・・・へたに聞いて食事がもっと粗末になったら嫌だったし・・・
でも、スミノードと接点を持った。これは能力を使えというお知らせよ。
この能力を持っているのは多分、わたしだけだ。魔石は高価なものだ。いや、価格設定がおかしい。
流通形態もおかしい。ダンジョンで拾った魔石はギルドでしか売ってはいけない。個人で売ると処罰される。
そしてギルド買い取り価格の何倍もの価格で売られていて、スミノード家の独占販売なのだ。
前世のメゾンの宝石なら理解る。建物も調度もお金をかけてるし、一流の接客だ。それも含めて宝石の価格だ。
もてなしで出されたシャンパンも価格のうちだが、それを承知で買うのだ。
だが、魔石だよ。実用品だ。確かに店構えはしっかりしている。高価な魔石を盗まれたら大変だ。
だけど、箱に無造作にいれられた魔石にあの値段はいやだ。売る事が出来るのはスミノードだけだ。価格は好きに出来る。
流通を押さえられる? ブルーリードの権力って使ってみたい! ケンカ売りたい!
わたしは、アーネストに使いを出した。
今日はウィルヘルムも含めた三人と一緒にアーネストがやって来た。
「サミー様」と抱きついてきたウィルヘルムはなんだか顔を引き締まって大人びている。
「ウィルヘルム、会いたかった。背が伸びた?」と言いながら、髪を・・・チャーリーのあの髪を撫でながら顔をじっと見て
「背も伸びたけど、なんだかお顔が凛々しくなった」と言うと
「はい、少し伸びました。お顔はわかりません」と答えた。
「サミー、久しぶりに会った友達にも声をかけてくれ」とアーネストが割り込んで来て、わたしにお菓子の包みを渡して来る。
皆で座るとアーネストが
「サミー、スミノードの事で話しがあると言う事だが」と切り出したので
「はい、魔石があの家の武器ですね」
「そうだ。王室が馬鹿な許可を出したのだ。まぁ最初はうまく行っていたのだ。
スミノードは優秀で、うまく流通させたので魔石を使った魔道具の発明、開発、利用が広まり平民も楽になったのだが、そのうちに、やつら独占をいいことに価格を上げたり、売り渋ったり商売で圧力をかけたり・・・
貴族はなんとか出来るが平民は魔道具が使えなくなった」
「魔石は充分供給されてますか?」
「それは問題ない。冒険者が魔石を売る量は変わらない。だが、市場に出ない。スミノードが裏で流通させているようだ」
「ギルドが直接、人々に売る事はできないのですか?」
「出来ない。そういう契約だ」
「空になった魔石はどうしてますか?」
「考えた事もないが・・・確か、うちでは、箱にいれて保存している。一応魔石の再利用の研究がされているから、もしもに備えて。研究所へ持って行った事もあるな。他はどうしているのだろう?」
「なるほど・・・実はわたしは魔石に補充が出来ます」
「なに!それは・・・」とアーネストはちらっと三人を見たが
「それって」ともう一度言うので説明した。
「たいして難しい事をしているのではありません。一晩あれば」
「魔石を売るのが違法ならば交換はやっていいのでは?」と全員の反応をうかがって、
「空の魔石と魔力を補充した魔石を交換するのです。少し手数料を貰いましょう。スミノードが潰れるまでやりましょう。契約を破棄するまで。そしたら流通を押さえましょう。別の方法だと火の海にするやり方がありますが・・・」
黙って聞いていたアーネストは最後の言葉でふっと笑ったが、そこを無視して
「魔力を補充出来るだと?」と呟くと黙って考えを巡らせているようだったが、
「そりゃ、また・・・そうだ。確認させてくれ。家に行って魔石を持って来る。皆はここで待っていてくれ」
そう言うと出て行った。
アーネストが持って来た魔石を箱ごと、目の前でアイテムボックスに入れると
「あ!あ! それは・・・いや・・・その・・・わたしのお友達は全員口が固い」とため息まじりに言った。
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