40 お友達
花束とお菓子を持って、アーネストがやって来た。
今日はこの宿の食堂で話したいと言う事で、貸切にしてあった。
ガイツがお茶を用意する間、アーネストはわたしを見つめて微笑んでこう言った。
「そこにあなた、サミーが座っているのが幸せだ」
その時、ガイツがお茶を運んで来てアーネストとわたしの間を塞ぐように立ち、
「サミー様、頂いたお菓子です」と言った。美味しそうだ。
待つのが面倒なので、さっそく
「アーネスト、番と言うのがなにか、番同士がなにかわかりません。アーネストに確かに好意を感じています」とアーネストを挑戦的に見ながら言ったが、
優しい微笑みは変わらなかった。
「あちらではこんな時、便利な言葉があります」とお茶を一口飲んだ。しっかりとアーネストを見て
「お友達から」と言うと、アーネストは一瞬表情を崩した。驚いたようだ。
「お友達?」と声を出した事に自分でも更に驚いたようだが、立ち直った。
「そうです。知り合いより、親しいお友達。大切な存在。だけど・・・恋人じゃない・・・便利な言い方だけど」と笑うと
「そうですか。正直少しがっかりしましたが、そばにいたいと言う希望はかないますね。お友達になりましょう」
「えぇアーネストは大事なお友達です」と軽くカップをあげた。こちらで意味が通じるか知らないが、乾杯のつもりだ。
アーネストはお茶を一口飲むと
「サミーにお願いがあります。あなたの護衛たちと話をしていいでしょうか?」と切り出した。
「護衛とだけ話したいのですか?」
「いえ、サミーにも聞いて欲しい。話を聞くかどうかも、聞いた後どうするかもサミーが決定権を持っています」
「お友達としてのお願い?」
「はい、そう思って下さい」
ほんとにお友達って便利な言葉。いいわね。
「もちろん、聞かせて下さい」と首をかしげた。
「ありがとう」と言うとアーネストは壁際に立っている。四人の方へ歩いて行った。先ず、チャーリーの前に立つとやにわに片膝ついて
「ゲーリンデ大公家第一公子殿下にアーネスト・ブルーリード公爵が子息。ご挨拶申し上げます」と言った。
レオンとジークがアチャーと言った顔をしたが、すぐに左手、いやこっちだから右手を胸にあてて頭を下げた。
ガイツはおもしろそうに見ている。
「ブルーリード公爵御令息、丁寧な挨拶痛み入る」とレオンが言うと
「そうですが、事情はお察しの通りで、公子は苦労した身の上・・・」とジークが言った。
アーネストはすっと立ち上がると
「公子殿下もお二人もガイツ殿もテーブルに来て欲しい。頼みがある」と言った。
彼らの間にいろいろな思惑が交差しているようだが、ここは庶民のわたしが、
「こっちでご馳走になりましょ。チャーリーおいで。美味しいよ」と声をかけた。
テーブルについた三人は警戒してアーネストを見ているが、彼は
「気にいってくれてうれしい。公子殿下もたくさんどうぞ」と涼しい顔で言っている。
ガイツが全員にお茶を配るとアーネストは
「ゲーリンデ家の事情は把握している。あの店でそちらのレオンを見た時、気になった。さっさと逃げ出す判断も素晴らしい。そしてダンジョンで確信した」
誰も答えない。アーネストは続けて
「わたしは、そちらの公子殿下が後を継ぐのが正しいと思うし、手を貸す。それ以上にこの国の王位も継いで欲しい」
息を飲む音がした。
「あの王家はだめだ。すると大公家が継ぐのが順当だ。血筋的に・・・わたしも手を貸す。問題は起きない。起きてもねじ伏せる」
アーネストは言い切った。レオンもジークもアーネストをじっと見ている。
なにこの展開・・・
いつも読んでいただきありがとうございます!
誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。
とても助かっております。
楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。
それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。




