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番って便利な言葉ね  作者: 朝山 みどり


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04 番は来なかった

 翌日、わたしは待合室に当てられたホールに錬金術の道具を一生懸命運んだ。


 侍女のアンナは見ているだけで手伝おうともしない。番を大事にするって嘘なのね。だけどわたしの番さんは大事にしてくれると言う事だから、わたしはポーション作りを楽しむわと思いながらがんばって運んだ。


 いつもの神官が挨拶を始めた。


「今日は番の皆さんがいらっしゃいます。会えばあちらはわかります。番の皆さんは今日の日を待ち望んでいます。長い挨拶は殺されそうですので、皆さんに入って貰います」


 その言葉でドアが開けられると、皆さんが入って来た。みんなかっこいい。わたしの番はどこ?早く来て



「やっと会えました」と言うなりお姫様だっこをしている番。そのままさっそうと部屋を出て行く。



 ひさまずいて手に口づけする金髪イケメン。



 あっという間に、部屋はわたし一人になった。どういう事?錬金釜の隣で間抜けに佇むわたし。あの婚約破棄された日に着ていたボレロつきワンピース。こちらに来る時に少しほつれができているのが気になる。



 そこへ、きつい顔立ちの美人が何人か従えて入って来た。


「この子が番なのね。うちには不要だけど神託には逆らえないわね。連れて帰りますね」とわたしではなく神官に向かって言った。


「そうなりますね。公爵夫人。この番はなんと能力がなかったんですよ。前代未聞です。ご令息が不要と判断されたのはご明察でございますね。さすがでございます」


 二人の会話がぐるぐると、頭のなかで繰り返される。涙が出てくる。


「この荷物はどうしたの?」と夫人が言うと


「許可証がありますので」と神官が気の毒そうに言うと


「迷惑ね、仕方ない、運んで」と一人にいうと彼は、黙ってうなずいて持ち上げた。


「ついてらっしゃい。ぐずぐずしないで」と言う言葉にわたしは機械的に足を動かした。



 二台目の馬車に錬金釜と一緒に乗せられて、公爵家に到着した。



 馬車を降りると公爵夫人の姿はなく、


「あなたが番とやらね。わたしは侍女長で公爵夫人付きのメリンダ。とりあえず部屋に案内します。荷物はその錬金釜ね」と言うと吹き出してもう一度


「錬金釜だなんて」と笑うと


「自分の物は持てるでしょ。ついて来て」と歩いて行った。


 途中で


「待って下さい」と言って手を二度ほど休めて、やっと部屋に付いた。


 国をあげて嘘つき、決定。



 部屋は暗いけど、一応浴室とトイレもあって日本並みだ。


「一応、番さまなので侍女を付けます。食事はすべて部屋で。皆様の邪魔にならないように・・・・」と言うと部屋を出て行った。



 なによ、国をあげて大事にします。永遠の愛とか・・・・・



 わたしは浴室で手と顔を洗うと部屋のクローゼットを開けてみた。引き出しも開けてみた。


 神殿で着ていた物より粗末な物が入っていた。まぁないよりましだ。


 わたしはシャワーを浴びると服を着替えた。本を読みたいなと思ったが、外に出るのは今日は控えようと庭を眺めて時間を潰した。



誤字、脱字を教えていただきありがとうございます。

とても助かっております。


いつも読んでいただきありがとうございます!

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。


どうぞよろしくお願いいたします。



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