35 もうすぐダンジョン
目が覚めたわたしは、まだ寝ているチャーリーが蹴飛ばしている布団をかけるとそっと馬車を出た。
三人は馬の世話をしたり、他の冒険者と話をしていた。
「おはようございます。サミー様」とわたしを見た三人が挨拶するのに答えた。
「今日の夕方、ダンジョンに到着します。ガイツが宿を予約してますので今日はそこで休んで、ダンジョンは明日からにしましょう」とレオンが言うのにうなづいた。
「わかった。楽しみ」
それから、チャーリーが慌てて起きて来て、ゆっくり朝食を済ませるとわたしたちは出発した。
意外だったのはダンジョンに近づくに連れて道が整備されている事だ。
途中の町にお店が並んでいるのを見て、なんとなく理由がわかった。この町はダンジョンのものを加工したり、まとめて各国に出しているのだろう。行き来が多いなら道も整備されるって事かな?
ダンジョンはここから、少し行った所で、宿はダンジョンの近くにあるそうだが、わたしはダンジョンに入る服装に着替えて、冒険者気分でこの町を散歩した。
三人も冒険者の格好、チャーリーは犬に戻り四人と一匹で歩くと、無意識に肩で風切るお姉さんになって新鮮だった。
そして、改めて奴隷三人を見ると、とてもかっこいい事がわかった。三人を見る目線で気づいたのだ。
レオンは面倒見のいいお兄さん。ガイツは近寄りがたく冷たい。ジークは整った綺麗な顔が、細マッチョの体の上に付いている。チャーリーはゆったり高貴なお犬様。わたしは犬のお世話係り・・・
わたしはサミー様よ。奴隷を生かすも殺すも思いのままよ。と大声で喚きたい。
お昼はしゃれたレストランのテラス席でとった。
お店は冒険者でも上位ランクかなって人と儲かってそうな商人風。そこに三人は普通に溶け込んでいた。
こちらの食事マナーは、日本のファミレスと同じでいいようだ。こんな風にこちらの世界の人と食べるのは初めてだなと思いながらまわりを観察した。もちろん、奴隷三人は別だけど・・・一応わたしに合わせていただろうし・・・
席から通りを行く人を見ながら、なんとなくアーネストを探してしまう。無理に忘れる必要はないだろう。向こうの世界であこがれのタレントにふいに出会った。それと多分一緒だろう。まぁタレントに会った事はないけど・・・
だけど見かけた事はある。それからしばらくはその彼の事を調べたり、好きな食べ物を食べてみたりとそれなりに幸せな時間を持てた。
アーネストもそんな感じだな。もしばったり会ったら、
「こんにちは、使ってみて如何ですか?」ってくらいは話しかけたいな・・・
さて、お昼がすんで再びわたしたちは、馬車の旅に戻った。ほどなくして着いた宿は、ここで一番大きい宿だと言う事だ。ちょっと予想が外れた。静かなこじんまりした宿を予想していたからだ。
「いやぁダンジョンらしさを経験したいと思いまして」とガイツが答えた。
なるほど、言われてみるとそういうもののような気がする。
夕食を取りに食堂に降りると、思ったより人が多くて騒がしかった。
ケンカとかするのかな!と期待してしまう。ケンカが始めって賭けとか持ちかけられたら、乗るんだ。
そう思いながら、注文した食事が来るのを、エールを飲みながら待った。
室温よりちょっと冷たくて、あまり苦くない。なんだか一端の冒険者になった気分だ。
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