30 番のもとに駆けつけない。何故?
「今、番が閉じ込められていた部屋を見てきました」部屋に入るなりこう言った俺に
「閉じ込められたなんて人聞きの悪い、ちゃんと侍女長が配慮して侍女もつけていたのよ。大事に守っていたのよ」
と言った母上は
「我が公爵家に番は必要ないのよ。あの時はマークの事があってきちんと話が出来なかったけど、王女殿下との婚約の打診がまたあったのよ。
どうしてもあなたを諦められないそうよ。そこまで思われたのなら、受けるしかないでしょ。番なんてものよりずっと有用な婚約よ。
もう一度王家の血を入れたい所だったのよ。クロエだったら遊ばせておけばいいんだから、楽よ。そう思うでしょ?それにねあの番は能力も魔力もないと鑑定されたのよ。
そんなのいらないわ。番って番同士だと重要だけど、他人から見てわからないでしょ。あなたも番に夢見るのはやめて・・・いなくなったし」と続けた。
「それに母上は関わってますか?」
「まさか、そんなことしないわ」
「そうですか。その番が行方不明になったのに探さなかったのはなぜでしょうか?」
「探したわよ。だけど見つからなかったのよ」
「そうですか?母上が見え透いた嘘をつくほど愚かとは思いたくありませんが・・・所で我が番の名前はなんと言うのでしょう」
「名前?・・・名など・・・」
「わかりました。もうしばらくここにいて下さい」
「アーネスト、待ちなさい!アーネスト」と言う母の声はドアを閉めると消えた。
死ぬまでそこに居ろ。
それから、俺は王太子に会いに行った。
「家で気になる事があった・・・番の面倒を母もお前も見ると言う約束でマークを迎えに行ったが・・・母から番の様子を聞いているか?」
「あぁ報告が来ているがひどいものだ」とファイルをよこした。
散財してるだと?確認もなにもしてないな?こんなやつらの為に・・・・
「ほお、この報告は誰が書いたのか?母か?侍女長かな?」
「公爵家からの報告だと言う事は間違いない」とフィルはにこにこと答えた。
俺はフィルのアホヅラを、睨みつけると
「ほんとに、ろくでなしだね」と言うと部屋を出た。
その足で、俺は神殿を訪ねた。名前を告げると奥から上の者らしい神官が出てきた。
「やはり、ご不満が?」と言うのには答えず
「確認したいと思って」と言うと
「なるほど。これは本当に神の御技ですよ。お見せましょう。こちらです」
神殿の主神像の後ろに石版があった。そこに俺の名前も書かれていた。本当に選ばれたのだ。
「番の名前もないのにどうして彼女が番とわかるのだ?」
「わかりません。番同士この人だとわかるようです」と言うと神官は少し笑い
「お宅様の番は能力のない番と言う、前代未聞の存在でした。誰が連れて行くか心配してたんですよ。そしたらちょうどお迎えがない、彼女が余りましたが、偶然です。番同士を組み合わせるのは神です。私たちはなにもしていません」
ここで神官は口調を変えて、
「まぁ必ず優秀な世継ぎが生まれると言うのが番ですから、子をなした後は好きにお過ごしになればいいでしょう」
「まぁそうですか?所でポーション作りを教えてくれた人は神殿の人ですか?」
「あぁ、神官長が教えたようです」と神官が答えた。
「そうなんですか」と相槌を打つと
「道具を貰ったのはいいけど、ヒーヒー言いながら持って行きました。おや、仮にもあなたさまの番に失礼なものいいですね。謝罪いたします」
「いえ、お気になさらずに」と答えた。それから
「神官長はどちらに?」と訪ねると、彼は一瞬ためらったが、
「庭の奥にいます」と言った。それから
「それでは、これで失礼します」と足早に去って行った。
案内しないなら、勝手に探そうと俺はぶらぶらと神殿の奥に向かって歩いた。
ポーションを作るなら薬草のある所かなと歩いていると、庭師らしき男が作業している。
その男の近くを通りすぎる時、声をかけられた。
「君が番かい」
「あぁそうだ」と答えた。
「いつ来るかと思っていたが、やっと来たね」
「あの子にポーションのつくり方を教えたのはわたしだ。神官長だ」
「番を迎えに来なかったアーネスト・ブルーリードだ」
神官長は俺を見て笑うと
「こちらへ」と言うと歩き出した。
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