28 アーネストは急いだ
あの薬屋でのされた護衛を連れて宿に戻ったら、マークのお目付け役の二人が到着していた。
「やっと来ましたね。それではわたしはすぐに出発します。こんなに迷惑をかけられて不愉快としか言えません」
そう言うと、
「待て、アーネスト。わたしたちはここに来るだけでもう、体が・・・・」と叔父のバージルが言うのを
「待ちません。わたしの事情はご存知ですね。わたしは無関係ですよ」と答え
「アーネスト、クロエは全部独り占めしているのだ。ちゃんと言ってくれ」とマークが割り込んで来たので
「妹を躾けるのも兄の仕事ですよ」
「アーネスト様、ひどいわ。こんな所で置いていくなんて」とクロエが追いすがるのをかわして部屋を出た。
「誰も部屋から出すな」と護衛に命令すると馬に飛び乗った。
俺の気持ちが分かるのか馬は、矢のように飛び出した。
おぉこんなに走れる馬だったのかと驚きながら、番に会ったら・・・・番に会ったら・・・・どんな笑顔で迎えてくれるかな?贈り物は気にいってくれてるかなとか、とか夢見ていて、ふと気が付くと馬が苦しそうだった。
あわてて、一軒の農家を訪った。
「いきなり、すまん。馬を少し休ませたい。庭先を貸してくれぬか?」
「どうぞ、どうぞ。お水を汲んで来ましょう。馬も騎士様も飲んで下さい」
親切がありがたい。馬の扱いも丁寧だ。
そこで馬を預けて、別の馬を買うとその馬でまた飛ばした。その馬を売り、別の馬を買うのを繰り返し俺は屋敷に戻った。
屋敷に着いた時は夕食の時間だった。まずは汚れた体を洗ってからだと、先に浴室に行ったが、俺はちょっとだけ期待していた。番が汚れを気にせず会いにくるのではないかと・・・・
だが、番は現れなかった。礼儀正しく待っているんだとその奥ゆかしさも好ましいと思いながら、食堂に行くとそこには母が一人座っていた。
「おや、番はお部屋ですね。さっそく会いに行きます」と部屋を出ようとすると
「アーネスト。待ちなさい。座って話しをしましょう」と母が言うのを
「いやです。もう待てません。いやです」と席を立ち、番の部屋へ行った。
人の気配がなかった。自分の血が下がるのを感じた。血は下がったが、怒りが膨れ上がった。そしてこの事をどこかで予想していた自分が情けなかった。
「どういうことですか?」一応、母に聞いても真っ青になって震えるばかりで話にならない。
母を母の部屋に閉じ込めた。
次に侍女長と思ったが、いや、ただの侍女に聞くほうが早いと思った。情報がまわって身構えられてもまずい。侍女長も部屋に閉じ込めた。
そして厨房に向かった。侍女やメイドの話し声が聞こえる。お茶を飲んでいるようだ。
「あの、離れにいた人、今いないのよ」
「なんだったのかしらね」
「面倒みるようにって言われたけど適当にしといた。なにも言わないし、お茶を飲ませるように言われたけど、面倒だからやめちゃった」
「なにもできないから追い出されたのでは?」
「多分ね、お部屋はそのまま?」
「うん、なにも持たせて貰ってないみたい、ボロ服も置いていってる」
「あぁいつもあの古いのを着てたよね」
「あの人に淹れるように言われていたお茶ってちょっと匂いに癖があるけど飲みなれると美味しいよね」
「そうそう、もうなくなるのが残念」
「そういえば、メアリーが結婚したって?」
「そう、待てないって言って、急いだみたい」
「あら、リリーだって今、付き合い始めたよね」
「まぁね」
なかなか楽しそうだが、そこまでにして、離れに行った。どの部屋なのか?
ひと部屋ずつ開けて確認して行く。ここは違う。ここも、ここも違う。っとここだ。
部屋に踏み込む。きちんと整っている。クローゼットを開けようとして踏みとどまった。
失礼な行為になるだろう。
侍女長と話をしようと部屋に行った。
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