23 奴隷を買いたがる奴隷って?
ギルドからのお使いの子、やっと名前がわかった。トマス君だ。彼が、最近の町の騒動を教えてくれた。
なんでもどこかの貴族がやって来ていて、一人は酒場で酔っ払って攫われかけたり、一人の女はギルドでシャンプー類を買い占めようとしてダメだとわかると大騒ぎを演じたそうだ。
ただ、宝石屋とか洋服屋はたくさん買うから、歓迎だけど態度が偉そうで、おつきも偉そうで、持て余しているらしい。
「でも旅してるんだったらすぐに出ていくのでは?」
「それが、なんでも待ち合わせらしくて、長居しそうなんですよ」とトマス君は疲れた顔で笑った。
「あららら、それはみなさん大変ですね。これはみなさんでどうぞ」とガイツがわたしの為に作ってくれたあまり甘くないナッツ多めのビスケットを差し出した。
「ありがとうございます」とトマス君はちょっとだけ元気になると帰って行った。
「ガイツ、知ってる?今、町に変なのが来てるって」と夕食の支度をしているガイツに言いに行くと
「知ってますよ。いろいろな所で騒動を起こしてるみたいですね」
「レオンとも話していたんですが、面倒が起こりそうなので町を離れようと言ってるんですよ。うちの商品を欲しがってるから直接買いに来たら面倒でしょ。うわさを聞いてからここの店休んでるんですよ。そのことも含めて夕食の時相談しようと思ってました」
「そう、二人がそう言うならそうした方がいいかもね」
とわたしは素直に受け入れた。
そこにレオンが来たので、そこで相談して馬車で三日ほど行った保養地に行く事にした。
そこは、温泉があり料理も美味しいらしい。途中の小さな村で地元の料理を食べながらゆっくりと移動する事にした。出発はギルドの納める商品をたくさん作っておきたいので、明後日にした。
明日はひさしぶりのブラック労働だ。
トマス君に多めに商品を渡した。普段はギルドに出さない上級のポーションも渡した。
「えーーと、しばらく町を留守にします」
「えーーー」
「それで今日は多めの納品です」
「いつごろ戻りますか?」と情けない顔になったトマス君。
「わからないなぁ」
とぼとぼと帰るトマス君。後ろ姿が悲しい・・・・・
最初の村でまたもや奴隷商が営業していた。もう奴隷はいらないしとさっさと通り過ぎようとしたが、レオンがあの奴隷を買うのはどうだと言い出した。
レオンが指差すのは檻の中で倒れている一人の男だ。顔は傷だらけで包帯らしき布で覆われ素顔がわからない、多分片手がない。布で覆われた傷口の血も止まっていない。
しかし、気配を感じたのか、身動ぎするとチャーリーを見て手を伸ばした。犬好き同士通じ合うものがあったのか!!
檻のなかの奴隷はチャーリーから目を離さない。レオンはわたしに向かって
「サミー様・・・・」
その声はしゃがれていて、余計にその思いが伝わって来る。
まぁあの場所にいるって事は安いよね。
そうしていると、男がやって来た。
「お嬢さん、気になるのかい?まだ使えるよ」と話しかけてきた。
「みたいね」
「使うなら早めがいいね」
「みたいね」
「金貨六枚」と男が言うとすかさずわたしが
「二枚」
「四枚」
「うーーーーん」とわたしは唸ると
「三枚でいいかな?」と言った。
「そうだな」と男は言うと
「死ぬ前に手続きしよう」と男は急ぎ足で事務所のテントに向かった。なるほどと思ったわたしも急いで追いかけた。
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