01 婚約以前で破局
わたしはこの世界の住人の番として、召喚された。唯一無二の存在。
愛され大切にされる番。嬉しかった。
でもわたしは能力がないと判定された。そして番は迎えに来なかった。
能力がないと判定するなんて、嫌がらせよね。番が来ないのも嫌がらせよね。
わたしは逃げ出して、自由にこの世界で生きて行く。
売れ残りの安く買った奴隷は、ホントにお買い得よ。
「見てわかるだろう。僕は美咲と結婚する」
言葉は確かに聞き取れたし、意味も理解できた。だけど・・・・・だけど・・・・・そんな・・・・
「どういう事?」と言った声は自分のものと思えないほど、しゃがれていた。
「相変わらず、鈍いなぁ。おまえとはお仕舞い。別れるってか、始まってもないか。この美咲と結婚する」
「ごめんなさい。先輩。先輩に付きまとわれて困っている光一さんを見かねて」と美咲がしおらしい声で言う。
いろいろな思いが湧いてくる。仕事のミスをいつもカバーしたのはわたしよね、美咲ちゃん。そう言えば出来上がった物を届けるのはあなただったわね。そして褒められるのはあなた。もっと気にすればよかったのか・・・・光一さんいつもうちに入り浸っていたのはあなただったけど。
最初で最後の小さな仕返しだ。
「わかりました」と呟くとわたしは立ち上がり、伝票を置いたまま店をでた。
コーヒー代、一度くらいは払って頂戴。
溜まっていた有給を取り、そのまま退社した。携帯も解約した。部屋を引き払い大きめのトランクに身の回りの物を入れた。そのなかに衝動買いしたスマホが二個入っている。
両親、祖父母もいない。未練はない。どこにでも行ける。鍵を不動産屋に返して店を出た。っと白い光でなにも見えなくなった。
なにが爆発した?と思ったのが最後だった。
まわりが騒がしい。丸い輪のなかにわたしぐらいの女性が何人か立っている。そしてわたしたちを囲んで違う服装の人たちが立っていた。
「歓迎致します。番の皆様。まずは説明を致します。こちらへ」と先に歩む神官らしき人について行くしかなかった。だっていつのまにか、腰に剣を下げた人たちに取り囲まれていたから・・・・
大きな丸いテーブルに座ったわたしたちは十人だった。
お茶とお菓子が配られた。
お茶の匂いに和んでいると神官が前に立って、説明を始めた。
「ようこそ、グリーンバレー王国へ。皆さんは番としてこの国に招かれました。歓迎いたします。番と言うのはこの国の者の伴侶と言うことで、大切に」と咳払いすると
「国をあげて、一族をあげて大切に致します。みなさんは伴侶と幸せに暮らして行けます。伴侶は永遠の愛を捧げます」
そうなんだ。永遠に愛してもらえて大事にされる・・・・この世界に来てよかったと思った。
「ねぇ永遠に愛してくれるって凄いよね」と隣から話しかけられた。
「うん、嬉しいよね」と答えると
「でも、どんな人かな?かっこいいと最高だけど」と反対側の子が話に入って来た。
「そうだよね。相手を選べるのかな?」
「みなさん、明日からこの世界の事を学んで頂きます。今日はお部屋の準備が出来るまで、ここでご歓談下さい。
お茶もお菓子もたくさん召し上がって下さいね」神官はそう挨拶すると部屋を出て行った。
わたしたちは、自己紹介して、わいわいとお喋りして伴侶はどんな人かしらとかこれからの生活を夢見て過ごした。
やがて、それぞれの侍女が来てわたしたちは部屋に案内されて、一日目が終わった。
本日は初日ですので、もう一度、17:30 に投稿いたします。
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