265 愛の告白
——一つになるということがどういうことなのか、実は私は教えられていなかった。
最低限王族として子孫を産むことが義務だと教えられていて、それがどのような行為なのかは教えてもらえていなかったのだ。
クリフの腕に包まれ少し乱暴だけど、夢中になってお互いを求めるうちに私はそれに溺れていた。
恥ずかしさもあったが、少し熱に浮かされたような頭の芯までとろけるような快楽で私は夢中になって彼の名前を叫んだ……彼も私の名前を叫んでいた。
愛する彼自身を受け入れた時に、感じた鋭い痛みが次第になくなり、それ以上に気持ちよさと幸福感で満たされた。
私だけを見てくれる、私がずっと憧れていた男性が私を感じてくれる、その幸福感で私は満たされた……お互いが果て、震える体をそっと抱きしめてくれるクリフの手がずっと暖かかった。
「クリフ……うんっ……」
急速に覚醒した私はゆっくりと目を開ける……まだ彼を受け入れたお腹が熱い気がする、その感触を確かめるために私は手をお腹に当てる。
そこには昨日お互いが愛し合った証が宿っている、ほのかにまだ暖かい気がする……それを感じて私は再び幸せな気分になった。
私が寝台の上で身を起こすと彼は寝台の端に座ってブツブツと何かを呟いているのが見えた……本当に彼に抱かれたのだ、とそこでもう一度認識してほんの少し頬が熱くなる。
私はそっと彼の背中へと熱い頬を寄せる……汗に濡れた彼の背中がひんやりとして気持ちよかった、私の行動に驚いたのかクリフが振り向くと、彼の目は私を見て恐怖に歪んでいた。
「……クリフ?」
「……お、俺は……俺はなんてことを……君を……君を……」
彼の瞳から涙がこぼれ落ちていくのが見える……私はその涙の意味がわからない、私は彼に抱いて欲しいの望んでいたから、なぜ彼が泣くのか理解ができなかった。
だから私はそっと彼の頬へと唇を寄せた……どうして泣くのかわからないから、私は彼を愛している、彼もまた私の気持ちに応えてくれたのだから。
私が彼の頬に口付け、そしてゆっくりと彼の唇へともう一度口づけると彼は驚いたように目を見開いた。
「どうして泣くの? 私こうして欲しいってずっと思ってたの」
「ヒルダ……だって君は……まだ」
「私ずっとアイヴィーやアドリアみたいにあなたに愛して欲しいって思ってた、だから貴方に受け入れられて嬉しいって思ってるよ?」
私の言葉にクリフは驚いたような表情を見せる……頼もしいリーダーであり、世界でも有数の魔法使い、当代随一の英雄である彼のそんな顔がほんの少しだけおかしなものに見えて、私は笑ってしまった。
笑う私を見て彼は戸惑ったようだが、私はそっと彼のことを抱きしめた……暖かい、こうしていたい……お互いの肌が直に触れるとこんなにも暖かいのかと幸せな気持ちになれた。
彼はおずおずと私を優しく抱きしめてくれる……彼の手は何か強い恐怖を感じているのか震えている気がする。
「……大丈夫、私も愛してあげるから怖くなんてないよ、その代わりみんなと同じように私を愛してクリフ」
「ヒルダ……」
クリフの腕に力がこもる気がした……暖かい彼の胸の中にいることに幸せを感じながら、私はそっと体を彼に委ねた。
しばらくの間そうしていただろうか? 黙ったままお互いの体温を感じていた時間が流れ、そしてクリフが大きなため息をひとつつくと、彼はそっと私の唇に自らの唇を合わせてきた。
お互いの唇を割って舌を絡ませる……昨日の夜教えてもらった行為、夢中になってお互いの口内を舌を使って蹂躙していく。
小さな部屋に水音が響く気がする……もう一度体に炎が点るような感覚に陥り、私は彼にしがみついた。
「……ヒルダ、俺はこんなだ……君のことを大事にするなんて言っておきながら、結果はこうやって君を……君を欲望のままに……」
「さっきも言ったわ、私ずっとこうして欲しいって思ってた」
「そうか……でも俺は二人も恋人がいる、そして君を欲望の捌け口にした俺を許してくれないかもな」
「アイヴィーは許すと思うよ……アドリアはわからないけど……」
「そうだな……だけど二人には俺からいうよ……」
クリフはそっと私を抱きしめる手を緩めると、寝台から降りて脱ぎ散らかした衣服を拾い始める。
もう少しこうしていたかったのに、と少しだけ不満な気持ちになるが……私はそれが今まで自分が感じていた、アイヴィーとアドリアへの嫉妬心なのだと初めて認識した。
彼を独占する二人にずっと抱えていた気持ち、だけどようやく二人に並んだという気持ちが勝り私は彼の背中を見ながら微笑んだ。
先ほどまで誰かいたのだろうか? 研ぎ澄まされた感覚が私とクリフのものではない別の匂いのようなものを感じ取るが、この部屋には他に誰もいない。
私も寝台から降りると、衣服を拾い集める……この場所から逃げ出さないといけないのだ、少し時間がかかってしまっている。
「……まずはここから早く脱出しましょう、クリフ……」
「おっせーなあ……出てこないですね」
アドリアは少しイライラとした様子で腕を指で叩いている……すでに数時間が経過し、残された彼らは混沌の門の前で野営の準備に差し掛かっていた。
イライラと門を睨みつけるアドリアを見て、アイヴィーもロランも苦笑いを浮かべているが……本来であればこんな場所で野営などしたくない。
何が出てくるかわからないし、危険すぎるからだ……だが彼らが無事に出てくるまでここを動くわけにはいかない。
「まあ、もう少し待ってあげましょ」
「そうだぜアドリア……クリフがいればヒルダだって大丈夫だろ」
「……そっちが心配なんですよ、あの性獣が可憐な少女を前に我慢できると思いますか?」
そっちかよ、と苦笑いしたロランをアドリアが睨みつける……そんな彼女を見てアイヴィーもつられて苦笑いしてしまうが、クリフもいい大人だ。
流石に普通の状態でヒルダを手籠にしようなどとは考えないだろう……多分、すでに混沌の門を展開していたモーガンの魔力は弱まり、門はその輝きを失いつつある。
モーガンを倒しているのに出てこないのは何かしらの問題があるからだろう……だが外にいる彼らは待つしかできない。
「ま、そうなったとしても……流石に自分から言うんじゃないかなあ……」
_(:3 」∠)_ お前……覗いていたんか! 的な
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