二十一話
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その頃学園ではシャロンとステファンは一室にて向かい合ってた。
「まさか、殿下はそれでルミナ嬢を追いかけもしなかったのですか?」
「何を言っても聞かなかったのだ。」
「・・だから?」
シャロンの怒気を含んだ言葉に、ステファンは声を荒げて言った。
「だから言っているだろう!ルミナは、僕の話を聞かない。僕だってルミナ以外と結婚する気などないのに、彼女が僕を信じないのだ!」
「殿下。」
低い、シャロンの声にステファンは唇を噛むと言った。
「ルミナの言っている事の意味が分からない。 僕は・・・ルミナを愛していると言ったのに。」
「本当に?」
「何だと?」
「殿下・・・貴方の心には一体誰がいるのですか?」
こちらを見定めようとするシャロンに、ステファンは顔を歪めると両手で顔を覆って隠す。
沈黙が流れ、そしてステファンは意を決したように言った。
「・・・・・・ソフィー嬢に確かに惹かれている。」
「それで?」
「だが、僕は間違えていない。ソフィー嬢とどうこうなる気はない。」
シャロンはじっとステファンを見つめると、昔ルミナの言っていた言葉をいくつも思いだし、そしてなるほどなと自分の心にすとんと落ちた。
こうなることを、ルミナは知っていたのかもしれない。
どんな仕組みで、知ったのかは分からない。
けれども知っていたのだとすれば納得も出来る。
頭を抱えるステファンをじっと見つめ、シャロンは静かに息を吐く。
「殿下、御心を教えてください。」
「ルミナが・・・はぐらかすなと・・言った。僕は、誓いを守ろうとしているのに・・」
もし結婚したとしても愛のない結婚になるかもしれない。それ以前に、本当にステファンはルミナを裏切らずにいられるのだろうかとシャロンは疑問に思う。
ソフィーと一緒にいる時間はほとんどないというのに、何故かステファンの心はソフィーへと傾いていっているように思う。
まるで何かに引き寄せられるように。
そしてそれもルミナは知っているのではないか。
その時であった。
ルミナの様子を見に行かせた従者が慌てた様子で部屋へと入ってくると、顔を青ざめさせて言った。
「ル、ルミナ嬢がご実家へと帰られたそうで、その後、荷物をまとめて出て行かれたそうです!」
「何だと?!」
シャロンは目を丸くし、慌ててステファンに言った。
「殿下、何かあってからでは遅いです!とにかくルミナ嬢を追いかけて止めましょう。」
だがシャロンはステファンを見て驚く。
ステファンはまるで何故と言わんばかりの表情を浮かべており、シャロンに言った。
「気晴らしに・・・出かけただけではないか?・・その、しばらく自由にさせてはどうだろうか。」
まるで今はルミナと会いたくないと言うような、そんな様子であった。
いつもの威厳は消えうせ、戸惑うその表情にシャロンは拳を握ると自身の心を決めた。
これまで一歩後ろへと引き、ステファンとルミナの懸け橋になろうと努めてきた。
それがこの国の為であり、ルミナとステファンの為であると信じていた。
どんなに自身がルミナに惹かれて行こうとも、その心は隠し、二人を見守ってきた。
だが。
好きな女が傷ついて、一人でいる時に、何もできない男にシャロンはなることは出来ない。
シャロンは一人の男として、ステファンに向き合うと言った。
「・・・・ルミナ嬢を愛さないと言うならば、俺が貰い受けてもいいか?」
「・・・は?お前、何を言っているんだ?・・・ルミナは僕の婚約者だぞ?はは。お前、どうしたんだ?」
突然の事に戸惑うステファンに、シャロンは言った。
「友人として言わせてくれ。ルミナ嬢を今一人にするならば、俺は男として・・・ルミナ嬢を貰い受ける。」
「婚約者は僕だと言っているだろう!」
「では追いかけるか?」
「・・・・」
黙るステファンに、シャロンは睨みつけると言った。
「一人の男として、友人として言う。婚約者だと言うのなら、追いかけるべきだ。」
「・・・・」
無言が答えだと、シャロンは目を瞑り息を吐くとステファンに背を向けて部屋を出た。
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