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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第3章 魔物侵攻編
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第14話 砂漠

 クーヴァンに着き、馬を近衛隊に返却し砂漠に入る。砂漠とはいっても初めのうちは岩がごつごつしていてルートを選んでいけばそれほど歩きにくいことはない。南へ行くほどに砂が増えて歩きにくくなるそうだ。前回来たときはそれほど奥には入っていないので、戦うとき以外には、足元の不安定さを感じることはなかった。


 砂漠の冒険者村を過ぎ、本格的に南を目指す。スカーレット様のベースキャンプまでのルートは知らされているので、しばらくは決められたルートを進むことになる。ところどころ砂が深い所はあるが、ナナの土の加護で普通に歩けるのがありがたい。地球と違って皆が生活魔法1を取っているので飲み水に困ることは無いし、温度調節の魔法がかかっているマントのおかげで暑さも気にならない。ナナのMPだけが心配なのだが、今のところ頻繁に土の加護をかける必要は無いので大丈夫のようだ。


 しばらく歩いていると小型のスコーピオンが現れた。ナナが土の加護をかけるとアルトとセシリアがマントを脱ぎ捨てて走る。セシリアが右に回り込み足を切り裂き凍らせる。動きが止まったところをアルトがファイアーラプチャー1発で仕留める。あまりの勢いに見ている僕は呆然としているだけだった。リーナとシェリルは、

「次は私たちに任せてよ」

と言っている。


 イバダンさんがアルトのハルバードを受け取り少し調整している。あれだけの威力だったのになにか不満があったのだろうか。聞いてみると、

「武器にも、使う者にも癖があるんでね。実戦を見ながら調整すると早くなじませることができるんだよ」

と教えてくれた。


 セシリアとアルトの装備は、今まではレンジャースーツだったのでそれしか見たことがなかった。それに比べて、新しい装備での動きは凄く可愛い。ローブやストリームスーツは太もも、絶対領域の部分が露出しているので弱そうに見えるのだが魔法での防御がしっかりしているらしく、それらの部分もしっかり防御しているそうだ。いや、実に良い。


 スコーピオンをイバダンさんと一緒に解体する。解体はすぐに終わったが中は未知の世界だった。尻尾の付け根の所の血管が少し膨らんでいるのが分かった、それが心臓だそうだ。脳は頭がファイアーラプチャーの影響で焼けて判別が付かなかった。

「虫の体は謎だらけだからな。個体差も大きいといわれているしな。解体しても売れるところが少ない」

とイバダンさん。1匹解体すれば十分だということだろう。


 次に出てきた砂トカゲはリーナが雷槍で、砂蜘蛛はシェリルがウインドカッターで仕留めた。僕の出番はまだない。それからは、砂トカゲがたまに出てくるくらいで難なく進んでいった。スカーレット様の野営地まであと2時間くらいかなというところでセシリアが、

「右からサンドワームの群れです。10匹以上います」

サンドワームは、砂の上を滑るように進んでくる。潜られる前に何とかしたい。

「アルト、シェリル、範囲攻撃を。ナナは土の加護を」

アルトがファイアーストーム、シェリルがウインドストームをかける。サンドワームは一斉に向かってくる。外被が傷ついたサンドワームはそれを補う分泌物が固まるまで砂に潜ろうとしないのだ。


 ナナの補助魔法で全員の動きが良くなる。潜らないサンドワームは敵ではない。戦いはすぐに終わった。セシリアの索敵には魔物はかからないようだ。何だかあっけなく第3近衛隊のベースキャンプにたどり着いた。イバダンさんと一緒に来たドワーフ3人はここで武器の整備をするらしい。イバダンさんはスカーレット様や僕たちと一緒に砂漠の奥、南に進むそうだ。


 もう少し先には、第1近衛隊のベースキャンプがあり、ピンチになってもベースキャンプまで逃げてくれば助かるということだ。

「待ってたぞ、イバダン、サトシ。今日はここで1泊して、明日から南の遺跡を目指す、いいな」

「はい、情勢はどうなっているんですか」

「先発隊の報告では、火属性の魔物が少しずつ増えているらしい。南の遺跡から魔物が湧き出しているようなのだ」

「遺跡が魔物のいるところと繋がっているのですか」

「おそらくそうだろうな」

イバダンさんが、

「じゃあ、その繋がりを塞がないといけないわけだ。やっかいだな」

スカーレット様も当然というように、

「遺跡までたどり着いてからのことだ。今ここで考えても答えは出ない」


 次の日に遺跡に向けて出発した。まずは2日かけて第1近衛隊のベースキャンプを目指す。それからまた2日かけてマディヤのオアシスに入る行程だ。オアシスから遺跡までは1日くらいの行程らしい。遺跡までの道筋はよく分かっていないらしい。


 1日目は何事もなく、ごく弱い虫系やトカゲ系の魔物しか出てこなかった。土の加護をかけられる支援魔法師がナナを含めて3人いるために歩行スピードも落ちなかった。結界を張り野営することになった。夜も人数が多いだけに見張りも楽で何の問題もなかった。問題と言えば、男は僕とイバダンさんだけであとの17人が全て女性ということだけだ。


 裸で体を拭かれるとまずいと思い、

「クリーンを使えます。5分に1回くらいかけられますので順番を決めておいて下さい」

というと、みんなとても嬉しそうだった。まず近衛隊の12人にかけて、その後に僕たちのパーティーとイバダンさんにもかけた。両肩に手を置いてクリーンとかけると女性たちはとても嬉しそうだった。

「へー、クリーンって装備まで綺麗になるんだ」

なんて声も聞こえる。習慣にならなければ良いのだけれど。


 次の日も何事もなく第1近衛隊のキャンプに着いた。情報を集めると、といってもスカーレット様が聞いてきただけだが、これから先は、大型のサンドワームや火を噴くトカゲ類が多くいるらしい。マディヤのオアシスに近づくにつれて強いのが出てくるらしい。第1近衛隊と傭兵でこの地点から北へは侵略させないようにしているそうだ。


 オアシスまではスカーレット様のパーティーと僕たちのパーティー、2人の支援魔法師、ディアレさんとザリアさん、それにイバダンさんで進むことになる。たどり着ければ結界石を多数使い、ベースを築く、第3近衛隊からのもう1班は別の任務があるようだ。スカーレット様が、

「私たちの仕事はオアシスの奪回だ。オアシスを中心に結界を張る」

「僕たちだけでやるんですか」

「そうだ、ユージン様たちは遺跡の調査に出かけるそうだ。近衛隊の結界はこれを付けておけば認識できる。サトシたちも付けておくように」

と近衛隊のバッジを渡される。さらに続けて、

「ユージン様たちが利用できるように、出来るだけ早くオアシスを奪回する」

僕は疑問に思っていたことを聞いてみる。

「奪回って、魔物に占領されているのですか」

「そのようだ。火属性の魔物が住みついているらしい。ほとんどは火トカゲだが、レッドウルフもいるらしい」

「火トカゲって、Dランクですよね。レッドウルフはAランク」

とナナがつぶやく。

「オアシス周辺は、下が土だから普通に戦える。泉も結構大きいらしいし。レッドウルフさえ気をつければ何とかなる」


 マディヤのオアシスは、直径50m程の泉を中心に200m四方の草木が生えている土の地域だそうだ。昔は人も住んでいたらしい。その周囲は、細かい砂が深く、土の加護を使わないと進めないそうだ。そのためにスカーレット様は土の加護を使える支援魔法師を2人連れてきたそうだ。


 南にむけて出発した。マディヤまでは2日かかる。支援魔法師たちのMPが切れないように気をつけながら先に進む。よほどの魔物でなければ、戦闘には可能な限り土の加護以外の支援は受けないことが申し渡された。


 スカーレット様の従者パフィアさんの索敵に魔物がかかった。

「火トカゲです。群れています。およそ30」

スカーレット様が落ち着いた声で、

「戦闘隊形を取れ、支援魔法師はこの場に」


 支援魔法師2人が中央に来る、ナナもそれに加わる。スカーレット様はその前に立つ。僕もその横に並ぶ。スカーレット様がニコリと笑う。並んで正解だったようだ。それを見た各メンバーは安心したように前方に展開する。火トカゲの姿が見えてくる。

「ナナ、土の加護を」

ナナは頷き、土の加護を全員にかける。


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