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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第2章 プエルモント教国編
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第8話 ガビー村

 採掘も終わり、明日の朝に出発することにした。ミレットさん、女将さん、旦那さんに挨拶する。

「長い間、ありがとうございました。良い鉱石が取れたようです。明日の朝、帰ります」

「マルチェリーナ様も一緒ですか」

とのミレットさんの問いに、

「はい、一緒に行きます」

とリーナ、僕も続けて、

「メルカーディア王国に戻ります。詳しい場所は言わない方が良いですよね」

「そうですね。知らないことは答えられませんから」

「また、いつか採掘か避暑で来るかもしれません、そのときは必ず寄りますから」

「待っています」


 次の日の朝、朝食後に帰国の途についた。イバダンさんも満足そうな顔をしている。まずは国境を越えて、ガビー村を目指す。ミレットさんは報告するためにプエルモント教国の首都クラチエに向かうそうだ。山を下りたところで分かれた。


 イバダンさんのアドバイスにより、僕は魔封じの盾と片手剣を使うことにした。剣はセシリアから借りた。途中、狼や熊を倒しながら進んだ。剣の扱いはまだまだだが盾で攻撃を受け止めたり、受け流したりするのは様になってきたようだ。危なくなると、セシリアがハルバードで援護してくれるので防御を重視する。


 セシリアに言わせると、僕の場合は防御ができて攻撃を受け止められれば魔法で相手を倒すことが出来るから攻撃は見せかけだけでいいそうだ。剣を使って攻撃をしているふりをすれば必殺技のカモフラージュにもなるという。言われてみればそうだなと思う。心臓を凍らせてから剣で刺せば、よく見ていない限りは魔法を使ったようには見えないのだから。


 もちろん、倒した後の剥ぎ取りは僕の役目だ。イバダンさんが厳しい目で見ているので気は抜けない。毛皮もたまってきたので、結構な金額になるだろう。リーナの分の装備も揃えないといけないから頑張らなくては。


 アルトやセシリアは、

「今年は新緑祭が見られなかったね」

なんて言っている。犬の7日、ガビー村に着いた。


 この世界の1年は、黒帝龍60日から始まり、白龍30日、赤龍30日、青龍30日、ここまでが春、夏は犬24日、蛇18日、猪18日で、秋は兔12日、狼18日、熊24日、猿18日、鰐24日、魚6日で、冬は鳥12日、猫18日、蠍12日となっている。青龍と魚の月が雨期である。よくこんな暦で生活できるものだと感心する。


 祭りは、バラ色祭が黒帝龍の30日、新緑祭が犬の3日、黒日祭が兔の3日、豊饒祭が鳥の1日と決まっているそうだ。


 ガビー村に着き、辺りを見回すと、村はさらに大きくなり新築の家がたくさん並んでいる。ゴブリンの巣討伐から2か月経っている、あのときのお金で、襲われた村々の人を受け入れたんだなということが分かる。


 冒険者ギルドに入る。いつものようにバルナバーシュさんが暇そうにカウンターの中に座っている。

「こんにちは」

と入っていくと、

「おー坊主か、こっちで仕事か?」

また坊主に戻っている。ひょっとして僕の名前を忘れたわけじゃないよね。

「サトシです」

「あ、すまんすまん、サトシ、今日はどうした、何か用か」


「冒険者登録をお願いしたいんです」

「誰の?」

「わたしです」

とリーナが進み出る。水晶に手を置くように言われ手を置き、リーナは、

「ステータス」

と言った。マスターは驚いたように、

「光か珍しいな、で名前はマルチェリーナって噂の巫女姫と同じ名前だ、まさか本物では・・・」

「違います。同じ名前で同じ年なんでよく間違われるんですよ。髪の色は違うのに」

とリーナ。マスターは、それでもまだ疑っているようだ。疑っているというより確信を持っているようだ。


 でも、ごまかすように言った。

「そうだよな。巫女姫は金髪だったよな、確か」

今度は驚いたのは僕だ。なんで金髪? アルトがフォローする。

「マスターは口が固いってご主人様が言っていましたけど、信用していいですか」

「おう、利用はするが漏らしはしない。これが俺の信条だからな。で、ご主人様ってサトシの奴隷か」

アルトが答える。

「はい、そうなのです。2人目の奴隷です」

マスターはあきれた顔でこちらを見ている。僕は口をパクパクさせているだけで言葉が出ない。

「ま、人生いろいろだよな」

とマスターが詮索しないようなので助かった。マスターはリーナにカードを渡したあと、僕に向かって、

「あのときの金を使わせてくれてありがとな。おかげでこのあたりの人が生きていけるようになった、ほんとに感謝している」

「いえいえ、僕も一財産もらったようなものだし」

「あの闇の袋か、あれは良さそうだったものな」


 とあれこれ話したが、リーナの話題はあれから全く出なかったので安心した。また、バンガローを借りた。一部屋にベッドが4つ。イバダンさんも一緒なので健全な夜だった。アルトとリーナが同じベッドで寝た。


 夜、寝る前にリーナに髪のことを聞いたら

「金髪です、逃げるときに染めました」

と教えてくれた。リーナの金髪、早くみたいなと考えていると、セシリアが手を顔の前に持ってくるのが分かったので逃げるようにベッドに入った。


 朝早く、ガビー村を出て、マリリアに向かった。


 マリリアに着き、スウェードルさんに終了報告をする。龍鋼石と鉄鉱石を作業場に納める。凄い量に我ながら驚く。闇の袋の実力はものすごいと感心していると、リーナが、

「レンジャースーツとマント、それに私に合う武器をお願いします」

とスウェードルさんに言ったので、

「リーナ、お金が足りない」

と僕は焦った。

「いえ、自分で出します、それくらいのお金は持ってますから」

さすがお嬢様、持ってるんだ。


 イバダンさんが口を挟んできた。

「リーナは、サトシが持っているハルバードを使えばいい。あれなら軽いし使えるだろう」

「でも、サトシさんが困らないですか」

「サトシには、片手剣を使わせる。思ったよりいい鉱石が取れたんでボーナスだ」

といって、片手剣を渡してくれた。見た目は太く頑丈な感じだが、思ったよりも軽い。重量軽減の魔法がかかっているそうだ。

「いいんですか、僕は役に立ってないのに」

と言うと、スウェードルさんが、

「あれだけの量だと、数人がかりで石を馬車まで運び、馬車3台くらいで往復する。その護衛を雇って、馬を用意して、などなど、本当はもっとお金がかかるのです。遠慮なくもらって下さい」

そう言ってくれたので、もらうことにした。


 夕方、家に帰り着いた。家に帰ると玄関の扉に紙が挟まっていた。この世界の紙は日本でいうところの画用紙みたいなものだ。広げてみるとカーラが書いたメモだった。休みの日に帰ってきたこと、訓練は厳しいが楽しみも多いこと、双剣部隊に入ったことなどが書いてあった。

「次の休みは、犬の15日って書いてあるよ」

「1週間後ですね、楽しみです」

とアルト、顔がほころんでいる。


 家に入り、荷物を置き、身体を拭いた。クリーンだけでは味気ない。お風呂はないけど、身体をお湯で拭くだけでも生き返る心地だ。もちろん僕はセシリアと一緒にお互いの身体を拭いた。セシリアの身体は鍛えられてはいるが、どんどん丸みをおびて女らしくなっていく。15歳だもんな、成長するよな。部屋に戻り、アルトとリーナが身体を拭いている間に、・・・、やはりクリーンの魔法は使わなければならなかった。


 次の日から、剣の特訓が始まった。魔法を頼らなくても戦えるようにしておくことが魔法を最も有効に使う手段であることをみんなが自覚したためだ。日に日に激しい訓練になっていった。


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