第8話 炎獅子
お待たせしました。半年ほど投稿できなくて申し訳ありませんでした。
また、拙い文章におつきあいいただいてありがとうございます。
投稿を再開したいと思います。
仕事が忙しく、不定期にはなりますがおつきあい下さい。
結界石を置きリーナのMPの回復を待った。
「いよいよ炎の水晶だね」
「炎獅子って強いんだろうね」
「リトルフェンリルの装備があるから大丈夫よ」
とみんな興奮気味だ。
「ラフィー、炎獅子について何か聞いていない」
「いえ、物語で読んだだけですから。物語では聖獣扱いだったし」
とラフィーが目を伏せる。さすが兎人族、いちいち可愛い。目の前を何かが上下する。セシリアの手だ。セシリアをみるとセシリアはジト目で睨んでいる。
僕はマントを脱いでラフィーに渡す。
「これを着て、魔法を通さないから」
「良いんですか」
「アルトも君を守る余裕が無くなるかもしれないからね」
「はい、分かりました」
僕は立ち上がり、
「さあ、行こう」
階段を上り、5階層に進む。5階層は広い空間になっており、奥に赤く輝く溶岩のようなものがあり、その前に台座があり、真っ赤な玉が光り輝いている。台座の前には6mくらいの真っ赤な獅子が寝そべっていた。僕たちが近づくと獅子はゆっくりと立ち上がりこちらを向いた。僕たちは戦闘態勢に入った。炎獅子は悠然とした態度で、口をゆっくりと開いていく。
低い唸り声が聞こえる。火を吐くのかと構えると何かを語りかけているような感じがした。
ラフィーが、
「何か語りかけているようですね」
と言うと、みんなが頷いた。
「ちょっと待って」
と言って、『翻訳』と強く念じた。すると炎獅子の言葉が頭の中に響いてきた。
「また、命知らずの冒険者どもか。儂と話が出来るくらいになってから来ればよいものを」
僕は、すまし顔で、
「聞こえているよ」
と言った。
「ほう、龍語が分かるのか。ちょっとは期待しようかのう」
「やはり戦わなくてはいけないんですか」
「フェンリルの皮を纏っているということはそれだけの実力があるのであろう」
「いえいえ、フェンリルの皮は偶然手に入れたものです。戦って倒したものではありません」
「リトルサラマンダーも倒したのであろう。まあよい、で、何が欲しいのじゃ」
「炎の水晶をお貸しいただきたいのですが。だめでしょうか」
「ファジルカに行くのか」
「はい」
「何のために」
僕は言葉に詰まった。だが、みんなに聞かれたら気まずいのだけど龍語が分かるのは僕だけなので問題は無いだろう。
僕は話し出した、
「僕はバラ色祭の日に地球という異世界からトリニダの森に迷い込みました。帰るかどうかは別として帰る方法は知りたいと思っています。それにこの世界に興味があります。ただの好奇心と笑われてもかまいません。3つの大陸、イグナシオ大陸、サマルカン大陸、シャイアス大陸には行きました。残るはファジルカ大陸だけなのです。もっとも雷の水晶を手に入れるためにはもう一度シャイアス大陸に行く必要があるようですが」
「異世界か。もう一つの神の門を通ってきたのだな。なるほど、ファジルカ大陸に行くだけなら残りの2つを完全に閉じれば不安定になり行き来も出来るのだろうが、行ったきり帰ってこられなくなる可能性もあるからの。3つとも揃えるに越したことはないわけだ。よかろう。ただし条件がある」
「僕らに出来ることなら」
「ファジルカ大陸に行った後、もう一度ここに来ること。それに、そこにいる兎人族の娘を儂の巫女に欲しい」
「炎の水晶を返しに必ずここに来ます。もう一つは・・・。巫女になるとどうなるのですか」
「儂と心が通じることになる。人族に儂の言葉を伝えてもらう」
「なにか彼女に不利になることはあるのですか」
「人族の間でどう思われるかは分からん」
「では、みんなで相談させて下さい」
みんなにこのことを相談した。ラフィーが言うには、
「伝説で読んだことがあります。その物語では炎獅子の意思を民に伝える役割をしていました。民からは尊敬されていたのですが、神殿に住み人と離れて暮らしていて寂しそうでした」
「では、巫女になるのはいやなんだね」
「いえ、どうせ生贄ですので。奴隷よりも巫女の方が良いのだと思います」
とラフィーは俯いて答えた。
このことを伝えると炎獅子は、
「別に神殿に住んで欲しいわけではない。普通に生活して良いのだ。ただ、1日に1回くらいは儂と話をして欲しい、とりあえずはそれだけだ。ただ誓約をかわすのだからステータスには現れるはずだ『炎獅子の巫女』と。もちろん龍語も話せるようになる。リトルサラマンダーにも言葉を伝えることが出来る、話合ってはくれないだろうがな。それでも『炎獅子の巫女』に攻撃を加えることは無くなるはずだ」
「それだけで良いのか」
「良い。儂は豊穣神ソバクとの約束で、自分の意思ではここから出られない。巫女に呼び出してもらえば巫女のレベルに応じて少しの時間だが外の世界にいけるのだ」
「冒険者登録をしてレベルを上げろと」
「そう言うことだ。巫女の装備は奥の宝箱にある。それに属性は『炎』になる」
ラフィーに炎獅子の話を伝えると、迷いもなく炎獅子に近づき跪いた。
「私は巫女になります。いえ、巫女にして下さい」
と言った。僕は炎獅子にそう伝えると、炎獅子は赤い光を放った。ラフィーは真っ赤な光に包まれた。
「ラフィーよ。聞こえるか」
「はい、炎獅子様」
「儂のことはジャクロックと呼ぶように」
「かしこまりました。ジャクロック様」
「これからは心話が通じるようになる、洞窟を出ても話せるはずだ。レベル15になったら『召喚』が使えるようになる。早く成長するように」
「私に出来るでしょうか」
「大丈夫だ。巫女服と炎の剣、獅子の盾を与える。これで戦えるはずだ」
火属性の魔物って炎獅子の眷属ではないのだろうか、疑問に思って聞いてみると、
「儂に眷属はいない、いるのは巫女だけだ」
と答えてくれた。
ラフィーは奥に進み宝箱を開けた。そして巫女服に着替えた。僕はセシリア達に後ろを向かされ着替えを見ることは出来なかった。少し残念。
「きれい」
とリーナが言ったので振り向くと、想像していた神社の巫女服ではなく真っ赤な炎のローブだった。それもロングスカートの。またまた少し残念。それでも腰のベルトで体の線が・・・。よく見えない何かが目の前を・・・。横を向くとセシリアのジト目が見えた。
ラフィーは、剣と盾を持っていた。シェリルが、
「重くない?」
と聞くと、
「重くないです。と言うよりも軽すぎるくらいです」
「ちょっと貸して」
とシェリルが剣を受け取ると、
「重い。持てないほどではないけど、とても振るのは無理だわ。炎の属性がないと扱えないのかも。巫女だけの武器ね」
「おそらくそうね」
と属性が火のアルトも重そうに持っている。ラフィーの力が強いわけでもなさそうだし属性依存の武器なのだろう。
僕たちは炎の水晶を預かり、炎獅子に別れを告げ洞窟を出た。洞窟を出て火トカゲを探す。ラフィーに戦い方を教えるためだ。生贄が冒険者になるためには単独で火トカゲを倒さなければならないのだ。




