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異世界はバラ色に  作者: 里中 圭
第5章 迷走編
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第17話 決心

 マリリアに帰るとエミレーツさんが、

「ルグアイ王国からパースさんたちのパーティーが訪ねていらっしゃいました。今日は『マリリアの瞳亭」に泊まるとおっしゃっていました」

と告げられた。

「なんだろう、明日にでも会うことにしよう」

とその日はゆっくりと休んだ。


 次の日、僕は1人でスウェードルさんの店に行きイバダンさんを呼び出してもらった。

「イバダンさん、相談があるのです」

「おう、今度は何だ」

「実はウォーターブレスを取ったんですが、威力がイマイチなんです魔力の消費も多いし。何とかなりませんか」

「杖を作るのが早道だが、闇の剣を使うんだろ」

「はい、僕は闇の魔剣と呼ばせてもらっています。闇の魔剣はすごいです。水竜の首を一振りで落とせました」

「そうか、闇の魔剣か。そう呼んでもいい出来だ。お前はよほど闇の魔石と相性がいいのだろうな」

「じゃあ、闇の魔石があれば何か杖の代わりになるものを作ってくれますか」

「そうだな。台座も何か素材があるか」

「はい、水竜の角があります」

「見せてみろ」

「これです」

と僕は闇の袋から水龍の角を出す。じっくりと見てイバダンさんは言った。

「これなら十分だ。腕輪を作ろう。手甲に取り付けてもいいな。手甲を出してくれ」

僕は手甲をだしてイバダンさんに渡す。

「どっちの手を使う」

「左手は盾代わりに使うので攻撃は右のほうがよいと思います」

「そうだな、じゃあ右に付けよう。3日で作るからできたら効果を調整したい。どこか試せるところを考えておいてくれ」

「おそらく砂漠になりますが良いですか」

「そうだろうな、雨期になると冒険者も増えるだろうが奥に行けば問題ないか」

「はい。ではお願いします」


 家に帰るとパースさんたちが来ていた。

「お久しぶりですサトシ様。今日はお願いがあってきました」

「なんですか、僕にできることですか」

「はい、私たちのパーティーの名前を付けていただきたいのです」

「そんな、僕はそんなにセンス良くないですよ」

「そこを何とか」

「じゃあ、『水竜の牙』なんでどうです」

そういうと、セシリアに、

「『竜』の文字も『龍』と同じ扱いで付けることはできません」

と叱られた、いまだに常識がないとみんなにもあきれらた。

「ルグアイ王国の色は緑だよね。じゃあ『緑鰐の牙』はどうですか」

「ルグアイの『緑』、鰐専門の冒険者で『鰐』それに『黒龍の牙』の知り合いで『牙』、ですねありがたく頂戴します。さっそくギルドに行ってパーティー名の登録をしてきます」

そう言って立ち上がろうとしたパースさんをコリーさんが止めた。


「私たち、装備を揃えたいんです。この前いただいたお金で。有名なスウェードルさんの店を紹介していただけませんか」

リーナが、

「そうね、あそこならきっと良いものが安く手に入るわよね」

あーあ、今スウェードルさんの店から帰ってきたばかりなのにとは思ったが、セシリアが、

「名前の登録にはサトシもついて行ってあげたほうがいい。お父さんも何か話があるって言ってましたから」

と言うのでまたマリリアに行くことになった。


 スウェードルさんの店に行き、パースさんたちを紹介した。明日から戦い方などを聞き取り希望を聞いて最適な装備を選ぶことになった。それから冒険者ギルドに行ってパーティー名の登録を済ませた。僕はクラウディオさんに呼び出されたので、

「パースさん、今日から僕の家に泊まって下さい。客間もいっぱいありますから」

「悪いな、マリリアは宿代も高いからどうしようかと思ってたんだ。じゃあ先に戻ってるな」


 ギルド長室に入ると、クラウディオさんとカタリナさんがいた。カタリナさんが、

「結婚のことで悩んでいるんだって」

と聞いてきた。

「そうなんです。こちらの結婚のことがよく分からなくて」

クラウディオさんが、

「何を悩んでいるんだ」

「秘密は守れますか。他の『紅バラの剣』の人たちにも話さないと」

「約束する」

そう言われたので、僕が違う世界から来たこと。日本での結婚観、そして2年後にはいなくなるかもしれないことを話した。クラウディオ夫妻は黙って聞いてくれた。


 カタリナさんが、

「でもあの娘たちとはもう関係を持ったのでしょう。じゃあ悩むことは無いわ結婚しなさい。全員と」

「えっ、でも。一度に」

「そう一度に。もちろんあなたが申し込んで断られたら別だけど」

「でも5人とも?」

「6人でしょ。ナウラも入れると」

「・・・、2年後にはいなくなるかもしれないのに?」

クラウディオさんが言った。

「決まってるわけではないんだろう。それに、冒険者は明日死ぬかもしれないんだよ。2年も一緒に居られたら満足すべきなんだよ。お前らが2年間生きているかどうかも不確定なんだぞ。今までは運が良かっただけかもしれない。それにそのことはもう彼女らは知っているんだろ」

「はい、話しています」

「じゃあ、セシリアと結婚してくれるんでしょ」

とカタリナさん。

「でも・・・」

「サトシ、魔物に対しては度胸があるのに何でそんなにうじうじしてるんだ」

「・・・」

「彼女たちはもう決めていると思うよ。あと2年間しか一緒に暮らせないかもしれないことも分かってくれてるんだから」

「サトシさん、これからサマルカン大陸に行くってセシリアが言ってたわ。命がけで戦うのよ。冒険者の夫婦というのは明日どちらかの命が尽きることを常に覚悟しておかなければいけないの」


 僕は決めた。彼女らと結婚する。良いことなのか悪いことなのかは分からない。でも命がけで彼女らを守るために、そして選べるなら日本に戻らないと決めた。

「ありがとうございます。結婚を申し込みます。セシリアにも申し込みます」

「結果は2人で報告に来いよ。ナウラは今日から『黒龍の牙』の動向調査ということにする一緒に帰れ」

「はい」


 ナウラが帰る準備をするのを待って、巡回馬車で家に戻った。エミレーツさんが、

「パース様たちは、オルモス様の家にお泊まりになるそうです」

「どうして」

「こちらの豪華な客間では寝られないとおっしゃいましたので」

分かるような気がする。

「夕食は一緒に広間で取りたい。この家で働いてる人もみんな一緒にパーティーしたいんだけど準備できる」

「お祝い事ですか。Sランクに昇格されたんですよね。他にお客様はおいでになりますか」

「いや、この家以外の客はパースさんたちだけだ」

「はい、かしこまりました。準備いたします」


 部屋に帰るとリーナが来た。

「みんなはどうしている?」

「部屋にいるよ、呼んでこようか」

「いや、いい。リーナ、話がある」

と、急激に僕は緊張する。口の中はカラカラになった。リーナも僕が何を言い出すかが分かったようだ。

「待って、言いたいことは分かる。でも、こういうのは目の前にいる者から済ましてしまうものではないと思う。私も部屋で待ちます」

そう言って部屋を出て行った。


 みんな一緒に呼んで一斉に申し込むのが一番簡単なんだけどそういうわけにはいかないだろうな。といって、1人ずつ申し込むとしても順番はどうすれば良いのだろう。身分から言えばシェリルからになるんだろうけど、それは違うと思う。しばらくいろいろ考えたがやはりこれしかないと順番を決めた。


 僕はセシリアの部屋のドアをノックした。中に入るとセシリアが緊張したようすで出迎えてくれた。クラウディオさんたちが僕に何を言ったのか分かっていたようだ。僕の鼓動は激しくなった。部屋を出るときに決めていたように跪いて、

「セシリア、僕と結婚してください」

それだけしか言えなかった、本当はいろいろと台詞も考えていたんだけど。セシリアは、

「はい、ご主人様」

と言って、少し上を向き目を瞑った。僕はガチガチになりながらも優しくキスをした。セシリアはギュッと僕に抱きついて、

「ご主人様と過ごした記憶は消えたけど、首輪を外してからのご主人様を見てこの人以外には私の夫にする人はいないと思っていました。嬉しいです」

と声が潤んでいる、きっと目には涙を溜めているのだろう。

「明日、ご両親の所に報告に行こう」

「はい」

しばらくそのまま抱き合っていた。

「私で何人目ですか」

「セシリアが1人目だよ」

と言うと、

「私が1人目」

と静かに言って、腕をほどき身体を離した。そして、

「では次の人の所に行って下さい。私1人に申し込むんじゃないのでしょう」

そう言ってドアまで僕を押していく。


 僕はセシリアの部屋を出てアルトの部屋に入った。そして跪いて言った。

「アルト、僕と結婚して下さい」

アルトは、びっくりした顔をしていた。

「私と結婚ですか」

「そうだよ」

「私は、愛妾で十分です。他の人みたいに身分もないし、サトシ様に助けられた身ですから。奴隷でもかまいません」

「愛妾じゃだめだ。妻になって。なってくれるよね」

「ありがとうございます。お受けさせていただきます」

と言って僕を立たせた。僕はキスをして抱き寄せた。身体を離すとアルトは大粒の涙を流していた。


 3番目はナウラの部屋に入った。そして跪いて、

「ナウラ、僕と結婚して下さい」

ナウラはびっくりして固まってしまった。

「えっ、私と・・・。私は『黒龍の牙』じゃない・・・」

僕はナウラを見上げていると、ナウラは僕にもたれかかるように抱きついて、

「私も良いんですか本当に」

「もちろん妻になって欲しい」

「はい、ナナルと一緒にあなたの妻になります」

「ナナルにはこれから申し込む」

「私が最後ではないのですか。私は『黒龍の牙』じゃないのに」

「そんなことは気にしないで」

「じゃあ、次の人の所に行ってください」

僕はナウラを抱き寄せてキスした。


 そしてリーナの部屋に行く。跪いて、

「マルチェリーナ、僕と結婚してください」

「はい謹んでお受けいたします」

そう言って僕を立たせキスをして抱きついて言った。

「私で何人目」

「4人目だよ」

と言うと、

「ナウラにも申し込んだのね」

「どうして分かるの」

「出会った順番なんでしょ。まさか愛している順番じゃないよね。それとも適当とか」

「出会った順番だよ」

と僕が言うと、リーナは、

「良かった。ちゃんと順番を考えてくれたんだね。それにもし申し込むときにリーナって呼んでたら引っ叩こうと思っていたのよ」

「それくらい軽い気持ちならこんなに悩まなかったよ」

「ハーレムだね、王様」

「そうだね、王様じゃないけどね」

「どちらかというと女王様が一杯かな。じゃあ、次はナナね。全員終わったら声かけてね。みんなでサトシの部屋に集まりたいから」

リーナは、そう言って僕を部屋から出した。


 ナナの部屋に行く。僕は跪いて、

「ナナル、僕と結婚してください」

「良いんですか私で、お姉ちゃんじゃなくて」

「お姉さんにも申し込んだ。ナナルも僕の妻になって欲しい」

「はい。でも・・・。いえ、・・・。私のことも愛していただけるんですね」

「もちろん」

「ありがとうございます、もちろんお受けいたします」

それからキスをした。ナナは震えていた。誕生日のとき軽くキスしたことはあったけど、しっかりとした大人のキスは初めてなんだよね。

「私には申し込んで下さらないかと不安だったんです。とても嬉しいです」

「じゃあ、また後で」

と言って、部屋を出た。


 そして最後はシェリルだ。跪いて、

「シェリル、僕と結婚してください」

「どうしようかな」

「えっ」

と思わず声が出る。シェリルは微笑みを浮かべ、

「サトシ様、謹んでお受けいたします」

と言った。僕を立ち上がらせ、

「ファーストキスよ。あなたにあげる」

と言ってキスをしてきた。唇と唇をくっつけただけの稚拙なキスだった。僕は力強く抱き寄せしっかりとしたキスを返した。シェリルは真っ赤になった。

「ファーストキスって、誕生日のときにしてくれたよね」

「あれは挨拶みたいなものよ。愛情を込めたキスは初めてよ」

と照れ隠しか、頬を膨らませている。可愛い。


 リーナの部屋に行った。

「終わったよ」

「そう、お疲れ様。全員OKよね」

「うん」

と頷く、その瞬間に震えが来た。なんと大それたことをしたんだろう、本当に良かったんだろうか。

「じゃあ、部屋に戻ってて」

そう言って部屋を追い出された。


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[一言] 結婚とか…体だけ使わせてくれたら良いんだけど。責任とかダルっていう主人公の気持ちは凄く分かるよ。グダグダしてる間にうやむやになりつつ穴だけ使わせてくれたら良いよね! ヤらせてくれる言うから…
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