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どうやら俺は最強らしい ~都会の魔物が弱すぎて、美少女たちから頼られるようになりました~  作者: 絢乃


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024 忠告

「俺たちの全方位アタックを食らって無傷だと……!?」


「嘘……だろ……!」


「人間じゃねぇよ……」


「化け物だ……!」


 Aランクパーティー『黒の蛇』の面々が震え上がっている。

 まだ何もしていないのに、連中は戦意を喪失していた。

 だからといって、見逃してやるつもりはない。


 俺は教育する順番を適当に決めた。

 金髪野郎は最後に回すとして、まずは他から潰そう。


「く、来るなぁ!」


 俺に目をつけられた男が尻餅をつく。

 恐怖のあまり小便を漏らしていた。


「安心しろ。運がよければ死なないさ」


 ということで、デコピンをお見舞いした。


「ブベホッ!」


 男は派手に吹っ飛び、頭から地面に突き刺さった。


「よーし、次はお前だ」


「ひぇぇぇぇ!」


 パチンッ!


「ガハッ!」


「残り二人! そりゃ!」


 パチンッ!


「ぎゃああああああああああああ!」


 サクッと金髪野郎以外をデコピンで処理した。

 三人とも壁や地面に突き刺さっているが、おそらく生きているだろう。

 仮に死んでいたとしても自業自得だ。

 多くの冒険者が現場を目撃しているし、正当防衛が認められるだろう。


「ということで、あとはリーダーのお前だけだな」


「ひぃ! た、助けてくれ……! 俺が悪かった……!」


 金髪野郎が土下座する。


「大丈夫だ。運がよければ死なないさ」


 俺はデコピンの構えをとった。


「嫌だ! そのデコピンは嫌だぁぁぁぁぁ!」


 金髪野郎は慌てて距離を取ると、懐から角笛を取り出した。


「なんだ?」


 首を傾げる俺に対して、金髪野郎が角笛を吹く。


 ブオオオーン♪


 重低音がダンジョンに響く。


「「「グガガガガ……!」」」


 笛の音が止むと、地面から大量の骸骨戦士が現れた。


「その笛、魔物を召喚できるのか」


「驚いたか! こいつはレアアイテム『ネクロマンサーの角笛』だ! 召喚した骸骨戦士は俺の言うとおりに動く! 行け、ジャージ野郎を足止めしろ!」


「「「グガガガガーッ!」」」


 骸骨戦士の群れが襲いかかってくる。

 ご主人様の命に従い、ただ闇雲に突撃してくるだけだ。


「一桁階層の敵に匹敵するザコだが、こうも数が多いと鬱陶しいな」


 厄介なのは数だ。

 どれだけ倒しても次から次に突っ込んでくる。


「こうなったら……」


 俺は大きく息を吸い込み、「フゥ!」と吐き出した。

 それによって突風が発生し、骸骨戦士をまとめて吹き飛ばす。


「「「うわああああああああああああ!」」」


 野次馬の冒険者パーティーまで巻き込んでしまった。

 しかし、この攻撃によって敵が全滅した。


「……あの金髪野郎、薄情な奴だな」


 骸骨戦士が消えた時、金髪野郎はすでに離脱していた。

 仲間の三人を見捨てて、一人だけ逃げおおせたのだ。


「おい、ジャージ野郎! 俺たちまで巻き込むなよ!」


「そうよ、ジャージくん! 私、あなたのファンなんだから!」


「攻撃するならするって言ってくれよ! ジャージ!」


 俺に吹き飛ばされた野次馬たちが不満そうにしている。


(面倒くせぇな)


 俺は金髪野郎のパーティーが残していたリュックを野次馬たちに投げた。


「そのリュックはあんたらにやるよ。慰謝料みたいなものだ。それでいいよな?」


 軽くすごむだけで、野次馬たちは震え上がった。

 大事そうにリュックを抱えながら「十分でございます」などと言っている。


(やれやれ、結局、時間を無駄にしただけだったな)


 俺はため息をつくと次の階層に向かった。


 ◇


 その後はトラブルもなくダンジョンを進んだ。

 ただし、深層である四十層の手前で引き返すことにした。

 のんびり進みすぎたせいで結構な時間が経っていたからだ。


 高ランクの冒険者は、ダンジョン内で寝泊まりするという。

 一時的に安全なエリアを生成するアイテムが存在しているそうだ。

 しかし、俺はそんなものを持っていない。


 仮に持っていたとしても、使うつもりはなかった。

 夜は家の布団で寝たいからだ。

 ということで、俺が進める範囲には限界があった。


「……査定が終わりました。合計で262万円になります」


「262万円……!」


 思ったよりも多い稼ぎだった。

 受付嬢も信じられないといった様子で査定額を見ている。

 倒した魔物の中に、金になる魔石を落とす奴がいたのだろう。

 等しくワンパンなので、どいつが強いのかわからなかった。


(今日はよく稼いだな)


 俺は換金所を出ると、スマホを取り出した。

 アプリで銀行口座の残高を確認する。


『口座残高:10,273,865円』


 今回の報酬で、貯金が一千万円を突破した。


(これだけ楽に稼げるなら、もう少し贅沢していいかもなぁ)


 などと思うが、すぐに首を振った。


(いや、ダメだ。学校で習っただろ! 冒険者は浪費禁止って!)


 冒険者はいつ引退することになるかわからない。

 だから、一時の稼ぎに浮かれて浪費することは禁物だ。

 余剰資金は資産運用に回すのが冒険者である。


(資産運用をしていない俺は、なおさら気をつけないとな……)


 マリン、セラ、ルナはそれぞれ投資などをしている。

 そういうことに無縁そうなレイコ先生ですら資産運用に余念がない。

 株式投資や投資信託、ゴールドや海外の通貨を買っているそうだ。


 しかし、俺はそういったものに手を出していなかった。

 都会の人間と違い、その手の知識が何もないからだ。

 だからこそ、倹約家として生きていかなければならない。


 そんなことを思っていると――。


「あれ? 朝比奈くん?」


 ――死角から声をかけられた。

 振り返ると、隣人のキョウコさんが立っていた。

 仕事中なのか、今日はスーツ姿だ。

 Hカップの胸がブラウスの内側で悲鳴を上げていた。


「キョウコさん! こんなところで会うとは!」


「外で会うのは初めてだよねー。どう? 仕事着の私」


 キョウコさんが腰に手を当て、「ふふん!」と胸を張る。

 俺が巨乳好きであることを知っていて、わざとアピールしてきた。

 首に掛けているダンジョン管理局のIDカードが胸の上で跳ねる。


「す、素晴らしいです……!」


「朝比奈くんはダンジョンの帰り? ソロだったの?」


「あ、はい」


「美味しいお肉はあった?」


 キョウコさんがニヤりと笑う。


「残念ながら、キョウコさんのお眼鏡に(かな)いそうなものは……!」


 キョウコさんはかなりのグルメだ。

 肉の見た目や味で、どの魔物から取った肉かを識別できる。


 それだけに採点が厳しかった。

 今のところ、揉み揉みイベントは発生していない。


「ところで、ダンジョンで他の冒険者に絡まれなかった?」


 キョウコさんは眼鏡をくいっと上げた。


「絡まれましたよ。日常茶飯事なんで気にしていないですが……」


 俺に絡んでくる冒険者は多い。

 何故なら俺は有名な「ジャージ男」だからだ。

 握手やサイン、ツーショットを求められることなどざらにある。

 今日も30回はその手のファンサービスをした。


「まあ、朝比奈くんは有名人だから問題ないかもね」


 キョウコさんが神妙な顔でつぶやく。


「どうかしたんですか?」


「朝比奈くんは知らないと思うけど、ここ最近、ダンジョン内でカツアゲや殺人が横行しているの。犯人は『黒の蛇』っていうパーティーだと言われているわ」


 もろに知っている件だった。


「へ、へぇ、そうなんですか……」


「管理局のほうでもマークしてはいるんだけど、ダンジョン内のトラブルって立件するのが難しいんだよね。特に『黒の蛇』は狡猾で、証拠を残さないように徹底しているのよね。配信者は避けて、通報しそうな冒険者を片っ端から殺しているわ」


「それは怖いですね」


 思ってもいないことを言う。


「朝比奈くんもダンジョンに潜る時は気をつけてね」


「……はい、気をつけます」


「本当に心配なんだから。何かあったらすぐ私に連絡してね?」


「ありがとうございます。キョウコさんがいてくれると心強いです」


 俺は「黒の蛇ならボコボコにしておきましたよ」とは言わなかった。

 もし言えば、キョウコさんは俺に事情聴取をすることになる。

 つまり、キョウコさんの仕事が増えてしまうわけだ。

 それを避けたかった。


「あ、そうだ、朝比奈くん、このあとは暇?」


「はい、暇ですが、どうかしましたか?」


「なら美味しい焼肉を奢ってあげよう!」


「え! 本当ですか!?」


「いつも貴重なお肉をもらってばかりだからね! たまには私が奢るよ! その代わり、食事の時に形だけのインタビューをさせてね。有名冒険者にインタビューしたって形なら経費として認められるし、仕事中に焼肉を食べても怒られないから!」


「わかりました!」


「よーし、国民の税金でたらふく食うぞー!」


「おー!」


 俺とキョウコさんは小洒落た焼肉店に行き、時間を忘れて焼肉を楽しんだ。

 やっぱり他人の金で食うメシは最高だぜ!


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