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尽くしたがりのつくしさん  作者: マノイ
第二章

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第34話 つくしとの休日 後編

「おっ、白菜が安いな」

「今日は鍋にしましょうか」

「それはいいな。だが何鍋にするかが問題だ」


 新居の近くにはありがたいことにそこそこ大きなスーパーがある。日用品食料品だけでなく、ちょっとした服や電化製品も売っているのでとても便利だ。もちろんシーツも売っていて既にゲットしている。


 そこで一週間分の食料を調達すべく、買い物カートを押しながら二人で商品を見て回っていた。特にベタベタイチャイチャしているわけではないのに、それだけで幸せな気分になるな。


「尚哉さんってお鍋好きですよね」

「野菜を美味しく大量に食べられるからな。しかもお肉までついてくる」

「くすくす。お肉はおまけなんですね」

「野菜を引き立たせる名脇役だ。なんてな。肉も大量に買っておこう」

「は~い」


 三十歳を超えると胃が弱くなるだなんて話を良く聞くが、俺はまだ平気だ。だから肉より野菜を食べたいだなんて冗談である。

 ただ、二十八歳なのでもうすぐそれが来ると考えると、今のうちに食べられるだけ食べておきたいという気持ちもある。


「もつ鍋……はもつを精肉店で買いたいし、そもそも家で作るより外で食べた方が美味しそうだ」

「頑張りますよ?」

「はは。つくしならお店以上に美味いの作れそうだな。でも今日は白菜食べたいから他のにしよう。もつ鍋はキャベツだからな」

「ですね。ひとまず一玉買っておきましょう」


 半分は今日の鍋に使うとして、白菜は長持ちするから残りは今週いっぱいは十分もつだろう。あるいはキャベツも追加で買っておけば完璧だ。


「小松菜に、しめじに……」


 献立を考えるのはつくしなので、基本的に俺は彼女のそばで買い物かごが一杯になるのを眺めるだけ。


「鮭の切り身も買いましょう」

「う~ん、相変わらず凄いな。ちょっと見ただけなのに、なんとなく食べたくなったの良く察せられるな」

「愛の力です」


 おっとそれはイチャイチャに入ってしまうぞ。気にしないけど。


「ならその力で、俺が今一番食べたい物が何か分かるか?」

「コロッケですね」

「大正解!って分かるか」

「くすくす、ここに来るといつも食べたがりますものね」


 だって美味しいんだもん。しかも安いし。

 学生時代に近くにあったら重宝したんだがなぁ。


「コロッケの話してたらすげぇ食べたくなってきた」

「それならお買い物を早く終わらせてしまいましょう」

「だな」


 足りない物があればまた買いに来れば良いだけの話だ。と言ってもつくしのことだ、どれだけ急いでも漏れることは無さそうである。


--------


 買い物が終わって家に戻って来たがまだおやつ時。味が染みた方が美味しいからとつくしは帰ってすぐに夕飯の作成に取り掛かったが、それが終わってもまだ夕方に差し掛かった頃合い。


 洗濯物の取り込みは買い物の前に終わっているし、今日やるべきことはもう無い。


 今から寝るまでの間に何をするか。


 勉強は午前中に集中してやれたから今日はもう良い。濃厚なイチャつきは惹かれはするが、明日は月曜で会社なので控えたい。そういうのは翌日が休みの時にすると決めている。


 濃厚でなければ良いのだが……今日は別のことをやろう。


「ゲームですか?」

「そう、二人プレイ用の協力ゲームをやってみたかったんだよ」


 コントローラを手につくしと肩を並べてソファーに座る。


「あの……尚哉さんの前に座った方が良いですか?」

「それやったらゲームにならない」


 そしてそのまま濃厚なイチャつきへと発展してしまう可能性がある。そりゃあ女性を抱き抱えてゲームするとか男の夢だけど、今日はゲームを楽しみたいんだよ。


「くすくす、そうですね。それはまた今度にしましょう」

「あまり誘惑しないでくれ、何もかも投げ出して溺れてしまいたくなる」

「溺れてくれないんですか?」

「金が欲しいからな」

「くすくす、そうですね」


 働かなくて良い程のお金があるのであれば愛に溺死するのも良いかもしれないが、残念ながらそんな富豪ではない。


「ささ、やろうぜ」

「はい」


 つくしのゲームの腕は並。何をもって並と表現するかは難しいところだが、下手すぎることも上手すぎることも無い絶妙な感じである。一番ゲームを楽しめるレベルかも。


「お、ここで俺がこうすると……」

「私が先に進めるようになるんですね。なら、こうすると?」

「おお、俺の方が進めるようになった。面白れぇ」


 パズルや共闘など、二人で協力しなければクリアできないギミックが満載だ。


「あれ……ここってどうやるんだ?」

「う~ん……こうですかね。あれ、違いました」

「ならそっちの奥のって動かせないか?」

「ダメみたいです。尚哉さんの方の青い箱はどうでしょう?」

「無理っぽいな…‥お、でもなんか触ったところの色が変わったぞ」


 そうそう。

 こうやって二人で頭を悩ませて答えを考えてみたかったんだ。


「やったいけた!」

「やりました!」


 そして答えが分かった快感を二人で共有する。

 この瞬間が最高に気持ち良いんだ。


「尚哉さんは、こういう協力ゲームがお好きなんですね」

「というより、やってみたかったけどやれる機会が無かったっていうのが正解かな」

「ぼっちだったんですね」

「そうなんだよ。俺って友達がいないからさ。ってなんでやねん」

「くすくす」


 一緒にゲームする友達くらいいるぞ。本当だぞ。時々飲みに行ったりするからな。


「俺の友達って三人以上で遊ぶことが多くて、二人だけで遊ぼうって感じじゃないんだよ」


 漫画とかでよくある、二人だけで良く一緒に遊ぶ親友ってのは居ない。社会人になってからは特にそれが顕著になった気がする。貴重な休みを使ってせっかく遊ぶならみんなで集まりたいって思っちゃうから。


「私も似たようなものなので、とても新鮮で楽しいです」

「なら良かった。今日はがっつり楽しもうぜ」

「はい。でも続きはお夕飯の後ですね」

「え? もうそんな時間か?」


 気付けば外は暗く、コロッケで保たせていたお腹が空腹を訴えかけていた。


「うし。飯だ飯」

「温めてきます」

「なら俺は食器を出しておこう」

「くすくす。よろしくお願いします」


 早く食べてゲームの続きをしたいから手伝いをする。

 なんか子供っぽい気がするけれど、気にしたら負けだ。


--------


 夕飯の後片付けを終えてゲームの続きをしたら、あっという間に時間が過ぎて行く。


 後はお風呂に入ってゆっくりして寝るだけだ。


 風呂は浴槽が小さいのでもちろん一人で……


「お背中お流ししますね」


 入るわけがない。つくしは絶対に一緒に入ろうとしてくるからな。


 つくしは俺の気持ちを汲んでくれているから俺がそれを望んでいるのではないかって?


 はは、なんのことかな。


「同棲してから背中を洗われる気持ち良さと、女性の背中を洗う難しさを知った気がする」

「くすくす、私も十分気持ち良いですよ」

「それなら良いが、綺麗な肌を傷つけないようにって思うと難しくて」

「尚哉さんは優しすぎます。もう少し乱暴くらいでも良いんですよ」

「それって背中を洗う話だよな?」

「くすくす。なんのことでしょう」


 つくしはことあるごとに俺を誘惑してくるから嬉しくて困る。

 恐らくは俺の心理的抵抗を和らげるためなのだろう。


 俺はつまらない人間だ。

 それは俺が自分の気持ちを抑えすぎて相手の気持ちを優先しすぎてしまっていたから。


 つくしにそれを教えられてから、つくし相手にはなるべく素で接するように気を付けているのだけれど、心の奥底でまだ遠慮や配慮をしすぎている感覚がある。それを解放するために最も強烈で効果的なエロの力を借りているのだろう。つくし自身も求められることが嬉しくてたまらないと言った感じで喜んでくれるから抵抗感は日に日に薄れている。


「尚哉さん、終わりました」

「ありがとう。じゃあ交代だ」

「はい……あ」


 つくしが俺のある場所を見て驚き、すぐに喜んだ。


 明日は会社だから、疲れが残らないようにハッスルは出来ない。

 だが何もしないだなんて誰も言っていない。


 つくしの背中と、そしてそれ以外を洗い、汚し(・・)、また洗う。


 疲れが取れたのかそれとも疲れたのか良く分からない風呂を堪能した俺達は、ゆったりと雑談しながら体内の熱が程よく治まるのを待ってから翌日に備えて就寝した。


 流石に本当に何もせずに寝たからな!


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