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尽くしたがりのつくしさん  作者: マノイ
第二章

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第26話 引っ越しからの恋愛同棲開始

 引っ越しの前週、俺達は街中の巨大ショッピングモールへと向かい、ソファーを探していた。


「う~ん、もっと横に長いのが良いかな。いや、でも狭い方が密着できるし……」


 新居に必要なもの。

 俺はほとんどこだわりは無いが、一つだけどうしても欲しいものがあった。


 それが二人で座れるソファーだ。


 好きな人と並んで座りたいという気持ちもあるが、単純に欲しいと前から思っていたのだ。床に直で座るのも悪くは無いが、座り心地の良いソファも憧れていた。


「つくしはどっちが良いと思う?」

「う~ん……長い方が良いと思います」

「部屋が狭くなっちゃうぞ?」

「それでも長い方が便利だと思いますよ」

「便利?」

「はい」


 快適なら分かるけれど便利とはどういうことなのか。

 その疑問を何故かつくしは俺の耳元で囁くように教えてくれた。


「長ければ寝やすいですから」

「…………」


 単に横になりやすい、という意味ならばわざわざ他の人に聞かれないように配慮する必要は無い。つまり配慮すべき意味合いである。

 つくしがエロ方面で積極的なのは、俺がむっつりだという証拠なのだろうか。だってつくしは俺が喜ぶ選択をするから。そう考えるとここで横長のソファーを選ぶのはそれを認めているかのようでなんか恥ずかしい。


「すいません。この横長の方のソファーを下さい」


 恥ずかしいけど、それがどうした。

 こんなこと言われて日和るようじゃ男じゃねぇ。


 う~ん、果たして健全な同棲生活を送れるのだろうか。いや同棲開始直後なんて、誰もが不健全な気もするが……考えないようにしよう。


「そういえばつくしの部屋にもソファーあったよな。一人用だけど、あれは持ってこなかったんだな」


 引っ越し前は俺がソファーを欲しがっているなんて話はしなかったし、俺自身も完全に忘れていたため俺の買いたい気持ちを察して持ってこなかったなんてことは無かったはずだ。


「はい。一人用のは極力実家に送ってしまおうと思いまして」

「その割には一人用のベッドは持ち込もうって拘ってたじゃないか」

「だって……尚哉さんの匂いが染みついたベッドを捨てるの勿体なかったですもん」


 嬉しくもあり恥ずかしくもあり人によってはドン引きされそうなセリフだが、俺のベッドが壊れかけじゃなければつくしの望み通りにしたかもしれない。もともと一人用のベッドに二人で寝るだけで耐久性に問題があるのに、ガタが来ているから壊れそうで危険だったんだ。ギシギシやってる時に大破して大怪我を負うなんて馬鹿らしすぎだろ。だからベッドの持ち込みは諦めた。


 その代わり処分するまでの間に俺のベッドをたっぷり使うという約束になり、その約束は極めて安全性を考慮しながら果たされているのだがこれ以上は割愛しよう。


「これで必要なものは全部引っ越しの日に揃うよな」

「はい」


 後は引っ越し当日を待つだけだ。


--------


「これはどちらに置きますか?」

「ここでお願いします」


 引っ越し業者ってすげぇよな。大量の重い荷物をテキパキと運ぶんだもん。しかもアパートとかマンションの廊下って結構狭いのに、慣れた感じで全く困らず作業している。インドア派の俺には出来ない仕事だ。


「ありがとうございました」


 作業開始から一時間くらいで終わってしまった。業者に頼むとお金はかかるけれど楽で良いな。


「最近は心付けって用意しないものなんだな」

「ホームページに受け取れないって書いてありましたものね」

「でも飲み物くらいならって渡したの、流石つくしだ」

「ふふ。だって大変そうですもの」

「同感だ」


 仕事だから大変なのは当然だ、なんて考えもあるだろう。だがそれでも労わりたくなってしまうのが人として当然のことだと思うし、そういう自分であり続けたいと思う。

 こういうところでもパートナーとの考えが違ってケンカになるなんてこともありそうだが、今のところつくしとそういった感性の違いはない。


「さぁて、荷解きをするか」

「はい」


 部屋の中には大量の段ボールが置かれている。先に開けるべきものを分けて置いてあるため、まずはそれの配置を終わらせる。


「つくし先生、指示をお願いします」

「任されました」


 整理整頓に関してはつくしの方が遥かに上手で、俺は特にこだわりがあるわけでもない。それに料理はつくしがどうしてもやりたいって主張しているから食器や調理器具はつくしが使いやすいように設置した方が良いし、服は同じタンスに入れることになるけれど下着とかを勝手に触るわけにもいかないからこっちも任せた方が良い。


 つまり遠慮なく任せてしまうべきだ。もちろん申し訳なくなんて思わないぞ。だってつくし喜んでやるからな。


「尚哉さん。お風呂のセッティングしてもらえませんか?」

「任された」


 何かしないと手持ち無沙汰になってしまう。そんな俺の気持ちを察したのだろうか、つくしが俺にも出来る絶妙な作業を依頼してくれた。まさか風呂というだけで性的なことを想像させようだなんて中学生的なことを考えてはいないよな。


「いつもシャンプーとか床に直置きだったけど、小さな棚があるだけで見違えるほどに整頓されている感があるな」


 セッティングする物の大半はつくしの物だ。それは小物だけでなく大きな物も同じである。


「俺の家電は学生時代から使ってた古いものだから処分して大半はつくしのところから持って来たけど、冷蔵庫がお互い一人用の小さいのしか持ってなかったから大きいのが欲しかったんだよな」


 基本はこんな感じで、俺の物は古いから処分でつくしの部屋の物を持ってきて、足りない分は購入するという流れだ。


「同棲したての頃はつい色々と買い揃えてしまいたくなるけれど、いざ住み始めるとすぐに相性が悪いことが分かって別れることになり買ったものが無駄になるかもしれないからしばらくはあるものでやりくりすべき、なんてネットに書いてあったけど恋愛同棲で我慢できる奴がいたら尊敬するわ」


 自分だけは大丈夫、なんて思いながら失敗して大きな冷蔵庫をどっちが引き取るかなんて話で揉めたりすることがあるんだろうな。


 その点、俺とつくしは大丈夫だ。


「…………俺らみたいなのが失敗するんだろうな。まぁ絶対に失敗しない確信があるが」


 むしろ俺達の今の関係で何がどうなったら失敗するのかを教えて欲しいくらいだ。俺が喜ぶことがつくしの喜ぶことでもあるから、俺が遠慮しない限りはつくしが悲しむこともケンカすることも無いからな。


「うし、風呂はこんな感じかな」


 キッチンへ戻るとつくしがキッチンのセッティングを終えた所だった。

 会社でもそうだが、仕事早すぎませんか?

 風呂なんかと違ってかなりの量の食器や調理器具があったと思うんだけど。しかも割れないように包んであったし。


 普段はゆったりと作業しているようにしか見えないんだが、俺が見て無いところで超高速作業しているのではなかろうか。


「尚哉さん、そろそろお昼にしませんか?」

「そうだな。ついでに引っ越しの挨拶もやっておこうか」


 最近では引っ越しの時にご近所さんに挨拶をしないケースが多いらしいが、今回はすることに決めた。つくし調べでは周囲は普通のご家庭なので挨拶をしておくに越したことはないとか。一体どうやって調べたのだろうか。


 引っ越しといえばお蕎麦。

 なのだが、蕎麦はアレルギーがあったりするので、当たり障りのない洗剤詰め合わせを手に挨拶に回った。確かに普通の人達ばかりで快く迎えてくれた。


「今日の昼は軽く済ませて引っ越しの作業を早くやろう」

「はい」


 ということで近場の散策は後日ということで、チェーン店で軽くお昼を済ませて部屋に戻り、段ボール開封作業を再開する。


 その結果、夕方になる前に開封の儀が終了し、俺が段ボールを畳んでいる間につくしが掃除機をかけてくれている。


「ここが俺達の新居か……」


 都内東部に位置する二LDK。


 LDKといっても少し広いキッチン程度であって寛ぐような場所ではない。

 つまり寝室、リビング用の部屋、広いキッチンといった感じの部屋割りだ。


 将来を考えると少し狭いので、今のところ長くここに住む予定は無い。ただ二人で同棲生活を楽しむには十分な広さといえよう。


「楽しみですね」

「ああ」


 掃除を終えたつくしが、いつの間にか隣に立っていた。


 これまで何回か異性と付き合ったことはあるけれど、同棲は初めてだ。

 自分の物とつくしの物が混ざり合った光景が不思議であり、心がどこかふわふわしている。


 そしてここでのつくしとの生活を色々と想像してしまう。


 キッチンでつくしが料理している後姿だとか。

 リビングで並んでテレビを見ている姿だとか。

 出社のため朝一緒に部屋を出る姿だとか。


 それはなんて幸せなのだろうかと胸が温かくなる。


「つくし」


 気付けばつくしを抱きしめ、軽くキスをしていた。


「これからもよろしくな」

「はい」


 そしてもう一度だけキスをして、俺達は寝室の様子を確認しに向かったのであった。


 それ以上のことなんてしませんよ?

 だって引っ越し作業で疲れてるしまだ夕方だからな、ははは……はは……は。

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