#99
確執やら何やらがあるだろうけど、そんなのは今はいい。どうせ直ぐにどうにか出来る問題でもないしね。とりあえず皆さん私の着任祝いをしてくれるとの事なので、それぞれ準備に取り掛かってる。
「さて、こっちもやることやるわよ」
今日中にどうしてもやらないと行けない事が私にはある。面倒だけど、それは首都とここを繋ぐ転送魔法を完成させる事だ。私の力が自由に使えれば面倒なんて無いんだけど、実際問題それは無理だからね。しょうがないから設置魔法を使う事にした。首都のネジマキ博士のラボには既に片側を設置してきた。てかそこで色々と聞いてこれならどうにかなるんじゃね? ってね。
なんでこんな事聞くのか訝しんでたけど、そこは私の美貌で誤魔化しといた。え? 話術? そんなの私には必要ない。私を見てると大体の人は頭ポヤーとしてくるから。
「ここで良いかな?」
私は屋敷の適当な小狭な部屋を見つけて、そこに一枚の紙をおく。これは研究所へと設置した陣の片割れ。あとはこれに魔力を流し込んで起動すれば……まあ実際はそんな簡単じゃないらしいんだけどね。そもそも、この陣だって簡単に作れる物では無いらしいが、ネジマキ博士が転送魔法を簡単にするための研究もしてたのがよかった。
その試作機械でこの陣はパパっと作られた物だ。本当はもっと頭を悩ませて組んでく陣を一瞬でね。確かにこれが普及すれば、転送魔法がもっと身近になる。欠点はめちゃくちゃ魔力を消費するところだね。起動する為に膨大な魔力が必要なんだ。まあ一度起動すれば後は周囲のマナを集めてずっと使えるらしいんだけどね。後はこの陣に収まる物しか送れない。
だからあまり、使い勝手はよくないかもね。結局大戦力は大地を移動するしかない。まあでも亜子がラボとここを行き来するには充分。それに私には大魔力があるから起動だって問題ない。
「キララ」
「はいはい。なんでも私にやらせるんだから……」
そんな事をいいながらキララは床に置かれた陣に手を翳す。淡く光りだす両者。全てはあの陣に組み込まれてる。だから後は魔力を流すだけ。これならバカでもできる。そしてあっさりと転送陣は床に定着した。薄く輝く光の円が床を走ってる。
「ふう」
「ありがと」
「別に……誰かに求められるって悪い気しないし。だから他の人達の所に行っていい? 私が出来ることまだある」
なんか変な使命感がキララに生まれてない? 奇跡だと思われて拝まれたくらいから、なんかやる気に満ち溢れちゃってるんだよね。でも……
「別にアンタの行動に私は制限なんてしないよ。けど生半可な事はしないほうがいいとおもうけど?」
「でもこの力があれば!」
「勝手にすればいい。だから私は止めないから。でもちゃんと責任もとってよね」
「も、勿論!」
そう言ってキララは駆けてく。どうせ病人とか怪我人でも治そうとしてるんだろう。まあ勝手にすればいい。どうせそのくらいじゃ、私の方に影響なんてないし。そして一回亜子に転送陣を使ってみて貰った。やっぱり必要じゃん、ちゃんと動くか確かめるのは。
「なんで?」
「あはは」
亜子がから笑いしてる。それもそうだよね。戻ってきた亜子の横には何故かカタヤの奴がいる。なにこのシスコン……キモいんですけど。こっちくるより、妹探せよ。
「なんでアンタまで来てるのよ」
「仲間の事が心配なだけだ。気にする――」
「本心は?」
「――ばっ近づくな!」
私が上目遣いに見つめると、カタヤは顔真っ赤にしてその顔をそむける。仲間とかかこつけて私見にきただけじゃないの? シスコンかロリコンかどっちかにしてよね。
まあ変な乱入者もいたけど、着任パーティーは始まった。変な踊りや、用意された豪華なしょく……しょく……食事? いや、きっとこれでも最大限のもてなしなんだ。ここは貧相な土地だと言ってた。この集落の蓄えさえも放出してのかも。それでもこの程度……肉なんてなくて、芋と雑草と木の実とかしかない……いや、一応肉もあるけど、干し肉だ。
美味しくない。ライザップで贅の限りを尽くしてた私にはこれは辛かった。けど必死にもてなそうとしてくれてる人達に向かって「こんなの食えるか!」なんて言うほど、私は悪代官ではない。だから私は干し肉をポリポリと噛み締めながら誓った。明日からこの土地を肥沃にする! 主に自分の為に!!




