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#92

「助かった……」


 なんとか世界の崩壊は免れた。アンティカという存在によって……いや、それを操る者? それも違うかな。だってここで終わらなかっのは全てが揃ってたからだ。アンティカとそしてパイロットと。プロト・ゼロの本来のパイロットはまだ行方がわかってない。だけど亜子が来た。それで揃った。何が自分を救うかなんてわかんないものだよね。

 亜子がこの世界に来たことなんて、偶々……では無いような気はするけど、タイミング的な問題だ。もしも亜子がこの世界に来るのがもう少し遅れてたら? 私じゃない誰かが呼び出してたら……そしたらきっとここへは間に合わずに世界は終わっていただろう。

 

「やっぱり三機揃うと壮観だね」


 空中に佇むアンティカを見て私はそういうよ。金と赤と青。その姿はこの幻想的になってる世界に映えてるよ。まあプロト・ゼロは結構ボロボロになっちゃってるけど、それも味だよね。

 

『おいラーゼ、これはどういうことかちゃんと説明して貰うぞ!』


 金の機体からそんな声が聞こえてくる。説明と言われてもね。そもそもなんでアンティカが亜子を召喚したのかは私も知らないし、なんでそんな事が起こったかも謎だ。けどよく亜子もわけわからない状況で二度もプロト・ゼロに乗ったね。ただの向こうの世界の学生だったとは思えない度胸だよ。お陰で助かったけどね。後でお礼しなくちゃね。

 けどそれは後で……全部を終えた後でだよ。

 

「ガロンは引いた! だが人種の軍勢がそこまで迫っている! 臆するな!! 我等獣人は引くことなどしない! 命は戦場で燃やす物だと魂が知っている!! 我に続けええええええええええ!!」


 獣王が残存兵をかき集めて迫りくる人種の軍団に向かって突撃する。足を失ったのか既に獣王も地を駆ける身。だがその身体に戦意は満ち満ち、誰よりも速く人種へとその一撃を放ってる。

 

『終わらないの? だってもう……』


 亜子の信じられないという声が聞こえる。確かに、獣人達はガロンとユニコーン達の相手で疲弊しきってる。これ以上の戦闘なんて無謀だと亜子は思ってるんだろう。けど彼等にはもう逃げ道なんてない。ここは獣人の最大国家ライザップ。その首都なんだよ。ここが落ちた時、それが獣人という種が落ちた時だ。

 

「誇りって知ってる亜子?」

『そんなものの為に命を投げ出すなんて……バカでしょ』


 それはとても向こうの世界的な考えだね。でも賛成するけど。バカだよね。ほんと……でもアレはちょっと違う。

 

「そうね……でも、あれは誇りを守りたいんじゃないよ。取り戻すために死ぬんだよ」


 獣人達が安定と共に置き忘れたものを王としてあいつは取り戻しに行ってる。それがアイツの復讐だから。全てを壊して、そしてその先に、芽吹かせる為に。それが前獣王への……引いては今の獣人達への否定なんだよ。

 

『君はだから……』

「行きなさいよ。命令来てるでしょ? 役者が揃わないと物語は締めれないのよ」

『全ては君の! ……っつ!!』


 何かを押しとどめる様な声を出して金の機体が動く。

 

『小清水さんはここで待機を。俺達がやります』


 そう言って二機のアンティカが獣王の元へと飛んでいく。世界は次第に安定してきた。空の色も元に戻ったし、大地の裂け目はそのままだけど、揺れは収まった。姿を見せてたマナも消えて、今は誰もがその最後の闘いの行方を見守ってる。

 

 獣王は正直凄かった。二機のアンティカに真っ向から挑んでそして互角以上に戦ってた。最初見た時、そんなに戦える奴とは思えなかったんだけどな。けど、獣王は戦ってる。その名を背負ったからか、それともここで全て出し尽くせるという事だからなのか……多分その両方。獣王は驚くことに青い機体を落す。その武器を犠牲にしはしたが一機撃破した。

 

 きっと獣人達は盛り上がってるだろう。なんか首都の方から声やら音が聞こえる気がするし。だが獣王は既に限界を超えた力を使い過ぎてる。近接戦が得意な金の個体の攻撃がその身を削っていってるのがみてとれる。それでも獣王は腕をふるい足を叩きつけ、そしてその牙で最後まで戦い抜く。

 

『はあはあ……次で決める!!』

「来い……だが我は倒れんよ。刻みつけろ我らが獣人の生き様を! 我こそは獣王ラペラント・ラント・ライザップである!!」


 その名をきっと獣人達は忘れない。魂に刻まれた名前だろうから。その剣を輝かせて、金の機体は獣王を切り裂いた。一瞬だった。抵抗も無かった。ただその事実と共に、獣王は逝った。ライザップから聞こえてた音はパタリと止んでた。敗北……そして屈辱……それを獣人達が思い出した日。そして、その心に誇りが戻った日……彼等の故郷といえる国は無くなった。

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