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θ37

「全く……このままではあのかたに気づかれてしまいますね。それは……まずい。仕方ない」


 次の瞬間、サイオスの動きが止まった。最高の勢いかあったはずのサイオス。けど今はそんな勢いなんて微塵もないくらいに、動けてない。


「うぐぁぁぁ 、何をした?!」

「何も、ただお願いしただけ。貴方自身に」

「なんだと?」


 サイオスはフードの奴の言葉がわからない。何言ってるんだこいつ? と思ってる。それはサイオスにだけは思われたくないことだ。ちょっとイラっとした雰囲気になってるフードの奴ら。声に出してはないはずだが……なんとなく侮辱されたような気がしたんだろう。


「まあいい。このまましばらく静かにしててもらいましょう。うるさい口もふさいでね」

「うぐ!?」


 体の次は言葉までふさがれた。口は動いてる。けど、声が出ない。それはサイオスにとっても不思議な感覚だった。一生懸命口を動かしてるのに音にならない感覚。もどかしい。


(一体なんなんだこいつらは……得体のしれない魔法を操る奴ら……こんな奴らがこの街にいて……そしてゼラを見てた。俺が! 俺だけが知ってる事実!! 危険だゼラが!)

「さて、どうやって接触しましょうか?」

「あれの周りには厄介な存在が蔓延ってるぞ」

「本当に……亡霊がたくさん」


 何やら奴らは言ってる。一体何を見てるのか……それはサイオスにはわからない。けど、そんなことはどうでもよかった。 大切なことはたった一つ。狙われてるのがゼラだという事だ。


(こいつらをあいつの所に行かせるわけにはいかない!)


 動かない体……発せない口。こいつらを誰かが気づくことはない。だからこそ、サイオスは自分が……自分こそがとそう思ってる。サイオスは誰かに頼るなんてことはしない。世界はそんなに優しくないと知ってるから。だからこそサイオスは足掻く。


(動かない? それがなんだ!! それが!!)


 足掻きだすサイオス。だがやっぱりピクリとも動かない。でもそれでもサイオスは諦めない。なぜならサイオスは信じてるからだ。自信が特別だと。そこに疑いなんて一ミリもない! 


「あっ……が……ががが……」

「まさか!? 呪を!?」


 驚きを上げるフードの連中。確かに何かがあると……自分の中の自分が止めようとしてるのがサイオスにはわかった。そいつはいう「お前がやる必要はない」と。けどそんな自分に言ってやる。


「俺が……俺が……やらずに誰がやるんだああああああああああ!!」


 目一杯拳を突き上げるサイオス。その体からは白い雷撃がほとばしってた。


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