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――サイオスの優雅な日常――
朝に日の出る前に起きて街を巡回。悪党どもを狩るために彼の朝は早い。サイオスは朝に必ずこういうんだ「悪が俺を呼んでいる」まあだが彼が悪を見つけることはそうそうない。ただ勘で怪しいと思った奴を問い詰めたりするだけだから、街の兵士に怒られたり、ギルドには苦情が言って注意されたりしてる。なのに今日も今日とて、サイオスは朝早くから、街を見回る。それが英雄としての使命だと、本気で信じてるからだ。
朝の巡回が終われば、肉マシマシで食事をする。どんな時で肉を食う。どんな肉でも構わない。サイオスが肉を好きなのは力になってる気がするからだ。朝食をとってると、この宿の看板娘が言い寄られてるのが見えた。元気で明るく、そして誰にでも優しい彼女は人気が高い。ここは自分の出番だろう。困ってる女性は助ける。それも英雄の役目。今日の彼女は少し顔が赤くてなんだかやりとりもいつもと違うようだが、きっと体調が優れないのだろう。
「やめろ! 彼女が困ってるだろう!」
「いや……あのサイオスさん……このかたは……」
「お礼なんていらないですよ。なぜなら、俺は英雄だから! 困ってる人は見過ごせません!!」
そんなサイオスを見て大きくため息をつく看板娘。だけどそんな姿はサイオスの目には入ってない。
「なるほど、君が困った人か」
「確かに俺はそうかもしれない。貴様から見ればな。彼女に手を出すのは辞めてもらおう」
「それは出来ないな。なにせこっちも本気だから」
「え?」
何やら変な空気が形成されてる気がするサイオス。だがそれを魔法の類とサイオスは判断したよ。
「こいつから離れるんだ! 魔法を使っているぞ!」
そう言って看板娘を守るために彼女を突き飛ばそうとする。すると何やら柔らかな感触が……そして宿中に響く彼女の悲鳴。
「くっ卑劣な!」
「今のでこっちに敵意を向けてくるとはね。本当に困った人だ」
向かい会って互いをにらみ合う。
「だが今のは許せないよ。彼女を泣かせた事も」
「彼女に随分と執着してるようだな。彼女の為に痛い目にあわせてやる」
互いに拳を構える。お互いに引く気はない。そして朝から、戦いは始まった。
昼
「おい、肉がないぞ」
独房で出された飯には肉がなかった。パンとスープだけという質素なものだ。こんなの納得できる筈がない。だが要望が通るわけもなく、俺は仕方なく飯を食った。
「これはおかしい。何故に俺だけこんな所に……」
あの宿で暴れたことで宿からは追い出されてさらにサイオスだけが独房入りさせられてた。納得できるわけがない。
「まさか俺は……はめられた? 奴は犯罪組織の一員で、英雄である俺をここに入れておくことで邪魔を排除しようと……ま、まずい!!」
サイオスは牢屋にへばりつき声を上げる。だがそれに応える奴はいない。
「不味い……これじゃあやつらの思うつぼだ。このままでは最悪街が……俺が……俺が何とかしないと!!」
サイオスはそう思ってつけてた指輪を外す。別にこの指輪事態に特殊な力があるわけではから取られることはなかった。だがこれには念が込めてあった。そしてその念から解放されると、サイオスはその封じられた力を開放できるのだ。そしてサイオスはその力を使って牢獄から脱出。この街の為にと……再び空回りを始めるのだ。そして迎えに来た赤線たちによってサイオスの脱獄が知られることになる。
「何をやってるのだあやつは」
赤線は頭を押さえてそう言ってた。




