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Σ93

 理不尽……きっと上位に君臨する種族達に相対して何を思うのかと言えば、きっとこの言葉が当てはまるんだと思う。理不尽なまでの力、理不尽なまでの体……最初から持つ者と持たない者。それを感じずにはいられないんだから。そして私達はまさにそれを感じてる。違うと分かってても、浮かれてたのだろう。沢山の鉄血種をなんとか倒して来たから……どうにかなるかもしれないと……そんな事を思ってしまってた。

 

 けど……それは甘々な考えだったと思い知らされてる。この目の前の鉄血種は今までの鉄血種とは文字通り次元が違う。今までの鉄血種だって人種から見たら理不尽の塊だった。それなのに、こいつは更に上だ。次元が違うってのは、こういう事を言うんだと、本気で知った。最初の一撃でカタヤさんの武器の輝きは、その輝きごと食われた。

 光が闇に……だ。黒い炎であっさりとその剣は消え去って、彼の腕までもその炎は持っていった。なんとかハステーラ・ペラスで消したけど……これじゃあもう剣は……いやアンティカだって……片腕では操縦できない。キララなら無くなった腕さえも元に戻せるだろうか? カタヤさんは周りで隠れてる兵士の人達に任せた。

 

 その間はグルダフさんが奴の相手してくれてた訳だけど……少し目を話した隙に、グルダフさんは四肢に黒い槍みたいなのを刺されて建物に串刺しにされていた。そして当然、オジサン鉄血種は涼しい顔のまま。

 

「邪魔はいなくなった」


 そう言ってオジサン鉄血種と私は相対する。互いの周りで、分裂化したハステーラ・ペラスが蠢いてる。渦の様に互いの周りを周りつつ、一歩……一歩と近づいてくるオジサン鉄血種のハステーラ・ペラスとぶつかる度に不思議な音がこの場に響く。私は少しづつ後ずさる。だって……同じ装備を持ってるとしても元が違うんだ。同じ最強の武器を持ってたとして、ただの人と運命に選ばれた主人公が持ってるとしたら、一体どっちが勝つか……そんなのは明白だ。そういうことです。

 

 私の武器でこいつに通じる物は黒い炎しかない。けど、ハステーラ・ペラスがある限り、黒い炎は通らないだろう。どうにかして銃で隙を……つくれるか? 私は意を決して動き出す。自身の居た場所に分身体を作り出し、空間移動で移動する。そして背後の上空で、ハステーラ・ペラスの形を鋭い刃の形にかたちどった。今のハステーラ・ペラスに形はないんだ。なら……と思った。そしてそれは出来た。

 

 巨大な刃を意思だけで軽々と振り抜ける。だけど次の瞬間、口から血を吐いたのは私だった。脇腹の肉が吹き飛んでた。

 

「あっ!? づ――」


 私は悲鳴を上げるのを唇を噛み締めて耐える。周りの顔だけになった鉄血種共が『全部を攻撃に振るな』『防御分も分配しとけ』とか色々とアドバイスくれる。こいらマジで味方なの? わからないけど、そのアドバイスはありがたく受け取っておこう。ハステーラ・ペラスを上手く分配して攻防をしないといけないみたい。けどこっちの全開でないと奴のハステーラ・ペラスと体事態の強度は抜けない気がする。

 

 てか完全に分身体が役に立ってなかった。こいつもあの女鉄血種と同じで私が正確に見えるみたい。

 

「さあ、どこまで埋めて昇ってこれる? まだまだ俺には届かんぞ!!」


 次の瞬間オジサン鉄血種は背後から腕を突き出す。それを私はかわすけど、かわす行動さえ予測してハステーラ・ペラスで攻撃がくる。それをギリギリ自身のハステーラ・ペラスで防御出来る分を見極めて残りを攻撃に回す。けどその配分がまだまだ甘い。つい、防御に多くを使ってしまう。ギリギリ防げる……その程度にして攻撃にもっと振らないと、鉄血種にとっては脅威となる攻撃にさえなりえない。

 

 紙一重で死をかわしてく感覚。少しづつ研ぎ澄まされてくのがわかる。けど……確実に死の足音は近づいてくる。だって研ぎ澄まされてくからこそわかる事がある。今のままじゃ、私はこいつに勝てない……ハステーラ・ペラスと鉄血種、それは最強の組み合わせだ。人のままじゃ……その組み合わせに届かない。人のままじゃ……

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