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Σ84

 更に強化されたマント。けどきっとその分、危なくも成ってるんだと思う。けどこれをやってくしかない。それしか私たちに勝機はないんだ。私はちらりと折りたたまれた腕を見る。これをどうにかするにはアイツ……あの女鉄血種をどうにかしないと……

 

「やっぱり進化したハステーラ・ペラスは厄介よね。でもだからこそ、貴女を諦めるなんてできない。だって最高傑作になりそうなんだもの!!」


 そう言った女鉄血種の姿が変わってくる。せっかくの美女は台無しになってくよ。けど、こっちが真の姿みたいなものだよね。真っ赤な目が飛び出して、口は大きく裂けて鋭利な牙が見える。腕も足も更に黒々として、身体全体が黒ずんで赤い血管が煌々と見える。お洒落な服着てたのに、形が変わった事でその服も台無しになってる。

 

 そしてそれは女鉄血種だけじゃない。この場に集った来てる鉄血種が全て本気モードに移った。あのオジサンは元のままだけど、まだこっちに参戦する気は無いようだから今は無視しとく。けどきっとやりあう事になるよね。一応意識だけは向けとくよ。だってあんな危ない奴を完全に放置しとくなんて危険じゃん。意識だけは残して、目の前の鉄血種に集中。

 

 私はカードを変えようとして気付いた。

 

「やばっ……カードが……」


 必要な奴は左腕に握ってた。けど、その左腕はご覧の有様だ。女鉄血種に触られた瞬間に、手がブランブランしちゃったから、落ちたんだ。視線をちょっと下げると下にカードがあるのが見える。けど、これを取る行為が危険だ。そしてカタヤさん達にとってもらうのも……それは隙になる。上手くカバー出来る? 新たに進化したマントがどれ程かも分からないから未知数だ。

 

 でも、あの中には分身体を作るカードがある。いや、手順を踏めば私だけでも撃てるんだけど、流石に連発は出来ないし、しかも実用的じゃない。実戦では使えないレベルだ。てか今は私の全ての魔法は黒い炎になる。それが問題。あの状態の鉄血種には分身体が有効なのは証明されてるのに……今まではあの状態の奴と通常状態の奴が混じってたから、ききづらかったけど、今ならその効力を最大限に発揮するはず。

 

 だからこそ……だよ。

 

「カタヤさん」

「なんだ? 亜子?」


 周囲を警戒しつつも、こっちに視線をくれる。私は下のカードをパッとみる。カタヤさんの視線は私の左手に注がれる。

 

「それは――」


 私は言葉を最後まで待たずに頷く。大丈夫――それを伝えたんだ。確かにこんな状態の腕なら痛みとか気になるよね。けど不思議と痛みは一切ない。私のそのメッセージを理解したからか、カタヤさんも頷いてくれる。そして一度周囲を警戒。奴らも私の進化したマント(見た目は変わってない)を警戒してるのか、一気に近づこうとはしてこない。今なら……カタヤさんもきっとそう判断したんだろう。素早く動き出して地面のカードに手を伸ばす。

 

 けどそれがキッカケだったのか、奴らは一斉に両の手を向けた。

 

(まずい!!)


 私はそう判断した。奴らの汚い声が響く。マントを使ってカタヤさんとグルダフさんを包んで異空間に移動する。けどそこには裸の鉄血種がいて……待ってましたのように襲いかかってくる。こんな何もない空間でどうやってんな速く移動してるのか謎だ。けどそこに疑問を挟んでる余地はない。私は引き金を引いて鉄血種を牽制。

 けど止まる事はやっぱりない。けどそれでいい。少しでも奴が違う事に意識を向けてくれれば! 私は忍ばせてたマントの端で奴の足をとり思いっきり投げる。どうせ端なんて無いんだからどれだけ飛ばしても問題ないでしょ。無いよね端? よく考えたらわからないけど、異空間だし……ね。とにかくこの隙に異空間から脱出。するとさっきまで居た場所が無残にも吹き飛んでた。なんとか建物の屋根の上に移ったけど……あれじゃカードは……

 

「カ――」

 

 一文字だけで、私の言いたい事を理解したのか、開放したカタヤさんは首を横に振るう。やっぱり間に合わなかったみたい。これじゃあもう回収は諦めた方が――って!?

 

 鉄血種共は目ざとく私達の位置を把握してくる。そういえばマナで見えてるんだ。こんな赤い月の月明かりと燃え盛る炎だけの光源だけでも、きっと関係ないんだろう。こいつらそもそも鼻も良さそうだしね。よくクンクンしてるし……さらにはきっと耳も良いんだろう。酷い神様の優遇ぶりだよ。ほんと全くね。私達は三人で互いにカバーしつつ鉄血種の攻撃を凌ぐ。

 

 けど重い……速い。私とグルダフさんはまだなんとか成ってるけど、カタヤさんが不味い。そもそも今の武器はサブ武器だしね。ここまでよくやってると言える。私は黒い炎も使ってるんだけど……いかんせん布を持ってる鉄血種には効かない。それはそうだよね。自分たちの力で死ぬバカはいない。遠くからの狙撃の援護もあるけど、顔を吹き飛ばされても、こいつら直ぐに再生するし……しかもこれだけ束に成ってこられると、捕まえるすきがない。

 

 こうなったら全員一気になら? とも思えるけど、それを鉄血種も警戒してる。だから波状攻撃の様に攻めてきてる。単純な数なら、まだ私達が多いはずだ。けど……この戦闘に参加出来る人数になると、それは鉄血種の方が多い。それはそうだよね。だって鉄血種基準の戦闘なんだから。

 

「うおーい! おーい!!」


 そんな戦闘の最中、そんな声が聞こえてくる。一体誰がこんな時に? って思う。視線を下の方へ向けるとそこには幾人かの兵士の姿がある。そしてその手には私のカードが……まさか、危険を犯してまでアレを探して? どうやらまだ、戦ってるのは私達だけじゃないようだ。

Σ73が別の小説の話しになってた事に気づきました。なので改めてΣ73も上げてます。ごめんなさい。

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