&509
『ラーゼ様、心配していました』
「うん、ごめんごめん」
(おい、私にも謝りなさいよ)
「はいはい、ウサギっ子も不安だったよね。私がいなくなって」
(ちょっ!? 誰も不安なんてないわよ! ただ迷惑なだけ! わかった!?)
ヴァラヴァレレイドとウサギっ子と会話をする。いや念話か。二人のおかげで蝶がいなくなった寂しさ? が和らぐ。一人でいるってそんなにないからね。それにウサギっ子とかにぎやかしてとしていいよね。彼女の騒がしい声を私は不愉快だと思ったことないから。
まったく、いつものツンデレを発生させてるウサギっ子はかわいい。なんか結構余裕そうだけど……
「大丈夫なの? 始祖の龍と戦ってるんでしょ?」
(しってるのならさっさと手伝いなさいよ!)
『これしき、余裕です』
ウサギっこは珍しく泣き言をいってる。いや本人的にはそれは泣き言ではなく、私への文句? なんだろう。私のせいで大変なんだからさっさと来なさいよ――ってね。ヴァラヴァレレイドは苦しそうである。
いや私には強がってるよ。でもね……それを見抜けないほど間抜けじゃないよ私は。ヴァラヴァレレイドは行き詰ってるんだろう。言葉では余裕とか言ってるが、まあ私に格好つけたいんだろう。なにせ私の事大好きだからね。いい男を見せたいんだと思われる。
別に失望なんてしないのにね。だってこの宇宙で一番始祖の龍に挑んでるのは間違いなくヴァラヴァレレイドだ。その心意気を愚弄する奴がいたら私がぶっ飛ばしてあげる。だって大抵の神や竜とか龍さえ逃げてる。そんな中、ヴァラヴァレレイドは何回も挑んでるんだよ? それだけで格好いいじゃん。
「とりあえずただそっちに行くのはね……ちょっと考えるから待ってて」
(ちょっとあんたね……早くしなさいよ!)
ウサギっ子もただ始祖の龍に挑むのは無謀だとわかってる。だから厳しい言葉になりつつも、私に何か考えがあるんだろうって察してくれた。まあ考えというほどの事があるわけじゃないんだけど……とりあえず私は今、現宇宙のすべてが見える。
「何か使えるものはないかな~」
そんな風に私は始祖の龍に対抗できるなにかを探す。でも考えてみたら現宇宙のすべては始祖の龍のものだからね。ならば無でなにかさがした方がいいのでは? と思った。でもここまでやってきた中で何かあったか? と思い出すと……何もないんだよね。
「さすが無だよ」
なにもないから無なんだもんね。




