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「それはないよ。けど、滅びても目覚めが悪いのよ」
それが本音。
『じゃあ、どうしたいの?』
そうなるよね。蝶は私に望みをきいてる。私は助けてくれないかな~という気持ちでいうよ。
「私たちにとって創ることなんてどこにだって出来るんだからさ、始祖の龍には新しい所に行ってもらいたい」
『でも、その龍もお腹が減ってるんじゃないかな? 寝てたんだよね?』
まあそれはそうだね。きっと始祖の龍は腹が減ってる。それは確かだと思う。そもそもあの現宇宙は始祖の龍にとってはごちそうなのだ。せっかく熟成させてた肉みたいな……さ。多分そんな感じだろう。食べごろになってきたから、目覚めた。あとは食事をしてあの宇宙を終わらせて、そしてまた始祖の龍は新たな宇宙を創り出す。
そういうサイクルをしてるんだと思う。奴にとっては宇宙に崇高な志なんてもとめてない。だって始祖の龍にとっては宇宙はただの食事なんだ。農家が畑を耕して種を植えて収穫を待つ。そのサイクルと何も変わらないのだ。
始祖の龍にとっては……ね。
『難しいと思うな。それにそこの所有者はその龍さんだし?』
あくまでも蝶は所有権というか創造権というか? それが大事みたいだ。まあわかる。私だって好き勝手にしてる新生宇宙を誰かに「出ていけ!」とか「こんなのおかしい!」と言われたらいやだ。むかつく。そもそもなんて反論するか? となったら――
「ここは私の物なの。だから何!?」
――というだろう。うん……自分の所有権をめっちゃ主張するよね。始祖の龍のふるまいは所有者の権利で創造者の当然の行い……そういわれたらそれまでだ。正攻法……なんてのはそもそもない。だって正攻法はすべて始祖の龍の方にあるんだから。
「そう……だよね。わかったごめん。辺に巻き込もうとしてごめんね。これはやっぱり私のわがまま……だよね」
そういって引くことにした私。言葉を紡いで蝶を説得するのは難しい。でも私たちは友達にはなったんだ。あとはそのつながりに賭けるしかないね。あんまり強引に協力して! っていっても、逆に困るだろうからね。
こういうのはその人の意志が大切だ。無理矢理はよくないよね。
「えっと……最後に一つだけいい?」
『うん。いいよ』
「さっきの宇宙まで案内してくれない?」
ここどこ? だからね。




