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「生きることを否定できない。それをするなら、そもそもその思いだってなくすべきだった。それを否定するのなら、下剋上されても文句言えないわ」
『ふむ……それもそうですね』
蝶が同意してくれた。それ……感情やら生きたいという気持ち、それを宿しておいて、ただ蹂躙を受け入れろ……というのは私達始祖の傲慢だ。そうでしょう。私達が生み出したんだから、逆らうなって言うのはそれは昨今の毒親……というものじゃないだろうか?
それと同じだよね?
『けど、私達が介入するのは違うのでは?』
「うぐ……」
まあね。まあそれもある。だって現宇宙は始祖の龍がつくった場所だ。ゼロから生み出した場所。まあ生み出しただけであとはそこの命が頑張った結果……だと思うけどさ。だから見方によっては、成長した子供の資産というか? 給料を根こそぎ奪っていこうとしてるのが、始祖の龍だよ? クズじゃん。そんなのクズじゃん。
働きもしないでぐーたらしてた親が、「産んでやったんだから」――という理由で全てを搾取しようとしてるってことだよ? はて、そんなことに納得できるやついる? いないよね!?
まあ蝶が関係ないのはそのとおりではある。だから蝶は渋ってるのもわかる。
「私達、友達だよね?」
『うん!』
はずんだ声。それにこころなしか踊るように舞ってるようにみえる。嬉しそうだね。こっちも嬉しいよ。だけど心の中ではニヤリ……としてるから。
「私はあの世界とは無関係じゃないわ。あそこで生まれたからね。これがどういうことかわかる?」
『ふむ……貴女もあの場所で生きたいの?』
「それはない」
あっ、ミスった。思わず心根が出てしまった。だって私には新生宇宙がある。だから現宇宙にはこだわりなんてない。むしろ見限ってるし? でもまあ、感謝はしてる。あの宇宙がなかったら私はここまでたどり着けてないからね。
見限ってはいるが、不幸に沈んでいくのは見てられないっていうか? 勝手に平穏無事にあってくれたらいいなって思ってるくらいだ。それならなんの憂いもなく新生宇宙に軸足を移せるじゃん。
今のままだと見限った酷いやつ……になっちゃうしね。まあそれを言うやつはいないと思うけど、ほら私って心まで美少女でありたいって思ってるからね。うん、本当だよ。




