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&494

「友達になれないってどういうこと? 私の事嫌いになった?」


 なにかやっただろうか? 私は考える。別に何も嫌われることはしてないと思うけど……けど他人の地雷ってわかんないものだからね。こっちは別になんとも思ってないことでも、ほかの誰かには地雷ということはよくあることだろう。

 でも……さすがに今のではそれが何だったのか? はわかんない。特定できないよ。


『違います。そういうじゃないの。私たちはきっと同じだから、一緒に入れないの』


 パタパタときれいな鱗粉をまき散らしながら、蝶はそんなことをいった。ふむ……どうやら私の事が嫌いになったわけじゃないらしい。それに『同じだから?』ってのはきっと私たちが同じ『始祖』だから……と思われる。でもそれなら更に疑問が深くなる。

 だって今の蝶の発言を私なりに解釈するとこういうことになる。


【私たちは同じ始祖だから一緒にはいられない】


 だよね? それはいったいどういうことだろうか? 簡単に解釈するとこういうことになってしまう。もしもたとえ私たちが始祖だから一緒にいられないとして…………いや、なんで? どういうこと? それは何なの? 私たちは始祖だよ? 始祖にルールを押し付けるなんてできなくない? つまりは今私がさっきの場所からこんな場所に移動させられたのは、その『始祖だから』ってことらしい。


「私たちのような存在は一緒にいられないの?」

『うん』

「どうして?」

『それは……わかんない』

「ほかにもこんなことがあったんだよね?」


 私の時が初めての事なら、こんな「わかってました」――という感じにはならないだろう。一緒に「なんでだろう?」――となるはずだ。けどこの蝶はそれが分かってた……という感じだ。ならば事前に言っててほしい……とは思う。

 けどきっと忘れてたんだろう。なにせずっと遠い記憶だったのかもしれないし。


『うん、昔々にね』


 遠い昔に、蝶は私以外とも『友達』になろうとしたみたい。その時もこうやって同じように離れ離れになったんだろう。


「それからその……友達になろうとした存在とは会えたの?」

『ううん、それから出会えてない。あの頃は私ももっともっと少なかったから』


 なるほど……つらい記憶を思い出させてしまったね。どうやら今回はまだ運がいい方だったらしい。


「やっぱりその姿……私を追いかけてきたわけじゃないよね?」

『そう、私は近くにいた私。私はこの場所にたくさんいるの』


 どうやら蝶は自分を沢山作ることで、この無をカバーしてるってことらしい。たがらこそ、微妙に姿が違うんだろう。さっきまで私が接してた蝶とはこの目の前の蝶は違うのだ。でも昔はそれこそ今よりももっと蝶は少なかったんだろう。

 だからいきなり引き離されてしまったら、それから出会うことはもうなかった。どれだけこの無が広いのかしらないが、きっとそうとう広い。だから一回見失うと、もう始祖だとしても出会える保障なんてない。

 でも今回はきっと過去よりも大量に蝶はいたから、こうやって飛ばされた先でも、近くの蝶と出会うことができた……ということだろう。それはいい。それは……ね。

 けど……


「なんでこんなことが起こるの?」


 それだよね。


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