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『それは……素敵だと思う』
私が説明した『友達』に蝶は魅力を感じてくれたみたいだ。ずっと寂しかったみたいだし、友達という響きは魅力的だろう。私はそれになれる素質があると思う。大抵の相手は私達始祖とは相容れないというか? こっちが強大すぎるってのがネックだよね。並び立つ……なんて存在がそもそもない。
だって私達は真に無から有を生み出す存在だからだ。神たちは自身の宇宙を持ってる。それは新たに生み出したようにおもわれるし、あながち間違いじゃないのは確かだ。神の誕生とともに宇宙は広がるからだ。その広がった部分に新たな神が収まるっていうね。
神と同時に宇宙も生まれる……といっても間違いではないだろう。けどそれは延長線上っていうか? 広がったというか? そんなのだ。本当に無から一から宇宙を生み出してるわけじゃないのだ。
あの宇宙の……現宇宙の仕組みが……システムがそういう風になってた……といえる。でも始祖は違う。本当に自身がゼロから宇宙を生み出してるのだ。まあだから、特別……だよね。
この蝶はどうやら宇宙とかは生み出してないっぽい。できるだろうけど、この蝶はそれをすることに意味を感じてないみたいだ。まあそういう始祖がいてもおかしくないだろう。この無をただ単にただよう……それに意味を見出してるのかもしれない。
(いや、意味なんてものが必要ないのかもしれない)
やっぱり命……それに期限があるとその生命は「自分はなんのために生まれてきたんだろう」――とか「自分の人生の意味ってなんだろう?」――って自然と思い悩む時期ってあると思う。
ある意味自分探しの時期ってやつである。命は自分の生に意味を持ちたがる。だって自分の存在が無為だと思いたくないからだ。価値あるものだと、思いたいから……そんな考えが芽生えてくるんだと思う。それも死が近いからだろうね。
けど始祖……いや始祖ではなくても神とかになっても実質寿命なんてのはない。まあでも神は神になった時にその役割が押し付けられてると言ってよかった。それは宇宙を育て、星を作り命を育むということだ。
それが自身の宇宙を育てることで、そしてそれをやることで自身の神としての力だって増えるんだ。ある意味神としての義務だった。けど……始祖はその生き方に何かを文句をつけるような存在はいない。
義務も……そして使命もないんだろう。始祖なら何かを生み出さないと行けないのかも? とか思ってたけど、どうやらこの蝶を見る限り、そんなこともなさそうだ。何もしなくても別にいい、それが始祖ってやつなんだ。ある意味で究極のニートでも良い存在。
それが『始祖』なのかも?




